六十話 星誕祭(ガイアの誕生)
「ドクンッ」と大地が動いた。
地震ではない。胸の鼓動のように柔らかい。
「ドクンッ」
ジロウ歴3年の春。それが始まった。
それから、半年。いよいよその時が来た。
朝日が昇ると、すこしづつ人が神殿前に集まってきた。
交響詩『魔女と魔王』が静かに流れる。
初代魔女を讃え、初代魔王を讃える。
人々は、仕事の手を緩め、遊園地や神殿広場に集まり、動物たちは草原や浜辺など見渡しの良いところに集まった。
この星の生きとし生けるもの全てが、この星の新たな誕生を祈る。
空は、紫、赤、橙、黄、緑、水、青、紫、赤、橙、黄、緑、水、青へと波打ちながら輝いている。
一方、清々しい風がゆったりと吹いて、香しい森の匂いを運んでいる。
集まってきた人々は静かに、神殿に向かって跪いている。
式典は、実りの秋が始まる10月1日11時に祈りを開始した。
魔女の神殿前には、僕やサナエ、ミズナ、キク、コギク、アヤメ、ハナエ。
ナズナとカエデさん、マサオ君にツバキ、ミドリ子たちが700人。
魔女隊のアオシとモモコたち36000人が、覚醒されて並んでいる。
ホムンクルスたちも3000人がスミレによって覚醒されて並んでいる。
魔女の村の住人が300人。
で、埋め尽くされている。
65カ所の神殿前では神官が出て祝詞を唱える。
2回目以降は、皆が唱和する。
5回祝詞が捧げられると、妖精たちの歌声が四方八方へと響き渡る。
町の遊園地や広場には人や動物たちが集まっている。
もちろん、森の中の広場や、山の中腹、海岸の浜なども、人や動物で埋め尽くされた。
「dodododoドーン」「dodododoドーン」と鼓動が次第に大きく早くなってきた。
7方を守る妖精たちの歌声が空を覆うように広がってくる。
3つ巴の太陽が天中にさしかかった時、それは起こった。
「ドダーーーーン」とひときわ大きく鼓動が打って、突然の静寂が訪れた。
真っ白な世界。
この星の生きとし生けるもの全ての、無言の祈りが、さざ波のように空に上がってゆく。
ミドリ子や妖精たち、アウラたちも踊る。
人の国、エルフの国、獣人の国、ドワーフの国、竜人の国、アルフの国、シンの国、森の獣たち、小さい羽虫や地上の虫たちも東の空を見ていた。
魔女の家の前には、歴代の魔女の幽体と、神様も居た。
新しい光に向かって! 感謝とこれからの安寧を祈った。
そして、歌った。
・・・・・。再び、耳を聾するばかりの賛歌が響き渡った。
そして、真っ白な視界が、次第に色づき、もとの世界を映しだした。
3つ巴の太陽が、真南になったとき、それは完了した。
僕は、すべての人にメッセージを送った。
「おめでとう。この魔女の星は、『ガイア』と呼ばれ、新しく生まれ変わった。皆の祈りが神様に届いた。ガイアの誕生に感謝を!」