五十四話 聖杯はどこに?
「7つの聖杯が満る時、星は生まれ変わる」
魔女の家の奥には、神崎元の幽体である神様がいる。幽体には魂がない。NPCみたいなもので、持っている記憶を提示してくれるが、一緒に考えるとか行動することはない。
彼が言うには星を作るとき、『7つの聖杯が満つるとき、星は生まれ変わる。』との文字をパソコンのモニターの前で見たような気がすると。それが、何を意味するかは、その時わからなかったのでスルーしたが、今の状況を考えると意味があるように思うと。
聖杯がある場所は不明。一つは、魔女の神殿の奥にあるらしい。
何を満たせば、どうなるのかも不明だ。
神崎元が秋葉原で手にした”異世界の種”を作った人に聞くことができればと思うが。それは俺だけど記憶にない。
聖杯を調べれば、何かわかることもあるかも?
「サナエさん。神殿にある聖杯についてご存じないですか? 些細な情報でも良いのですが」
「そうですね。魔女ササさまが、一時調べられていたような気がします」
「ナズナは何かわかる?」
「いえ、ジロウ様。私とは関係ないところの仕組みのようです」
僕はササの部屋を訪ねた。
「ササ様、こんにちは、聖杯について調べたことがあると聞き及んでいますが、お教え願えませんか?」
「そうか、その時期が来たということか」
「仮想世界の創世のプログラムに、そのくだりがあったと神崎元さんから聞いたよ。そして、ここの神殿の奥にも『7つの聖杯が満つるとき、星は生まれ変わる』と書かれているよ。でも、それ以上はわからなかった」
「そうですか。ありがとうございました」
ササ様も、あまり調べなかったようだが、その時がいずれ来ることを予測していたようだ。
僕は、神殿にある聖杯を見に行った。
「これが聖杯なのか?」
大理石のようなに真っ白でピカピカのモノリスが突き刺さっていた。およそ2メータ*1メータで厚さが20センチメータほど。表面は平らで、模様もない。
「うーーん。これは異世界の物か?。聖杯??」
「ここをね。こう撫ぜると文字が浮き出てくるの」ナズナが手を動かす。
ぼくは、ナズナの手の動きのように表面を撫ぜると、おっ。
上部の辺に『7つの聖杯が満つるとき、星は生まれ変わる』と表示されてきた。
そもそも、我々が読めるこの文字は何なんだ?
さらに、じっくり見ると、文字には小さく明暗があり、まさに2進法で何かが表現されているようだ。
僕は、それを写して帰り、解読にすることにした。
見えてきた。
(これを解読したものは、モノリスの4隅を押せ! さすればすべてのモノリスが機能を開始する。 聖杯を満たせ!)と読むことができた。
翌日、再びナズナと一緒にモノリスの前に来た。そして、4隅を押してみた。
と、”ピローン”と言う音がして、モノリスの真ん中にキーボードが現れた。
そして、”パスワードを入れよ”と、ディスプレイとなったモノリスの表面にあらわれた。
そんなの知らないよ。
「ナズナ、知らない?」
「知らない」無碍なく言われた。
しかし、3回しくじったら、次は無い、方式だとまずいことになる。ここは、ゆっくり考えよう。
夕食の時間も迫ってきたので、一旦、居間に戻った。そして、皆に今日の状況を報告した。
ササ様にも報告したが、
「パスワードは知らない。でもよくそこまでたどり着けたね」って。
3日経って、ちょうど学園が夏休みになったので、アミンダ隊の召集をかけた。なぜにアミンダ隊を呼んだのかって。それは、最初にこの情報を持ってきてくれたのと、ある意味この星の代表として扱いたい思惑である。
僕は、この星に必要とされて転移してきたが、我ら魔女たちが全て対応したら、それはそれで、つまらん。
アミンダ隊の思いつきに期待して、早速モノリスの前に立った。
「ほら、これが7つの聖杯の謎解き開始点だよ」
「うわー、綺麗。 なにで出来ているのかな?」ガルが表面を撫ぜた。
「うわー、文字のようなものが浮かんできたわ」
「それでね、パスワードはなに?って聞かれているのだけれも、わからないんだ。君たちで思いついた言葉を言ってみてくれないか?」
次々と、微妙な言葉が飛び交った。
「うん。 相手はこちらのことを知らないだよね。だとするとパスワードそのものに意味がないのでは?」カナンが首をかしげながら呟いた。
「おっと、それには気が付かなかった。そもそもパスワードが必要だと思い込んでいたかも?」
Enterキーを押すと
”ピローン”と言う音とともに、モノリスの表面がモニターに変わった。
キーボードから、知りたいことを聞いてみた。
(7つの聖杯はどこにあるの? )
(0,0 0,90 0,180 0,270 180,0 -180,0 1,0 )
数値のセットが7つ表示された。これだ!。
経度と緯度のセットだと直感した。 1,0 はきっとここのモノリスだ。
(しかし、どのようにして、何を満たせばよいのか? )
モニターに、絵が浮かんできた。
大きな樽があって、右側には女の人が瓶を持って、何かを注いでいる。左側には、人や動物たちが樽の中を覘きこんでいる。
(この樽に魂を満たせ。さすれば星は生まれ変わる。)
あれ! ナズナの様子が変だな。どこがどうと言うことはないが??
「ナズナ。どうした?」
「・・・・。いや! ジロウ様なんでもありません」
「ナズナちゃん。いよいよだね。聞こえた?」
「うん。聞こえたよ」
アウラとナズナが話し込んでいる。
「なにか、分かったことがあるのかな?」
「あ・。ジロウ様。この星があたいたちに語りかけてくるの。もうすぐだ!って」