五十七話 第4,5,6の杯をもとめて
経緯270度には、小さな小島が目的地であった。
周囲、100キロメータほどの小さな島が、大海原の中にぽつんとあった。周囲をぐるっと巡って、広い浜辺にペガサスを下した。
浜辺まで迫っている木々や草が異常に大きい。木の幹の太さが2メータを超えるものがざらで、落ちていたどんぐりもボールほどの大きさだった。この島は巨人の島か?。牛みたいなウサギが出てきたらどうしよう。
「おーい。大きな貝がとれたよー」食いしん坊のガルが早速潮干狩りかな?
「お・・。おっきい!」カナンが座布団のような貝を一所懸命持ち上げていた。
「こんなの食べられるのかな?」
釣りを仕掛けると、こちらは普通の大きさの魚が釣れた。
早速、バーベキューの用意をする。
まあ、海鮮物だけでなく、持参の肉も網の上に乗った。
いつものガルは、肉ばかり食っている。こんな奴を連れてきたのは誰だ!
その夜は、残念?なことに、大きな動物は現れなかった。
そして、小高い丘の中腹に開いた洞窟へと進んで、4番目のモノリスを見つけることができた。
手順通り聖杯を満たした。
次は第5の杯をもとめて南極にゆきたいのだが、若干疲労感が漂ってきたので、一旦帰宅することにした。次は、3日後と言うことで、アミンダ隊をガルバ王国に届けた。
「なあ、ナズナや」
「なんですか? ジロウ様」
「ナズナは、竜人族の近くの遺跡で、ササ様が発見したと言っていたよね」
「はい。そうです」
「この世界は、神崎元さんが作った仮想世界と暗黒星が合体してできたと、パラレルワールド管理局が言っていたよね。遺跡は、暗黒星になった星の文明の名残で、君はその名残なのだろうか?」
「そうですね。私は古い文明の名残ですか?・・・・」
「カエデさんやマサオ君は、ナズナから見て、どういう位置づけなの?」
「うーん。よくわからない。ただ、私をおかあさんて呼んでくれるから、子供かな?」
最近、ナズナは、遠くをみるように、ぼーっとしていることがよくある。
3日経ったので、アミンダ隊を迎えに行って、一路南極に向かった。南極は、氷で覆われた大地と思われる。見渡す限り、真っ白で吹雪いている。
極に近づくにつれて、吹雪が止み、やがてコケが見え、草が見え、花園にモノリスがあった。
極は、暖かい。風も吹いていない。半径20キロメータが隔絶された世界であった。モノリスに近づき、手順通りに五番目の杯を満たした。
日没まで、2時間ほど残っているので、周辺の探索に出かけた。
ところどころに花が咲き乱れ、蝶などの羽虫が飛んでいる。しかし、ウサギやシカなどはいない。もちろん人種もいない。ときおり風が通り過ぎて行くが、静かな世界だ。
夕食は、外でぱっとしないバーベキューになった。
今は日が沈まない季節で、白夜である。
「これだけ明るいと、星が見えないね」サチが見上げる。
「さあ、風呂に行こうよ!」クロエが女子どもを誘う。
これはまずい。 ナズナと入れ替わった。
ガルは諦めない。僕をじっと見つめている。
「こら! また変な想像をしているのかな!」カナンがガルの頭をぺしっと叩いた。
「ガル君は、俺といっしょに入ろうや!」ジンが引っ張って行った。
そして、ここで泊りとなった。
次の日は、一路魔女の家に向かった。
星を半周するのはちょっときついので、一旦魔女の家で休養することになった。
次の日も、休養日。
やっと、六番目の杯をもとめて北極に出発した。
北緯60度ぐらいから、吹雪いてきた。下は氷の塊で覆われている。さらに、北上すると吹雪はやんで、まわり一面が氷に覆われていた。
「ちょっと、ナズナスピードを緩めて、下に近づけて。」
「おお・・・!」
「あれは何?」アミンダ隊が叫ぶ。
「四角て長いものが、いっぱいある。 建物なのかな?」
「道らしきものも見えるよ。」
そこは、摩天楼の氷漬けだった。
「さあ、なんだろうね?」僕は知らないふりをする。
説明しても理解されないだろうし、確かにあれは、この星が暗黒星になる前の文明の名残なのだろう。
早々に通り過ぎるにかぎる。
さて、前方に小高い丘が見えてきた。そこは南極とは違って、吹雪が舞う極寒の場所であった。洞窟が口を開けており、ペガサスのまま侵入してゆく。そして、モノリスが目の前に現れた。
6番目の聖杯を満たした。
ナズナの記憶。
あの氷漬けの町。確かに記憶の中に埋もれていた。遥か昔、私がこの星に降り立ち、成長して子供たちを創造し、子供たちを育み文明を築かせた。
しかし、ある時から、なぜか子供たちが、だんだん居なくなった。あらゆるところを探したが、一人も見つからなかった。そして、この星である私は失望の中で機能を停止したのだ。
どれほど時間が過ぎただろうか。ある時、5代目の魔女ササという人が、私の分身が起こした。それから、分身の私は魔女の家でメイドとして、時を進めることになった。
今日、あの氷漬けの町を見て、ナズナは少し過去を思い出した。