二十九話 パラレルワールド管理局から140万人の転移を要請してきた。
オメガ星系の仮想世界がコールドスリープに入った。
現実世界に住んでいた大地人は、冷える一方の星にしがみ付いている。すでに500万に近くいた人々も、凍死や飢餓などで140万に減った。
緊急案件として、パラレルワールド管理局から、魔女の星に移転させてほしいと依頼が来た。
「こんにちは」
と、魔女の家に黒いスーツ姿の男の子と女の子が訪ねてきた。
サナエは、訪問者を見て、身体がこわばった。
これはやばい。またまた大ごとにならなければよいが。
二人を居間のテーブルに席を進め、メイドたちからお茶とお菓子を出した。
「今、ジロウさんを呼んできますので、しばらくお待ち願います」とサナエ。
そして、庭を散歩していた僕がよびもどされた。
「先日、お伺いした、パラレルワールド管理局のケリーです」
「同じく、同局のゲート管理係のピアです」
「今日は、どのような御用で?」僕は尋ねた。
今回の案件は、冷えてゆく星系からの救済とのこと。
オメガ星系は文明レベル7で、仮想世界が実用化され、多くの人が仮想世界へ移って行った。そして、その中で子孫が作られ、爆発的に増えた。そのためシステムも膨大になり、やがてオメガ星系のエネルギーを使い果たす結果になった。そして、エネルギーの枯渇からシステムが継続稼働できなくなり、コールドスリープに入った。二度と復活の日が来ないかもしれないのに。
しかし、一方、大地に生きていた人々は次第に冷えてゆく自然に、抗うことが出きずに滅亡の途を辿っていた。
パラレルワールド管理局が動いた。あの星に役立つから。
「急な、ご相談を持ちかけて申し訳ありません。」低姿勢でケリーが頭を下げた。
「文明レベルは、3から7の人たちになります。レベル3の人が110万人、4の人が10万人、5の人が20万人、6と7の人が100人になります」ピアが端末を操作しながら言った。
「というわけで、移住の許可をお願いしたいのですが?」
「そうですね。準備もあるので少し時間をいただけますか?」
「了解しました。これが資料です。レベル3、4,5,6,7のそれぞれに代表者が居ます。できれば、彼らの要望も聞いてやってほしいですね。すみません。無理を言います」ピアが頭を下げる。
「それと、システム保安要員も200名ほどが移住を希望しています。ただ、彼らには魂がありません」
ひとまずパラレルワールド管理局は帰った。
10日後に、再訪するそうだ。
いやー、大人数だね。
大変だ。
「さて、夕食食べて、風呂に入って、寝よう。寝れば考えがまとまるかな??」
この星の現在の人口は、およそ800万人。まあ、今回の件で、システム要員に200人分を使うことは問題ない。140万人の受け入れは、ちょっときついなあ。
レベル5,6,7の人々は、きっとこの星のレベルを受け入れ難いと思う。したがって、西にある魔女の保護区のさらに西の地に隔離しよう。
レベル3,4は、この星とよく似たレベルなので、ガルバ王国の北方、開拓中のキボウ村を割当てよう。
システム保安要員が200人か。200人が少ないのかどうかわからないが。仮想世界より実世界を選択したのならば、俺と同じような考えなんだろうか。人は大地を離れては生きてゆけない。
翌日、僕は白板に受け入れ案を提示した。
1、ガルバ王国の北のキボウ開拓村を新しく王国に昇格して、レベル3,4の120万の人たちを受け入れる。
・3か月後の受け入れを目指して、整地して街づくりを行う。
・魔女隊を派遣する。1万人規模になりそうだ。
・主要な機関と王は、既に村長をガルバ王国第2王子スクエアを教育しているので、問題ない。
基本的に、この星のレベルと大差ないので、王国としてまとめれば問題ないと考える。
2、レベル5,6、7の20万人は、魔女の保護区のさらに西の地に受け入れる。
・6か月後の受け入れを目指して、20万人が住めるように、整地し町を作る。
・レベル3の生活様式になるように指導する。
・当面、他の国との交流ができないよう隔離する。
問題が発生しそうだ。レベルの低さに不満が出る可能性が高い。また扇動する輩も少なからず発生するだろう。しっかり、コントロールして、文明レベルを下げて行く必要がある。
3、システム保安要員は、カカチ村の東に村を作って、そこに受け入れる。そして、魔女の神殿で、魂を授ける。
「サナエさん。これでどうかな? かなりの人手が必要だけど用意できるかな?」
「わかりました。詳細を詰めて後日摺合せを行いましょう」