表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デッサン人形  作者: Chan茶菓
4/4

epilogue

 


 ___あれから何日が過ぎただろうか。

 


 

 身体の自由を奪われ、抵抗する事もできない。薄暗い部屋の中の、更に暗いクローゼットの中に、俺は監禁されている。



 誰かの助けを待つ事も考えたが、生憎俺には友達がいない。

 

 誰も助けに来てくれない。

 ここから一歩も動けない。


 暗くて生臭い匂いがする。ザリガニの匂いだ。

 

 亮子は、俺に一日一回の食事を与える。それも、毎日ラザニアだ。俺の好物だからだろう。

 何故かそのラザニアはいつも真っ赤で、少し錆びた味がする。

 

 彼女はいつも「私のラザニアですよ」と言ってスプーンで掬い俺に向ける。

 気持ち悪さより空腹が勝って、俺はそれを口に入れる。

 はぁ、はぁと息を荒くして、亮子はそんな俺を見つめていた。

 

 そういえば、ここに監禁されて一日目の事だったか、常に漂う腐敗臭に耐えられず吐いてしまった事があった。亮子はそれを見て「あらあら。吐いちゃうなんて可愛い。すぐに回収するわね」と言って俺の口を拭き、俺の吐いたソレをタッパーに入れた。


 本当に、狂ってる。


 クローゼットから中から引きずり出されて、俺は全身の服を脱がされる。

 

 亮子は笑って言った。


「これから貴方はデッサンされるのよ」


 デッサン? 俺がデッサンされる……? 

 亮子はおもむろにイーゼルとキャンバス、筆、それからカミソリを取り出してきて俺に言った。


「私と貴方は一つになるの。この絵の中でね」


 そうして亮子はこちらへ歩み寄り、俺の手首を持ち上げ、カミソリを当てた。


「ははは」


 彼女は勢いよく俺の手首を切った。

 痛い……痛い痛い……、怖い……ただ恐怖と痛みが俺を襲う。

 そして亮子は今度はそのカミソリで自分の手首を切る。流れる鮮血が白い肌を伝う。

 亮子は、ポタポタと垂れる俺の血と自分の血を混ぜ、筆に絡めた。


「これが、私たちの絵の具よ」


 そして彼女はキャンバスの方へ移動し、その筆で絵を描き始めた。



 

「あはは…」



 

 亮子の笑う声だけが、この部屋に響いた。






 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 悪い夢を見そうです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ