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白昼夢

不思議な感覚だ。宇宙には行ったことがないが、無重力の世界はこんな感じなのだろうか。


ふわふわと浮かんでいるような浮遊感はあるのに、体は、ずっしりと重い。


(…あれ…俺…今、何してたんだっけ?確か誕生日が…)


思い出せそうで思い出せない。夢を見ているような感覚。何か大事なことを忘れている。


(…誕生日の次の日は普通に出勤して…あ、それって夢だっけ…?)


頭の中がぐるぐるしている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「…さん!ゼンさん!」


「…!うぉ!」


「ゼンさん!大丈夫ですか!?」


「あ、ああ…大丈夫だ、問題ない。」


目を開けたときに、あまりにも顔が近かったので変な声が出てしまった。我ながら情けない声だった。


「ゼンさんは転移ポータルに乗るのは初めてでしたか?」


「ああ…初めてなのもあって気絶してしまったみたいだ。」


「眩しさでですか?」


「うーん、何というか無重力でふわふわっとする割には体がずっしりしていて、頭がぐるぐるする感じが、ちょっとおっさんにはきつかったみたいだ。」


「…?何を言ってるんですか?光った後は一瞬だったじゃないですか?」


自分でも何を言っているのか、何を伝えたいのかがよく分からないのだから、当然相手には伝わらないだろう。


ただ、一瞬ではなかったような気もするが…

きっと、気絶している間に夢でも見たのだろう。


「とにかく、無事に目的地には到着したんだよな?」


「それが…」

表情が暗い。何か問題が起きたのだろうか。


「本来であれば、"カナガワ"という場所に到着するはずなのですが、ここはどう見ても"カナガワ"ではなくて…」


『カナガワ』

これまた馴染のある地名だ。しかし、問題なのは、その"カナガワ"ではなく別の土地に転移してしまったということだ。


「どうして、"カナガワ"ではないと分かるんだ?」


「"カナガワ"はとても栄えている場所なんです。でも、ここは…」


辺りを見渡すと、確かに栄えているとは言い難い景色が広がっている。何なら人が一人もいない。


これでは、聞き込みをしようにもままならない。


「元の場所に戻ることは出来ないのか?」


「転移ポータルは、一方通行なんです…」


双方向の移動が可能だったら良かったんですが…と小さな声で呟いている。


双方向に移動できないのは防犯上の問題なのか、はたまた技術的な問題なのか。この世界の魔法というものはよく分からないが、どちらの理由もある気がする。


「仕方ない。とりあえず、辺りを調べてみよう。」


そう提案し、辺り一帯を調べてみた。


しばらく調べてみたが、人の気配が全くない。


ルシアもこの場所には、全く覚えがないようだ。


いくつか家屋のような建物の中も調べてみたが、荒れ果てているというよりも閑散としている印象を受けた。

また、曇天なのも相まって、どうにも淀んだ雰囲気を感じる。


「これからどうしましょうか…」


「元の場所に戻ろうにも、今いる場所が分からないことにはな…」


ニ人で途方に暮れていたが、そのまま外にいても仕方がないので近くの建物に入ることにした。


「…お邪魔します。」

「お、お邪魔します!」


家主がいるかは分からないが、ついいつもの習慣で挨拶をしてしまった。


部屋の中は、綺麗に整理整頓がされている。家具なども埃を被った様子がなく、最近まで人が住んでいたように見える。


ーーもしくは、今も住んでいる…か。ーー


奥の部屋に何かの気配がする。そこまで感じ取れるようになっている自分が少し怖いが、この世界で生きていく為にはありがたい能力かもしれない。


しかし、人か魔族か。そこまでの区別はつかない。


ルシアに目線と仕草で「奥の部屋に"何か"がいること」と「ここで待っておいてほしいこと」を伝える。


ルシアは緊張した面持ちで頷く。


それを見て音を立てないように、そーっと奥の部屋へ向かう。

俺も緊張していないわけではないが、俺以上に緊張しているルシアを見ると緊張が解けた。


自分よりも怒っている人や泣いている人を見ると、感情が冷めていく感覚に似ている。


扉の前につき、勢い良く扉を開ける。


「ッ!!」


扉の先にいたのは、怯えた表情の子供だった。









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