20代 最後の夜
〜2023年8月12日〜
明日、8月13日は俺の30回目の誕生日だ。
30回目の誕生日なんて言い方をしたが、世間で言うところの三十路というやつである。
子どもの頃は、大人になった自分なんて想像がつかなかった。
しかし、いざ自分がなってしまえばなんてことはない。
20歳くらいまでの誕生日は、理由もなく何だかそわそわした気持ちになったり、いつもと何か違う特別なことが起きるような高揚感があったりしたが、この歳になるとそういったワクワクする気持ちも薄れてきてしまった。
同じような日々が過ぎ、特に変わったことも起きない毎日。
今の生活に不満があるわけではない。
むしろ、大きな不幸が起きるわけでもない今のこの生活を送ることができていることに感謝するべきかもしれない。
そんな毎日がこれから先も何十年続くのかと物思いにふけながら、ぼんやりとテレビを眺める。
テレビでは、日本列島に台風が上陸したと、名前も知らないアナウンサーが暴風の中で飛ばされそうになりながら必死にレポートをしている。
こんな天気の中で仕事をするなんて大変だなと、他人事ながらも少し同情する。
日本の各地と中継を繋ぎながら、各地方の様子を報道している。
実家の家族は大丈夫だろうか、と心配になる。
「…台風が過ぎたら、久しぶりに実家帰るか。」
そんな独り言を呟き、ボーッとテレビを眺め続けていた。