五十話 魔女隊とは
魔女隊は、初代ハナの娘のアイリスが、ホムンクルスで構成したのが始まりである。
アイリスが、この世界を去った後も、このホムンクルスの魔女隊が活躍している。
5代目魔女のササは魔女隊をアンドロイドで構成し直した。
魔女隊の多くは、通常は必要ないので、魔女の家の地下で眠りについている。
必要な時に、必要な要員を目覚めさせて、任務を担うことになっている。
身長は140センチメータで小柄であるが、力は通常の人の3倍で、容易に傷つかないし、骨折しないし、死なない。自己修復するが、ただ頭部の損傷では機能停止することもある。
個々に自立はしているが、魔女の家の地下にあるセンターを中心に、情報が共有されている。
武器を装備したり、地下倉庫にある機械を操作することもある。
治水工事や幹線道路の敷設など多大な人力が必要になった時には、魔女の要請によって土木工事用の機械を駆使することもある。また、動乱などに対し火力武器をふるうことも準備されている。
サナエに聞いたところでは、現在活動中がおよそ600名で、待機しているのが36000名だそうだ。
ほお。すごい数だね。ササ様は何を考えて、36000も準備したのだろう?。しかし、この前のアルフ王国には12000人を動員した。まあ、何百万人の転移も見越していたということか。
「ジロウ様。待機隊でも足りない場合は、工場を稼働させれば1日100名の追加が可能です」
火力武器は、携帯用のレーザー銃から、町全てを消滅させるものまであるとのこと。空にある『神の御手』は、3000年前に一度使用されたらしい。
さて、治安維持の戦力は、僕の想像をはるかに超えるもので、使用する場面も思いつかない。
(これって、何か力こそ正義的な感じがするけれど?)
一方、開拓やインフラの構築・保全に必要な人員、機材、技術なども確認した。魔女隊は、戦力でもあるが開拓要員としても活躍する。また、建築機材も豊富だ。
魔女の家には離れがあって、そこは初代のハナの娘のアイリスが使用していた工房である。アイリスが国に帰って以降は、薬づくりをやっていると、サナエから聞いた。
今日は、アイリスの孫娘のスミレを連れて、アイリスの工房にやってきた。
アイリスの工房は、魔女の家から北へ500メータほど森の中にあって、4メータ四方の小屋がある。入ると、そこはエレベーターの最上階であった。
居住区と表示されたボタンを押すと、下へ下へと降りて行く。
30秒ぐらいで止まってドアが開き、そこには大きなホールが目の前にあった。
そして、小柄なメイドが5人ほど脇に立って、挨拶をしてきた。
「いらっしゃいませ」
「今、主人もこちらに急いでいますの、ここでお待ち願えますか」先頭のメイドが右手の方のソファに案内した。
「ねえ、おねえちゃん。ここの主人ってアイリスお母様では?」スミレが不思議そうな顔で僕を見る。
「そうだね。だれが出てくるのだろうか?」
出てきたよ。白衣のお姉さんが。
「やあ、いらっしゃい。 お客さんを迎えるのは確か600年ぶりかな。 私はアイリスの写し。 ホムンクルスだよ」
やっぱり。
「僕は、8代目の魔女ジロウです」
「あたしは、アイリスの娘のスミレです。 おかあさん?? そっくりだね」
「う・う・う・ おかあさあーん!」とスミレが涙目で抱き着いた。
まったく。此方にきて2年が経つから、まあ仕方ないか。
アイリス2の案内で、ラボを見て回った。
10階から30階には、3000体のホムンクルスの魔女隊が眠っていた。5代目魔女のササがアンドロイド型の魔女隊を作るまで、活躍していたそうだ。
5階から9階は研究所、2階から4階は薬剤の製造所だった。
製造所には、白のつなぎを着たホムンクルスが忙しく働いており、作られた薬は各国の薬剤所に卸されている。魔女印の薬は、ここで作られている。




