エラーが発生しました。
つい先日見た光景が面白かったので書いてみました!笑
書いてる途中「なんてシュールなんだ」と思い、笑いが止まらなかった思い出。
この物語を読んで、クスッと笑って貰えたらいいなぁと思います。
感想お待ちしています。(_ _*))
彼女の記憶が無くなった。
僕と出会ってからの記憶が、全て消えてしまったのだ。
僕の彼女は大学でも、家でも、キャンパスでも、カフェでも、
僕が行きたいところに着いてきてくれた。
僕が辛い時も楽しい時も嬉しい時もずっと一緒に居てくれた。
まだたった一ヶ月の関係だけど、ずっと一緒にいたいと思ってたし、これからもずっと一緒だと思っていた。
「あ、あの!」
「彼女は、大丈夫なんでしょうか?!」
医者の男は黒縁でフレームの細いメガネをクイッと押し上げた後、僕と反対に静かな声で重々しく口を開いた。
「残念ながら、手遅れです。」
僕の全身からさぁっと血の気が引いていく…
医者の低く、静かな声とその表情に、冗談を言っているのでは無いと確信できた。
「そ、そんな…」
もう一度彼女を見る。
色々なコードに繋がれた彼女を見ると、胸が痛くなり、座っていられなくった。
僕は椅子からずり落ちるように地面に手を着いた。
「ごめん、ごめんなぁ。」
彼女の前ではかっこよくありたかったのに。
今は涙ぐんでしまって、情けない姿だ。
あぁ、僕が君にコーヒーなんてかけなければ…
実は、彼女の記憶喪失の原因は僕にあった。
「で、でも!わざとじゃないんだよ」
僕は彼女の誤解を解こうと、必死に叫ぶ。
君の、充電ゲーブルに引っかかってしまったんだ!
確かに、最近はスマートフォンに構いすぎて、君を蔑ろにしていた。
でも!
僕は…パーソナルコンピューター。君が一番だったよ。
まぶたの裏に最期の彼女の姿が浮かぶ。
『エラーが発生しました。』
とだけ言い残し、目を閉じた彼女。
医者は「同じ機種の新しいもの手配しますね。」と僕に伝える。
確かに見た目は同じ彼女だけど、僕との一ヶ月を。
大学でのレポートや癒しのアニマル動画を記録していた彼女とは。まるで別人だ。
「忘れないようにしよう。」
彼女との出会いを。そして記憶を。そして別れを。
僕は心の底から、そう誓った。