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身分証明

戦い始めて、どれくらい時間が経っただろうか。


何時間も経った気もするし、数分しか経っていないような気もする。


極度の集中状態だと時間の感覚がなくなるというのを聞いたことがあるが本当だったみたいだ。


周りを見渡すと、魔族の死体がそこら中に転がっている。

死体と言ったが、生死を確認したわけではない。


だが、確実に仕留めた感覚があった。以前にも命を奪った経験がある。とは言っても、ハエや蚊などの虫の命ではあるが、命には変わりない。


戦ってみていくつか気付いたことがある。


魔族の動きが遅く感じたが、どうやら動きが遅いわけでなく、俺の動体視力が向上しているようだ。


それに、力の強さもある程度コントロールが出来る。

その証拠に宿のドアノブも壊さずに回すことが出来た。

また、魔族へ体当たりしたときには、とてつもなく身体が痛かったが、魔族を殴ったときには微塵も痛みを感じなかった。


まだまだ解せない部分はあるが、考えても答えは出そうにない。


頭の中で現状を整理していると、ルシアが駆け寄ってきた。


「ゼンさん!怪我はないですか!?」


「大丈夫。この通り、ピンピンしてるよ。」


ピンピン?と頭の上にはてなが出ている。この世界では、ピンピンしているとはあまり言わないのか。次からは気をつけよう。


「とにかく無事で良かったです!今のうちに逃げましょう。」


そう言い、転移ポータルの列に戻ろうとしたとき、


「ば、化け物…こっちに来るな…」


どこからか、そんな声が聞こえた。


「…あー、何だかお腹が減っちゃいました!さっき食べたばかりなのになー!」


ルシアが気まずさを隠すように、あえて明るく話す。


しかし、ひそひそと話す声は止まらない。


「魔族を倒すなんて聞いたこともない…あいつ、人の形に化けた魔族なんじゃ…」

「シッ!変なことを言うな、お前も殺されるぞ!」


このときばかりは、自分の発達した能力が疎ましい。聴力もここまで強化されていると、聞きたくない話まで聞こえてしまう。


まあ、分からなくはない。あんな化け物みたいな魔族を相手に勝ったんだ。疑うのも無理はないだろう。ただ、そのおかげで命が助かっているのだから感謝してくれてもいいんじゃないかという気持ちにもなる。


そろそろ俺達の番だ。転移ポータルに乗ろうとしたとき、

「待て!」

先程、叫んでいた中年の警備隊の男に止められた。


「お、お前、本当に人間か?」


怯えているのを隠そうとしながらも隠しきれない表情で聞いてくる。その証拠に少し手が震えている。


「はい、人間です。」


「見た目からして人間なのは分かるんだが…さっきの戦いを見てしまうと、どうにも信じられなくてな…」


「何か身元を証明するものが必要ですか?」


「転移した先で何か問題が起こってはまずいのでな…この場にいる全員の命の恩人なのに…疑ってすまない…」


口先だけではなく、本当に申し訳なさそうにしている。特別に配慮してあげたいが、その権限がないのだろう。立場的には会社でいうところの中間管理職といった感じか。どの世界も間に立たされる人間は苦労をするな…


困ったことに俺の身元を証明する物は何も無い。もし、元の世界での物を持っていたとしてもこちらの世界では通用しないだろう。ちなみに俺は無事故無違反のゴールド免許だ。


そんなどうでもいいことを思い出していると、人混みの中から見知った巨漢の男がやってきた。


「こいつの身元は俺が保証する!」


「エ、エドワード隊長!」


「おいおい、もう隊長じゃねえよ。今はただのしがないレストランの店主だぜ。」


「そうでしたね、失礼しました…しかし、身元を保証するというのは…」


「ああ、そのままの意味だ。こいつが何か問題を起こしたら俺の首をはねろってことだ。」


「…本当によろしいんですね?」


「おいおい、今から首をはねろってわけじゃねえんだ!そんなしかめっ面してんじゃねえ!」


ガハハハと笑いながら、警備隊の人の肩をバシバシ叩いている。エドワードはじゃれ合いのつもりかもしれないが普通に痛そうだ。


「そういうわけだ!ほら、行ってこい!」


「ありがとうございます。どうして、そこまでしてくれるんですか?」


「ルシアの連れっていうのもあるが…」

そこまで言うと、少し真剣な表情になり、


「俺は昔からそいつのツラを見れば、だいたいどんな人間か分かるんだ。お前は悪さをするようなツラをしてねえ。むしろ…

まあ、俺が身元を保証するんだ!安心しろ!」


ガハハハと言いながら、肩を叩いてくる。やはり、痛い。


「そ、それでは、転移を開始します。」


「エドワード!ありがとう!」

「いいってことよ、ルーカスに会えるといいな!」


「本当にありがとうございます、助かりました。」

「気にするな。その代わり、あまり深く考えすぎるなよ。自分の心に正直にな。」


「…?ありがとうございます。」


最後の言葉が少し引っかかるが、その意味を問いただす間もなく視界が光に包まれた。


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