意外なルート
目的地へ向かいながら、改めて俺の身体の変化について考えてみる。
腕力、脚力などの身体能力に加え、視力、聴力、反射神経、動体視力、心肺機能にいたるまで様々な部分が人間離れしている。
恐怖の対象だった魔族も、難なくとは言い過ぎかもしれないが倒すことが出来た。
あまりにも自分のイメージ通りに体が動くので、これは夢ではないかと疑う気持ちもある。
知っている地名が出たりするのも夢だからではという推測もできる。
夢には寝ている間に記憶を整理したり、定着させたりする役割があるとも言うし、そう考えると辻褄が合う。
しかし、やはり夢にしてはリアルすぎる。
どんな論理的な理由付けをしても、俺が感じる印象以上の説得力はない。
『百聞は一見にしかず』というやつだ。
…何かちょっと違う気もするが気にしない。何となく伝わればいいのだ。
そんなことを考えながら山を登っていく道中で、様々な動物達を見掛けた。
ただ、やはり人の姿は全く見えない。
まあ、急に出て来られてもそれはそれでびっくりしてしまうが。
そして、目的地に着き、建物を見上げる。
建物は一見、コンクリートで出来ているように見えるが、近くで見ると石のような材質で出来ている。
古びてはいるが、ボロボロではない。
歴史を感じる佇まいだ。
正面には扉のようなものはなく、その代わりにアーチ状に大きく空いた穴がある。
建物の中は思っていた以上に広い。明かりはついていないが、壁の所々に光を取り入れるための窓があるため視界には困らない。ただ、天気が曇りのためそこまで明るくはなく、若干薄暗い。
見渡すと、どこか教会を彷彿とさせる内装だと感じた。
そう感じた理由は、奥に置かれている大きな像のせいだろう。
ただ、祀られているものに見覚えはない。きっと、この世界で崇められている神様か何かだろう。
隅々まで調べてみたが、ここにも人は見当たらない。
奥に物置のような小さな部屋がある以外には他の部屋がないところを見ると、ここは礼拝堂のような場所なのかもしれない。
改めて奥にある大きな像を眺める。
男か女か分からないような特徴の像だ。
どこか男性らしさも感じるし、女性らしさも感じる。
まあ、神様に性別なんてあってないようなものか。
『それに、今の時代、"男らしさ"、"女らしさ"なんて使うと怒られるしな…』
『しっかり、考えなければいけないときほど無駄な考えが山ほど出てくるのは俺だけだろうか。きっとみんなそうだよな…』
などと現実逃避をしたが、昔やったゲームで祭壇の下に隠し通路が現れたことを思い出した。
「まさかね…」
そう思いながらも祭壇を力任せに押してみると、何と隠し階段が現れた。
『…ゲームやっててよかった』と心底思う瞬間であった。
まさかの展開に驚きつつも、階段を下っていく。
最初は真っ暗すぎて何も見えないのではないかと不安になったが、壁が僅かに発光しているおかげで難なく歩くことが出来た。
しばらく歩くと、少し開けた空間に出た。
壁に見覚えのある模様がある。
そう、俺が目を覚ました時の遺跡にあった模様に似ている。
しかし、全く同じというわけではなく、こちらの模様の方が何となくストーリー性を感じる。
一体、どんな意味があるのかと想像を働かせていると、視界の端で何かが動いた。
「ッ!!」
次の瞬間、俺の身体に物凄い衝撃が走った。




