四十八話 各国へパレードを繰り出す
「さて、一段落したことですので、ジロウ様、”星を愛でる会”で約束した、各国へ訪問を計画しましょう」
「そうですね。サナエさん。訪問の形式とかありますか?」
「たのしく、賑やかにやりたいわね」とスミレが身を乗り出してきた。
「ただ、王城訪問だけなんて、さびしいよね。それに僕のことを皆によく知ってほしいよね」
「パレードにしようよ!」
「もう、ジロウ様は、よほどパレードがお好きですね」
「サナエさん、パレードは良いですよ。 ディーランドのパレード、夢のような・・・」スミレがディーランドのパレードの写真を見せる。
「馬車は、これ! これよ! あたし手を振りた――い」
「ゲンゴロウさん、こんなの作れます?」とサナエ。
「うーん。 まあ何とかなるよ」
「あたしにプランニングさせてよ」スミレが、両手を振ってアピールする。
スミレは、ゲンゴロウの仕事場に頻繁に出入りして馬車や備品の製作に注文をしていた。また、パレードの構成や、踊り子、音楽隊などの衣装などを、決めていった。
みんな、訪問の目的を忘れていないか?
と言う訳で、馬車が出来上がり、パレードの準備が整った。踊り子1、馬車、踊り子2、音楽隊の構成で、リハーサルを魔女の家の前で行う。魔女の里から、エキストラと言うか、興味深々の人たちが集まっている。
先頭に「三つ巴の太陽」を描いた魔女の紋章旗が掲げられ、華麗な衣装に扮した踊り子1が、軽いステップで踊りながら歩を進める。そして、かぼちゃを象った馬車が続く。そこには、魔女のジロウとスミレ、アウラが乗っており、手を振る。魔女の衣装は、ピンクのふわふわ感たっぷりのドレスに、白い手袋。 そして、髪はきらめく簪でいっぱい飾られていた。そして、踊り子2が続く。最後は、トラペットや笛、金、鈴、タンバリンなどを鳴らしながら音楽隊が練り歩く。ディーランドのパレードの様子を参考に作ったらしい。
スミレのプランニングは上々だ。
よし、これで準備ができた。各国の都に王城に向かうぞ! 各国に、『**日 **時にそちらに向かう』と魔女名で通達を出した。
まず、最初はスローン王国、青い風の都へ。
都の南門に飛行艇ペガサスを着陸させた。すでに、多くの人が出迎えており、歓声が上がり、空砲が打たれた。
飛空艇の下部が開いて、昇降ステップが下された。音楽隊の行進曲にしたがって、踊り子1が降りてくる。続いて白の基調に金で縁どりされたカボチャ型の馬車がでてきた。その中には、魔女ジロウとスミレとアウラが乗っている。王城に続く、道の両端にはたくさんの人々。
ジロウ様を讃える言葉と歓声。子供たちが、踊り子につられて、乱入してくる。王城の門が近づくと、アウラが歌いだした。透き通った美しい声に、踊り子たちも合わせて、流れるように踊る。
「遠路はるばる、ようこそお越しくださいました。ゆっくり王都をご覧願います」トドア王が挨拶に出てきた。
しばらく、スローン王国の要人たち懇親の場を賑わせた。
そして、僕らは、城門の上にあるバルコニーに立った。そして、下に集まった王国民にメッセージを伝える。
「みなのもの、静まれ! 魔女様からお言葉を賜る。 静かに! 待て!」宰相が大声で放った。
続いて、僕が前に出た。
(ちょっとお願い。私ハナだけど代わってくれない?)
と頭の中に直接声がした。
(えっ。ハナ様? 初代魔女のハナ様?)
(そうなの。こんな良い機会めったにないので、子供たちに一言いいたいなあって!)
(良いですよ)
「私はハナ。初代魔女のハナです。わが子たちよ。今日集まりしわが子たちが、健やかに過ごしているところを、私は見て大変うれしく思います。これからも精進するよう、お願いします」
しばらく、ハナ様は群衆を見つめて、涙ぐんでいた。
僕に変わって、
「替わって、僕はジロウじゃ。1年以内に大いなる試練が、この星にやってくるのじゃ。 試練を乗り越えた先には、この星が未来へ続く約束が得られる。 また、子供もたくさん生まれるのじゃ。 喜ばしいことじゃ」
「おおお・・・ 」、群衆は、ジロウの言葉には応えた。
引き続き、王城において王とその家族で接待され、ことは無事すんだ。めでたし、めでたし。
その後、ミズホ王国の白金の都、ガルバ王国の黄桜の都、獣人族のモッフーの都、エルフ族の風鈴の都、ドララ王国の火炎の都、ドワーフ王国の金槌の都、最後はサハラ王国のアクアの都へと出向いて行った。これで、魔女ジロウの名を広めることができ、大切な目的である、『魂をまとめる』ための布石ができた。
ここは、魔女の家の居間。僕、サナエとメイド、スミレ、イリカ、アウラ、ジン、ナズナ、カエデの13人がテーブルを囲んでいる。各国への訪問の報告会である。
「まったく、初代魔女のハナ様にお声をかけられたのにはびっくりしたよ!」
「それで、ハナ様は、どのようなお言葉を?」
「まあ、皆に会えてうれしいと表明されただけで、涙を流されていましたよ。」
(涙?僕が流したことになっている?)
「パレードは、おおむね好評だったわ」スミレが少し遠慮気味に報告した。なぜに?
「うーーん。ちょっと軽すぎたかなとの反省」
「子供たちは大喜びだったわね。良い子でした」アウラがスミレの頭を撫ぜる。
「そうそう、それが一番よ!」スミレの表情が明るくなった。