三十六話 イリカ活躍
魔女の家の食卓も、僕、ナズナ、スミレ、アウラ、イリカとサナエの6人が囲むようになった。賑やかになった。うれしい。
「イリカ、ピーマンも食べなさい。」ピーマンを横によけているイリカを見てサナエが一刺しする。
「もうだめですよ。ちゃんと食べなくちゃ。」すみれがお姉さんぶっている。
「う・・・」しぶしぶ、ピーマンを口に入れるイリカの目に涙。
「おーい。イリカ、少しでいいぞ!」
「「「もう、ジロウ様は、イリカに甘い!!」」」
イリカは、まだ5歳。親元を離れて暮らしているので、寂しいだろう。
僕が甘やかさずして、だれが甘やかす。
俺のベッドを少し、広くした。僕、イリカ、ミミ、スミレの4人が寝ている。
イリカの寝相は悪いので、僕の横になっている。時々ミミが下敷きになっている。
「早速だが、イリカ、僕と一緒に仕事をしてほしい」
ここは、エリー山脈を越えて、ガルバ王国のさらに北にある、キボウ開拓村にやってきた。
東が海に面した、東西500キロメータ、南北200キロメータの地域が開拓地域であるが、これまでに500平方キロメータの開拓が済んでいる。
キボウ開拓村には、およそ1200人の罪人が働いている。元の町に戻ることもあるかとの配慮から、一応給金はある。生きて働くに必要なものは支給されるのだが、たまに商人がやってくるので、小物を手に入れたりしているようだ。
これからも、ゲートからの魂の受け入れは発生する。時に万単位で転移してくるので、その定住先を用意しなくてはならない。もっとも、オメガ星系からのツチカタ族110万人と、タケヤ族10万人を、この地に受け入れる予定である。
そんな、開拓村の西の端にやってきた。
クルーザ2を村長の庭に着陸させると、いそいそと村長のスクエアがでてきた。
「ジロウ様、お忙しいところをありがとうございます」
ガルバ王国の第2王子のスクエアも、すっかりおとなしくなって、長としての風格というか、頼もしくなった。
「さて、依頼のあった開墾ができる者を連れてきたのじゃ。その前にお菓子とジュースをこの子に与えてくれ」
スクエアの後について、村長宅に入ると、アオシのイサオとモモコのサクラが揃って挨拶した。
「あたし、イリカ、よろしく。」ぺこっと頭を下げた。
イリカはテーブルの上に出された、クッキーを両手に取って、リスのようにほおばり、ジュースを飲んでいる。
一息ついたので、開拓地へ向かった。
「イリカ、ここから、あの木まで耕してくれ。」
「了解。『たがやせたがやせよっこらしょっ!』」
手前から、もくもくと、幅100メータ、木まで300メータが耕された。
10回ほど耕すと、
「もうーだめー」イリカが座り込んだ。
「はい。よくできたね。 お昼にしようか」
モモコのハナエと村人が、昼食の用意をしている。
二時間ほど休んで、魔力が回復したようなので、さらに10回耕した。
「さて、次は僕がやろうか。『たがやせたがやせよっこらしょっ!』 」
「うわーすごーい」スミレがびっくりして叫んだ。
が、イリカの半分ほど。
「やっぱ、あたしだね。おねえちゃん!」イリカに言われた。
「よしよし、イリカは可愛いな」僕はイリカの頭を撫ぜた。白い尻尾が嬉しさを表している。
今日一日で、10平方キロメータだな。人だと半年はかかるので、良しとするか。でも5日が限界だな。
村長がやってきた。
「ジロウ様、ありがとうございます。もうひとつお願いします」
「水路の引き込みだったかな。それは、明日、魔女隊を向かわすので、待つのじゃ」
「ありがとうございます」
「あのー。もう一度、ギュッとしていただけませんか?」スクエアが顔を赤くして、小さな声で呟いた。
「よく、頑張っておるのう。よしよし」
ここは、魔女の家の居間
「さて、今日はイリカに開拓村の農地拡大で働いてもらった。イリカ、ご苦労さん」
イリカの魔法力は、巷の魔法使いと言われる人たちの20倍ほどある。それと、全属性が使用できる万能型だ。そして、褒めると、できる子なんだ。
席についているのは、いつもの子供たち。もっとも年上がアウラの15歳。
僕は13歳、スミレが11歳、イリカが5歳。ナズナは13歳。
なぜか女子ばかり。それは魔女の家なので当たり前かな。
しかし、僕の体形は10歳のままにしている。胸が大きくなるはずと思われては困る。
特にガルは僕が男であることを明かしてやろうと、虎視眈々と狙っている。