六十一話 魂を産む新生魔女の星
さすが、一夜明けた朝は、何かと混とんとしており、休息が必要であった。多くの民も、昨日の祭りの余波で、今日は休んでいる。
そして、ここは、二夜明けた午後の魔女の家。
パラレルワールド管理局のキースと再構築係のカレン。魔女側にはジロウ、スミレ、サナエ、ナズナ、カエデ、イサオ、ハナ、サクヤ、イリカ、アウラの10人と光のコロネさんが居る。また、7人の妖精たちも、それぞれ椅子に座っている
「みなさん、ガイアの誕生、おめでとうございます」
「ハナ様、サクヤ様、そしてコロネ様。お帰りなさいませ」とカレン。
「実は、神崎元様が住んでいた地球と接続が、後10日で切れます。今まで、比較的容易に行き来が出来ましたが、切断後は難しくなります」キースが申し訳なさそうに口を開いた。
地球と魔女の星は仮想世界で繋がっていたが、実体を持ったことにより、その繋がりが無くなるそうだ。
「そういえば、スミレちゃんは帰るの?」ハナが聞いた。
「いや! ジロウ君と一緒にいる!」って、スミレが顔を真っ赤にして叫んだ。
「うん、うん」なぜか、うなずいているサナエ。
「でも、お母さんに会えなくなるのは、ちょっと寂しいかも・・・」
「大丈夫です。私カレンが先日スミレ様の実家に赴き、その辺の話をしてまいりました」
「それで・・ どうだった・・」スミレがしょんぼり尋ねる。
「こちらに転移されます。お母様とお父様、もも姉様と、はやと兄様が後日に、こちらに来られます」
「う・・・」スミレがさらに凹んでいる。
まあ、こういうことらしい。
いつも、ジロウと一緒だけど、眠るときも。両親が来ると、この好き好き状況が、途切れるかもしれない。それは、まあ、相談ってことでとサナエが慰め、スミレの機嫌が少し良くなった。
10日経ったある日、魔女の神殿のゲートから、スミレの家族が転移してきた。
「おかあさーん」スミレがしがみ付いた。
「まあ、あまえんぼさんね」やさしくスミレの頭を撫でる。
「こんにちは、スミレの父の”ごんぞう”です。スミレがお世話になっております」頭を下げてきた。
続いて、ハナにアイリスが抱き着いた。「おかあさん、あいかわらず若いわね。あの時以来ね」
まあ、それぞれ再開の喜びと近況の情報交換に一時を過ごした。そして、一同、魔女の家に向かい、居間に集合した。次々と自己紹介を進めた。
さすが、地球組はコロネさんを見てびっくりした。
「さて、これからのことも話し合いたいけれども、ぼちぼちでいいか・・・」僕は急がない。
「そうそう、今朝ケーキを焼いたの。食べてくれる?」スミレがメイドのアヤメさんに目配せをした。
次々とケーキやクッキーなどがテーブルの上に並べられた。
「これはね*** これはね*** 」スミレが解説してゆく。
「ジロウねーちゃんと一緒に作ったの。! 姉ちゃんと!」なぜか力強く念を押す。
「スミレが、こんなに明るく元気で、みなさん有難うございました」アイリスが頭を下げた。
さて、次はコロネさんの話。
新生ガイアの星になって、魂が生成されるようになった。少しづつではあるが、生成された魂と交換でコロネさんの欠片が戻りつつある。
そして、コロネさんが魔女の家に帰ってきた。まだ光の粒だが話はできるようになったのだ。
「コロネさん。あの時の勇断について、この星の皆を代表してお礼申し上げます」僕はお礼を言った。
「うん。まあ、あの時は頑張ったよ。サクヤとの子供もできて、楽しかった日々を失うのは嫌でね」
パラレルワールド管理局の話では、サクヤの時代に、次元の闇と呼ばれる生命体がこの星を襲った。急速に魂が食われてゆくさまを見て、サクヤがその悪鬼を取り込むことで難を逃れたのだが。しかし、魂を奪われた人々は覇気が失われ、このままでは滅亡する。一計を案じたコロネは自分を砕いて、多くの人と生物に魂を与えた。そのため、コロネさんは実体が無くなったのだ。
しかし、コロネの憑代(狐人)と子供たちは、エリル村に住んでいる。エリル村は、ガルバ王国の西に位置するアズサ町から、さらに西へ3日ほどのところにある。
「コロネさんの子孫が、エリル村にいる。行ってみる?」サナエがコロネに話を振った。
「行きたいね。でも、この身体じゃ、まだ飛べないし」
「あ・そうだ。この子、イリカはその村出身で、コロネ様の子孫と思われますよ」
「おお・・。確かに繋がりを感じるわ!」
「やっぱり、もう少し実体がはっきりしてから伺うことにするわ。この光のままじゃあ ”私がおばあ様よ!”って言えないから」
「「「え・・。おばあさま?」」」
イリカは、『おばあ様って素敵!』って、ぼーっと見ている。
「それから、ナズナ様ですが。実は彼女はこの星、そのもの。地球的な表現だとガイアあるいは慈母神様のようです。彼女が徐々に復帰していますので、新たな魂が産みだされています。」キースが言う。
「「「えーっ」」」、魔女サイドが驚きの声を上げた。一方アイリス一家は何のことかわからず。
「みなさん。長い間親身に接していただきありがとうございました。これからもよろしくお願いします。」
まあ、そういうものか。と魔女サイドはとりあえず納得した。
「ジロウ様には、これまで通り傍に居させてください」少し俯いて、はにかむナズナ。
ナズナは、大地の端末のようなものであるらしい。だから、目の前にいるナズナが魂を産んでいるわけではないと。まあ、そうだな。
「さて、それでは、サクヤさんとハナさんの今後について、当人たちの考えを聞いてみましょう」
「そうですね。私たちは昔の人ですから、公の場には出ない方が良いかと思いますし、サクヤさんもそのように考えますよね。」
ハナさんがサクヤさんに同意を求めた。
魔女の神殿の奥で、封印されたサクヤとそれを守るハナ。今は昔、確かに、この星を救った英雄である。
知り合いは4000年の時の彼方に消えていった。ふたりだけ残された感じで実に寂しいと。そして、サクヤとハナは、魔女の家から北に5キロメータほど隔たったところに住むことにした。
そこには、やがて人が行き来するようになって、小さな村になる。
めでたく大団円を迎えました。