孤軍奮闘
何とか町の中心まで避難することができたが、そこには人が溢れ、長蛇の列が出来ている。
避難には転移ポータルというものを使うようだ。
転移ポータルとは、事前に指定された2つの地点を瞬間移動できる装置らしい。簡単に言えば"どこでもドア"だ。
「急げ!身につけられる荷物以外は全て置いていくんだ!」
「押さないでください!女性と子供が優先です!」
警備隊が大きな声で叫んでいるが、魔族がすぐそこまで迫っているのを肌で感じているのか、既に統制はとれていない。
あちこちで様々な怒号が飛び交う中、銃声が鳴り響いた。
「落ち着け!一人でも多くの人が避難できるように整列しろ!命令に背く者は容赦しない!」
中年の警備隊男性がそう言うと、こちらに銃を向けた。
乱暴な言葉遣いと態度はいかがなものかと思ったが、理には適っている。
しかし、それでも民衆は止まらない。目の前に銃という脅威があったとしても、後ろからは魔族というまた違う脅威が迫っているのだ。
「お、お前達!本当に撃つぞ!」
脅しの言葉を叫ぶが、もう誰も聞いていない。
「他に避難する方法はないのか?」
「もちろん自分達の脚で町の外に出て避難することも出来ますが、町の周りにどのくらい魔族がいるか分からないので現実的ではないかと…」
転移ポータル以外の脱出方法をいよいよ模索しないといけないと考え始めたとき、
「おい!何で動かねえんだよ!」
「知らねえよ!おい、動けよ!」
どうやら、転移ポータルが上手く作動しなくなったようだ。
「どういうことだ?」
「転移ポータルの半径100m以内に魔族の存在を検知すると、魔族が転移ポータルを悪用することがないように安全装置が作動して使えなくなるんです…つまり…」
「ま、魔族だ!すぐそこまで来てるぞ!」
誰かが叫び、それと同時に人の波が我先にと前へ進み始めた。
「押さないで!子供が倒れてるんです!」
人が押し合い、転倒している姿が見える。
「…ルシア、二人を頼むぞ。」
「ゼンさん!」
前方に見えるのは、先程と同じタイプの魔族だ。
何度か対峙して分かったが、1対1であれば充分に勝てる相手だ。
リーチは相手の方が長いため、一気に距離を詰める。
そして、先に相手に手を出させ、カウンターを決める。
今度は一撃でその巨体が吹き飛んでいった。
この世界に来る前から人よりも力は強い方だったし、運動神経にも自信があった。
しかし、こんな人外の力はなかった。
今でもこの力が信じられないが、そんなことはどうでもいい。
今は俺にできることをするだけだ。




