三十九話 世直し行脚 その2
さて、次のクエストにかかろう。
『作物の出来をよくしてほしい』
ずいぶん、欲ぶかい願いだな。ふむふむ。ミズホ王国のタマヤ村か。願い者はゴサク 145歳。老人だな。30年前に原野を開拓して、細々と麦や豆を作ってきたのだが、5年前から作物が育たなくなった。もう、村を捨てるしかないとのこと。
早速、調査に行こう。
クルーザ2を駆って、ミズホ王国の白金の都にやってきた。都の門には、魔女の家別邸の執事セバンが待っていた。豪華な馬車に乗って、別邸についた。
「お帰りなさいませ」メイドたちが迎えてくれた。
「ほんと、無駄に大きな屋敷ね。日本の我が家は犬小屋なのに」スミレが呆れる。
スミレたちと一緒に大きな風呂に入って、ふろ上がりのジュースを飲んで、ベッドに入った。今夜も川の字。僕、イリカ、ミミ、スミレ。・・・・なんだかなあ。
日が変わって、朝食を済ませ、身支度を整えた。クルーザ2で、タマヤ村に向かった。まず、村長の家を訪ねた。
「たのもう!」
「これはこれは、どちらさまでしょうか?」爺さんが出てきた。
「魔女のジロウじゃ。 ゴサクとやらを連れてまいれ。ちと聞きたいことがある」
「これはまたいたずらが過ぎるぞ、こわっぱ!」爺さんが唸る。
「いや、ご老人。誠に今代魔女のジロウ様だ。頭が高いぞ」
ジンが、魔女の紋を見せた。
「はあー。申し訳ありません。」土下座をした。
「いやいや、旅の途中での気晴らしじゃ。お主は村長かえ?」
「恐れ入ります。村長のイエモンでございます」
ちょっと、いたずらっぽく登場したのだ。
やがて、ゴサクが来て、実情を聞き、畑に足を運んだ。
原因は、5年前に新設した貯水池にどこからか塩分が流れ込んでいたことによる塩害である。この流れ込みを特定するには、池を空にして、流れ込む水を調べること。畑の除塩に石灰を多めに撒く。一挙には改善できないが5年ぐらいはかかるだろうことを、村長に説明した。
「ありがとうございました」村長とゴサクが、深々と頭を下げた。
「よいよい。一応支援員としてモモコのターニアを、村長宅に預けるのじゃ。うまく使いこなせ」
そうそう。魔女隊は巷では、男の子をアオシ、女の子をモモコと呼んでいるそうな。我々も、巷に倣って、外向けにはアオシ、モモコの名前を使うことにしている。
魔女隊のアオシ、モモコには、全て名前を付けてある。顔の特徴も加えて個人差を出している。さらに名札もつけている。もちろん僕は、働いているアオシ、モモコ全ての顔と名前は区別できる。
アンドロイドの魔女隊といえども、実は個性があった。それを一括りで表すのは忍びなかったので、個々に区別できるようにしたのだ。