一話(1)世界一位になったのに......
「VRMMOって知ってるか?」
噂では聞いたことがある。
特殊なデバイスを使い、仮想現実を現実と全く同じ感覚で過ごすことの出来るオンラインゲームらしい。
しかし無職の俺からすれば、あまりにも値段が高すぎて買えたもんじゃない。
「知ってるけど、どうして俺にその話を持ちかけたんだ。お金無いの分かってるよな。」
「すまんすまん、悪気は無かったんだ!」
「んで、VRMMOがどうしたんだ?」
なんとなくだが、聞いてきた理由ぐらい分かる。
わざわざ何も無い俺の家にまで来たこいつは、ゲームクリエイターで俺は無職ゲーマー。
ゲーマー視点からの情報収集をしたかった、ということだな。
「ここから意外と真面目な話になるんだけど、実際お前は興味があったりする?」
大正解。
毎回新作ゲームが出たら家に押しかけてくるんだから、分かるに決まってるわ。
ハッキリ言って面倒臭い。
それでも断らないのは、そのゲームをやらせてくれるかもしれないという希望を抱いているから。
......でも、そんな事は今まで一度も無いけどな。
「興味あるけど、さっき言ったろ。お金無いって。じゃあなんだ、お前がやらせてくれるのか?」
「やっぱり勘が鋭い......
凄く煽られた気がした為、思いっきり台パンをした後にスマホを開いて調べてやった。
もうボランティアをする気はこれっぽっちもない。
二度と来るな、怒りの気持ちを込めて俺は8年ぶりに怒鳴る。
「今検索したらデバイスで五千万するぞ。出せる訳ないだろ、ほら分かったら帰r......え?」
「嫌な思いさせてごめん、けど落ち着いて聞いてくれないかな。」
基本的に温厚な俺がキレた、このことに凄くこいつは驚いてるけど今は関係ない。
勘が鋭い......いやいや、まさかな。
無職の無名ゲーマーだぞ?そんな奴に五千万も払って得するとは思えない。
「VRMMO......いやVRFPSゲームであるFirst Hit Reset、通称FHRが僕の会社から新作として出されるんだ。」
「ちょっと待て、名前ダサくない?略称は新しい美容成分か?」
「......気にしちゃ負けとだと思うよ、うん。」
もうちょっといい名前は無かったのか......内容は面白そうだけどもさ。
で、話の流れ的にはデバイスを買ってやるからこのゲームをやってくれ。SHR?は自腹で。
みたいな感じになると俺的には考えている。
考えていてもしょうがない、続きを聞こうか。
「お察しだと思うけど、このゲームを君にやって欲しいんだ。契約期間は3年、大会とか出来るだけ参加する感じで。」
「デバイスはくれるのか?ゲームは自腹で払わないといけないのか?」
「夢中になってる、こっちも嬉しい限りだね。デバイスは会社から支給するよ、返さなくてもいい。ゲーム代は僕が払うよ。さっき失礼なことしちゃったし、今までのお礼だよ。」
「わお。イケメンじゃん。」
―――――
懐かしい俺とFHRの出会いだったな。
無職の人間がたまたまゲームクリエイターの同級生ってだけで五千万の物が貰え、そのおかげで今の俺がある。
......世界大会。
――ところで、これって試合中に考えることだったか?
「おーい、マスター。世界大会中なのに考え事してていいの?試合に集中した方がいいと思う。」
「無職の頃の俺を思い出してさ。デバイスなんか買えたもんじゃなかったのに、ここまで来れたんだ。」
「今もニートでしょ。」
グハッ。
その言葉は痛い......切れ味抜群過ぎ、いいね。
ん?誰がドMだって?
しかし......このセラって言う相方なんだが、落ち着いてて感情の分かりやすい声をしてるくせに6割無表情なんだよな。
そのくせアバターは銀髪ロングで紫目、大人っぽさの中に若干の幼さが入った反則級の可愛さ。
だけど、セラって本名なのかゲーム名なのかも分からんし、距離感が掴めない。
「また6割無表情とか考えてたでしょ。酷いよ。」
「......ニートの方が酷くないか?その点はどうなんですか?」
「見て、正面に敵。」
流されるのは慣れたことだ。
そんな大会の雰囲気をぶち壊しているセラを横目に敵を視認。
残りの敵は20人、11パーティと言う終盤戦を迎える。
余分なことを考えるのはもうやめよう。
「スナイパー貸して、そして黙ってて。」
「はいよ。ちな、相手はソロだから倒したら物資を漁ろう。」
「OK」
約100メートル程先の敵、こちらには気づいてないそうだ。
あの程度の岩の遮蔽物に隠れてるつもりなら、世界大会なんて出ない方が良かったよ。
「......」
セラは呼吸を忘れるぐらい集中し、引き金に指をかけ、慎重にスコープを覗く。
隠れているつもりの敵に当てる為に極限までAIMを合わせたのを確認し、銃弾を発射する。
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