一話(2)
”シュッ”っとサプレッサーで小さくなった銃声。
銃弾は運良く足にHitし、相手はうずくまって回復を待つようだ。
ゲームの仕様として、1分経過すれば傷が癒えるのだが......その程度で射線を切ったと思ったら大間違いだ。
「次はヘッショいけるか?最悪胴体はどうだい?」
「......HSは無理。止まってる敵に胴体なら、集中する必要もないよ。」
「ナイスヒット。」
あっさり追撃をし、相手はロビーに返されたことだろう。
俺があんなことしてたらセラにリスキルされるよ。
怖い怖い。
「物資漁りに行く?別にあんな敵の物資はおいしくないと思うんだけど、マスターはどうしたい?」
「敵残り3パだし、行かなくていいか。こっちは武器も場所も文句無いぐらい完璧だから。」
「おっけい。」
いくら俺らが高所取れてるとは言え、地上は激戦区すぎにも程がある。
最終安置も迫ってるけど、ギリギリまで芋ってれば勝てるから外野としてチマチマとアサルトでも撃ってるか。
「漁夫るなら今、2パーティで1パは1人ダウンしてるよ!」
「よっしゃ、ダウンしてない方へ凸るぞ!」
「これでガバガバのAIM発動したら許さないからね。」
チマチマ撃つ暇は無かったし、しれっと怖いこと言うなよ。
違う、ツッコミ入れてる場合じゃない。
あと少しで世界一位。
心拍数が上がり、体温も上がってることをまさか仮想現実でも感じれるとは。
俺らは崖上から勢いよく飛び降り、流れるように岩裏の1パーティを撃破。
「セラこそAIMガバるなよ!世界一位は目前だ、勝つぞ!」
「ガバってもマスターいるから大丈夫!」
「なんでだよ!」
もうひとつの岩裏へ挟み撃ちを仕掛け、生きてる敵をSMGでボコボコにする。
相手は倒れ、さっき打ったSMGの硝煙の匂いが鼻につく。
あとは勝ちのアナウンスを待つだけ......?!
その時だった、悲劇が起きたのは。
――何にも見えない。
何も聞こえない、3年間このゲームをやってきてこんな事が起きたことは無い。
新しいバグなのか、ログイン数が増えすぎてサーバーが落ちたのか?
「セラ......聞こえるか?俺ら勝ったよな?」
不安に押しつぶされそうになり、何度も声をかける。
――返事は来ない。
普通、負けたならロビー......俗に言う広場のような所へ転送されるはずなんだ。
おかしい。
「返事してくれよ、誰か!今どうなってるんだ!」
思わず叫んでしまう。
光も......いや、遠くに光が見える?
ハハッ、そういうことか。
優勝者は世界一位の祝いとしてサプライズが用意されてたのか。
「あの光はきっとロビーの光なんだな。この闇を走り抜ければ観戦してたプレイヤー達が出迎えてくれる。」
なかなか洒落たことしてくれるじゃんと思い、全力で笑顔で走り出す。
セラはどうなってるか分からないけど、あいつのことだ。
きっとすぐに状況を理解するだろう。
「ハァ、ハァ。それにしても遠すぎるだろ、こちとら試合後だぞ。」
200メートルほど走り、やっと光の目の前に立つことが出来た。
息切れしている状態で登場したらダサいので、深呼吸をして呼吸を整える。
「よし、行くぞ!」
隠しきれない喜びを抑えながら、光の中へと歩き出す。
フワッと眩しい光に包まれ、落ち着いた後に周りの景色を見渡す。
......そこはロビーではなく神々しい場所で、歓声なんか聞こえず、微かに聞こえる水の音だけが響いていた。
思いもよらない意外な光景に立ち止まり、胸に手を当てて深呼吸で落ち着こうとした時。
――その時に気づいたんだ、俺の心臓の鼓動は止まっていることに。
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