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九話 ジロウ ちょっと遠くへ散歩

 今日は稽古や勉強はなくお休み。

ロゼッタにお弁当を作ってもらい、背負い袋に弁当、水筒、雨具、ロープ、敷物などを詰め込んだ。


「ミミ、いくよー」


 魔女の家のドアを開けて、少し南へ下ると、左右に見上げるような石の円柱が立っている。右側には“生あるものは魂を捧げよ”、左側は“生無きものは魂を望め”と書いてある。そして50メトル先には、小さな狛犬が鎮座する。


 魔女の家は、小高いところに位置し、裏の物見台に上がると、遠く海まで一望できる。ミナミ村のさらに南に5キロほどに宿場町“ロンパ”がある。そこから東西に道路が続いている。


 今日はミナミ村を経由して、東側にある物見台に行くことにした。片道6キロは、10歳の子供の足では3時間はかかる。ので、半分ぐらいミミにお願いして、背中に乗せてもらう。


 ミナミ村を迂回して東へ向かう。物見台へは草原が続いており、ところどころに牛や羊が放牧されていた。物見台には、ミナミ村の人が2人交替で常駐している。


「こんにちは」僕は声をかける。

「ええと、だれだっけ?」首をかしげる。

「今度来た、魔女のジロウです。よろしく!」

「これはこれは、ぼくはカイラと言います。もう一人いるのでちょっと待ってください」物見台の横の小屋に走っていった。


「どうも、僕はキースです」


 物見台に上がらせてほしい旨を伝えて、キースと一緒に登る。そこで、全方位を眺めながら説明を聞く。


「ずーっと南に見えるのが街道です。その向こうは海です。東の方はサハラ王国で、西側は魔女の保護区です。私たちのミナミ村は、手前の方に見えます。その向こうは、ササカセ川です。われわれ物見番は、盗賊や魔物の接近が無いかを見ています。まあ、この200年ぐらいは何もないですが。村の安全のための、誇りある務めです」キースが胸を張る。


 と言うことで、物見台の視察は終わった。

そして、持ってきた昼食を、2人にもふるまって楽しく食べた。

「魔女様、美味しかったです」


 ゆっくり浮かんで流れてゆく雲を見ながら、これからのことを考える僕だった。ここにきて1か月が過ぎた。


 毎日が単調だ。朝は家の周りの散歩、昼食後は裏庭の方へ少し遠出して、夕食後は、ミナミ村の方へ足を延ばす。それぞれ、往復30分ぐらいだが、ナズナと歩くことが多い。


 そういえば、3日に1度ぐらいは魔女の村で子供たちと遊んでいる。気分が童心に返って楽しい気分が味わえるが、いまだに、行動が爺くさい。この新しい環境と身体で、もっとわくわくしたことをやりたい。でも、何をやればいいのか、何も浮かばない。もう少し、慣れてくれば、掴めるものがあるかもしれない。


 部屋に入って、パソコンを起動する。今日、あったことをまとめる。まあ、日記を書く。


 その夜、久々にあの夢を見た。白い道の両脇にカップが、ずーっと並んでいる。地平線まで。空が虹色に波打っている。地鳴りのような、低い音がだんだんと近づいてきた。そして、ダダーンと突然の大きな音にびっくりして目が覚めた。何かの啓示だろうか? そして、気が付くとミミが、僕の顔を覗き込んでいた。


「ミャー?」

この頃、ナズナは僕の部屋に常駐している。ミミの姿で勝手気ままに、のどを鳴らしながらの、ごろ寝が得意らしい。

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