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プロローグ 英雄譚

あけましておめでとうございます。

エタり作家の木月です。

新作になりますが、今回は完結済のものを小出しにしておりますので、

エタることはございません。エタることはございません(大事なことなのでry


プロローグは本編の一年前になります。

 揺れる木陰。巨木が所狭しと生える山道。

 道と言っても獣道で、歩くのも大変な細く凸凹な足元を抜けるように駆ける二つの陰がそこにはあった。一つは人間の男の子。一つは四つ足の獣。

 少年は全力で駆ける。足を止めればそこに待つのは死。

「ちょっと待ってくれよ!」

 叫ぶも、後ろの獣は聞き入れて貰えそうにない。

 この山は少年の住む村の外れにある小高い丘のような山。遊び慣れ、常に変化する自然だが、それを含めたうえで地形もある程度把握できている。とはいえ、人と獣とではその脚力に大きな差があり、追いつかれるのは時間の問題。

「こうなったら!」

 彼は落ちていた太めの枝を拾い上げると、獣めがけて構える。

 灰色の毛並みに怒りに燃えた相貌、ピンと立てた両耳、大きな口に並ぶ歯を見せつけ、低く唸る獣、オオカミ。

 それに向かって立つのは手作りの素朴な服を身に纏った少年。

「あのさぁ、俺に何の恨みがあるわけ?」

 尋ねるも、より深く姿勢を低くするだけで警戒を解く気はなさそうだ。

 ゆっくりと両者は間合いを詰めよう詰められまいと動く。

 が、その時、オオカミが飛び出し、足元へ食らいつこうと大きな口を開けた。

「うわああああ!」

 木の枝を横に構えガードする。

 オオカミが強く咥える。

「こん、の……!」

 振り解こうとするオオカミと、取られまいとする少年。両者の拮抗は呆気なく終わる。

 あっと声を出す間に枝を奪い取られ、投げ捨てられる。

 そのはずみで腰が抜けた。

 絶体絶命。

 脳裏に浮かぶは村の人たち。

 父さん、母さん、妹、おじさん、おばさん、村の子供たち、そして好きな子……。

 来る痛みに身構える。

 が、一向に痛みは訪れない。

 強く瞑った目を恐る恐る開くと、そこには横たわるオオカミ。

「怪我はないかい?」

 獣の隣に立つのは、甲冑を身に纏った青年。

 彼はヘルムを外すと、彼に手を差し伸べる。

「あ、ありがとうございます」

 その手を取り、ゆっくり立ち上がり、彼の顔を見る。

 汗で湿った黒髪に力強い灰色の瞳。歳は二十代半ばといったところか。

 その後ろでゆらりと立ち上がるオオカミ。

「さぁ、諦めてここから帰りな」

 鞘から光る剣を抜き取り、オオカミへと向ける。

 その言葉を受け取り、少し唸った後に踵を返した。

「あの、あなたは……?」

 少年が尋ねると、彼はこう残した。

「ただの騎士だよ。探し物を探している途中の、ね」

 それが少年の、王国の、運命を変える英雄との出会いだった。


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