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四十七話 オメガ星系のシステム保安要員 ケリーの回顧

 確か、前世は仮想システムのシステム保安員で、その世界の拡張や調整を行うのが仕事だった。

 この世界では、3種類の生き方がある。一つは大地の上で肉体を持って衣食住を楽しむ。2つ目は肉体を保管設備に預けて仮想世界にダイブする人。3つ目は肉体を放棄して全く仮想世界に存在している人。


 大地人と呼ばれる人は、各地に拠点を持って生活している。そう、この魔女の星のように。

ただし、文明レベルは3から7までが点在しており、互いの干渉はしない建前で成り立っている。

たまに、文明間で争いが発生するが、誰も調整する人はいない。


 2つ目の人たちは、大地と仮想世界を行ったり来たりしている。

設備は各所にあって、自由に利用できる。

設備に預けられる肉体には寿命の限界がある。ほとんど仮想世界に居たとしたら1000年であるが、大地側で生活したら200年の寿命となる。


 3つ目の人たちは、すでに人ではない。永久に仮想世界に存在するが、本当の意味で生きてはいないと俺は思う。俺たちシステム保安員は、仮想世界のひとつひとつをメンテナンスしている。

 仮想世界に存在するものを偽魂と呼ぶ。 その数は1兆6000億に達する。

 永久に存在することも可能なため、増える一方なのである。

仮想世界を支える、システムは宇宙空間に網目のように広がっており、一部が欠けても完全に保全される。


 俺の星では、文明のレベルを以下のように表しているそうだ。

レベル1;火を使う。神を意識する。

レベル2;言葉を話す。歌が歌われる。

レベル3;銅、鉄が精製、利用される。文字ができる。

レベル4;火薬が発明され、戦争は剣から銃に変わる。詩や文学が芽生える。

レベル5;蒸気や電気エネルギーが利用される。印刷が産まれ情報が拡散する。

レベル6;コンピュータ技術が普及する。AIが開発される。

レベル7;ロボットやアンドロイドが産まれ普及する。仮想世界ができる。

レベル8;???


 仮想世界のシステム要員は仮想世界から選出され、寿命は約200年。

俺は、200年を待たずして180歳でリタイヤした。

 仮想世界に戻る選択肢もあったが、緑に囲まれた大地の一角に我が家をもらい、小さい庭で野菜を育てている。


 今日も、草取りをしていると、誰かが訪ねてきたようだ。

「こんにちは」と、その女の子はにっこと微笑んだ。

「パラレルワールド管理局のゲート管理係のピアです」

きっちっとスーツを着込んだ10歳ぐらいの少女が立っていた。


「実は、この星系の仮想世界がエネルギー不足で、コールドスリープの準備を始めているそうなのです。あなたもご存じのように、太陽もあと200年で吸い尽くされます。その前に、この大地が冷えてきて住めなくなります」とピア。

「そうなのか・・。で、私にどうしろと」


「仮想世界に戻るか、新しい星に移住するか選べます。同じように保安要員後、大地で過ごされている500余名の方にお話をしております」

「急ぎませんので、10日後にお返事をいただけますか?」


「いや。移住する」とケリーは即答した。


 あの世界には戻りたくない。あれは嘘だ。でも、この大地と差が思いつかない。

 システムが見せているにすぎないが、見ることで対象が認知されるならば、変わりがないといえる。


 あの世界には、なんでもある。働きたい人には仕事がある。そうでない人は一生遊んで暮らせる。

多くの人は、互いに見つめあうことで、認識し合って存在している。


 ゲームの中に没頭する人も、ゲームの中のNPCやプレーヤー、エネミーなどとの関わりで存在感を得ている。病気もある。死も、出産も、畜産も、農業も。無いのは、魂だけだ。

魂。それはなんだろうか? おれはそれを死ぬまでに感じたかった。


 おれは、この魔女の星にきてから家庭菜園をやりながら、毎日を過ごしている。

「こんにちは。 ケリーさんだよね?」

「はい。ケリーです。ジロウ様は、いつも、お元気で」


見た目は10歳ぐらいの女の子。この星の最高責任者だそうだ。

魔女の称号があって、魔法が使えるらしい。


 いつも、黄色いオーバオールにピンクのブラウスと赤いズック、幅広の茶色の魔女用帽子をかぶっている。

そして、銀髪に赤い瞳。 魔女の関係者は全て、赤い瞳だそうだ。

ジロウの横には黒い猫。青い服の男の子とピンクの服の女の子がいる。

「この子たちは?」

「ああ、僕の警護じゃよ。この猫もそうじゃ」


 ところで、今日訪ねてきた理由は、魂をもった感想を聞かせてほしいとのこと。


「保安員を退職して、大地に降りてから方々を旅した。家庭菜園もやってみた。でも、もう少し何かが足りないような感じがしていたよ。ここにきて、魂をもらってから、世界観が大きく変わったんだ。愛しさとか憎しみとか、こう胸あたりがきゅっとすることが多くなった。うれしいと思うようになったよ。ほんとうにありがとう」

晴れやかな笑みを浮かべてケリーが言った。


「それに、夢?を見るようになったよ。仮想世界の人は夢を見ません。それはそれは、楽しい夢なんだ」と言って、さらに破願した。

「そうか。喜んでもらって、僕もうれしいのじゃ」


その時女性が前方からきて挨拶をした。

「あ・。ジロウ様ですか? 私はポピーと申します」と。


 このカカチ村の隣の村、アナチ村に来た保安員は、男性120人、女性90人の210人。

レベル6,7の人が300人の合わせて500人が暮らしている。

それと、魔女隊から20人が加わり、いろいろ生活の支援をしている。


 まあ、この魔女の星も神崎元が秋葉原で得た『異世界の種』を芽生えさせてつくったのだから、仮想世界と言えなくはないが。

これは言ってはならない。

じゃ、現実の世界って、どこにあるの?

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