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四十三話 世直し行脚 その4

「やたら、僕の服装を真似た子が多いね」

「巷では、魔女ルックが流行りだそうです」

「よかったね。 お姉ちゃん!」


ここは、ガルバ王国のフロンティアの町。初代魔王サクヤが子供時代に過ごした町。


 僕の今日の服装は、ひざ丈の水色のジャンバースカートに白のブラウス。ブラウスの袖にはふくらみとレースが縁取りされている。胸元には赤いバラのブローチ。靴は白のズック。頭には幅広の茶色の魔女用帽子。


あちこち、同じような服装で、子供たちが歩いているので、僕は埋もれている。目立たない。


「お姉ちゃん、あそこのケーキ屋に入ろう?」言いながらスミレがケーキ屋のドアを開けた。

「いらっしゃいませー!」元気でかわいい声だ。


「いらっしゃいませー、ご注文をお伺いし・・」なぜか、ウェイトレスが固まった。

「失礼しました。ご注文をお伺いします」起動した。


「このパフェと、このケーキと、このアイスと・・・うーーん」

おい、スミレ、そんなに食べられるのか? ナズナもメニューをじっと見つめている。


ウェイトレスが注文の品を次から次へと持ってきた。そして、あらかた食べ終わったころを見計らって、

「あのー。大変失礼と承知で、お願いがあるのですが。こちら様と少しお話をしたいのですが」

真剣な顔で、ナズナを見つめた。


「ナズナ、行っといで」

ナズナとウェイトレスが、奥へと消えた。


「なんなんでしょうね?」口の端にクリームを付けたスミレが呟いた。


ナズナが席に戻ってきた。

「さて、ナズナ どうしたのかな?」


「実は、あの人、カエデさんと呼ぶのですが、私と同類のようなのです。森で拾われ育てられたそうです。それに、私のことを『おかあさん』と呼ぶのです」

「まあ、ナズナを慕ってくれることは良いことだよ。関係は保つように」


「あ・。来ましたよ! 今回の願い事した人」


「こんにちは。魔女様でいらっしゃいますか?」

「そうじゃ。まあ、こちらに来てすわれ」


「失礼します。私この町で居酒屋をやっております、マリヤと申します」

彼女の言うには、最近プチダンジョンに入るための花が少ないそうだ。


「ナズナ、本部に問い合わせしてみて?」僕はサナエさんに尋ねるように言った。


 お茶と飲み物を追加して、回答が来るまでの間、マリアにいろいろ聞いてみた。

 マリアは託児所を兼ねており、仕事帰りに一杯やって、子供を連れ帰る人を対象に営んでいるとのこと。

預かった子供たちをプチダンジョンに連れてゆくのだが、プチダンジョンの入り口の花が簡単に見つからないくなった。そう、最近は10日にひとつがやっとで、子供たちが可愛そうだと。


「ジロウ様、サナエさんからの返答がありました」


 花は、システムで制御されている。センターから調べた限りでは、異常がない。したがって、調査隊を向かわせるとのこと。10分後には現地に着くようだ。


「さて、それでは我々も行こうか!」

プチダンジョンの入り口は、神殿にある。神殿に駆け付けると、既に調査隊が来ていた。


「マリアさんも、一緒に入るかえ?」

「えっ。入っても良いんですか?」


「まあ、僕がいるからね。まあ、内緒じゃが」

調査隊の後から、プチダンジョンに入っていった。


「うわー!、懐かしいー」マリアは昔のことを思い出したのだろう。

この世界の人は、ほとんど子供時代に、プチダンジョンでの経験がある。プチダンジョンは、飢えた子供を無くすこと、勉強を教えること、楽しむ心を育てること、互いに思いやる心を育てることなど、こどもを支援する公園だ。


調査の結果、部品の劣化ということで、交換して復旧した。あくる朝、朝食を済ませて、のんびりとしていると、マリアがやってきた。


「ありがとうございました。無事プチダンジョンに入ることができました」

「これは、ほんのお礼です」と言って、お酒をくれた。子供の僕に?。


これにて、一件落着。


 そうだ、カエデさんのことを忘れていたので、もう一度、ケーキ屋によってみた。

カエデさんは忙しく働いていたが、ナズナを見ると嬉しそうに近づいてきた。


「すみません。魔女様。私も一緒にご同行させてもらえませんか?」

よく見ると、確かに雰囲気がナズナに似ている。


「ここの店主には、大変お世話になっており、事情をお話して、承諾は得られております。ただ、私の気持ちとして、一か月ほど整理の時間をいただきたく思います。その後でということになりますが、よろしくお願いします」


おいおい、もうその気になってるよ。

「ナズナが良ければ、良いよ」

と言うことで、カエデさんが加わることになった。


 こんな調子で、世直し行脚を続けて、数十件の願いを叶えてきた。その結果、今代の魔女ジロウの名声が津々浦々まで、広まることになった。そして、町の人々の口には、

1、魔女様は、最高。

2、魔女様は、可愛い。

3、魔女様は、優しい。

4、でも怒らせると怖い。

などなど。でも、ちょっとこそばゆい。

まあ、行脚の結果が生んだことではあるが、魔女の所業を知ってもらったことは幸いである。


「サナエさん。大分、僕の存在が広まったね。これから起こることを魔女側だけで対応する構図は避けられそうだ」


「確かに、ジロウ様は積極的に動かれてますね。うれしいです」


「「ジロウ様。応援しています」」メイドたちの応援も頼もしい。

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