三十四話 代表団のその後
「サムエ様、ここの文明度は我々より高そうですね。この飛行船も動力が分かりません」
「それに、あの魔女。何なんでしょうね。この星は?勇者とか魔王とかが、いるのでしょうか?」
「ゲームのしすぎだよ!」
まあ、良い。どうせ核爆弾の一つぐらい持ってくれば、いちころさ。それに武器は沢山あるさ。いずれひれ伏せさせてやるさ。あの生意気な魔女め!
「あ・サムエ様。あのサナエという人が、”武器の類は一切持ち込めない”って言ってましたよ」
「まあ、魚心に水心だよ。我国の上層部が的確に対応するさ」
パラレルワールド管理局と言えども、ダークサイドの心はあるはず。
「えーっ。ここが移住先なのか!」
私、サムエはびっくりした。何もない。耕作地も町も道も何もない。あるのは小さな家が3つ。
我々代表団11人は、とりあえず小屋のような家に入った。硬そうな木のベッドとテーブルとイス。水洗トイレではなく、ぼっとん便所。小さなキッチン?。蛇口はない?。
これはもう、貧しいキャンプ地そのものだ。
10日、20日と時が過ぎてゆく。精神的にまいってきた。
1か月ほど過ぎたところで、魔女隊から支援終了の通達が来た。食料は3か月分置いてゆくので、後は自給自足で頑張ってね!って。
しかし、6か月後に移住の本体が見たものは、残念な結果であった。
モモコの報告では、彼らはごろごろするばかりで、周りの調査もせず、二言目には酒を持って来いと怒鳴っていたそうだ。そして、3か月分の食料も1か月も持たず、食い散らかしたようだ。
代表者カンダは、キボウ村に到着した。
村長のスクエアさんは子供に見えたが、しっかりしていた。我々に村の一角にある家を貸してくれて、ここを拠点に本体の受け入れの準備をするように言われた。
この村は、犯罪者の隔離施設で、315人と魔女隊が100人居た。我々のような移住者のために開拓を進めているとのこと。ありがたいことだ。スクエアさんのおっしゃることには、この周辺の東西200キロメータ、南北50キロメータが移住地域だと。広い!。多くが草原や森だが、120万人には十分な広さだ。それにしても、あの小柄な魔女隊って何なのだろう。我々が持てないような重い資材を軽々と持ち運びするし、牛より大きな鉄の塊を動かして、土を耕してゆく。
この広くて、穏やかな世界に移住できることは本当に良い。助かった。
レベル6,7のアナチさんと保安員のリリーさんらは、カカチ村に身を寄せた。
「ジロウ様。ひとつお伺いしたいことがあるのですが。ひょっとしてここは仮想世界なのですか?」
アナチさんが聞いてきた。
「そうではない。ちゃんと宇宙に固定されているのじゃ。パラレルワールド管理局も認知しておる」
「そうですか。ならば安心ですね」