表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/61

二十五話 研究会のあれこれ

「おお・・。なかなかの眺めじゃ」


 ここは、アズミ山の頂上。眼下にガルバ王国が一望に見渡せる。

レベル3の世界観だと、これは重要な要所だよ。敵や味方の配置が手に取るように見えるだろうに。

 だが、この魔女の星では、戦争が無いので、そのようなものは不要だ。愛好会のメンバーを見ると、男の子4人と、女の子3人であった。

一方、僕たちは、ナズナと警護班が5人の7人。


「ジロウ様、お昼にしましょう」


 かちゃかちゃと、食器を並べる音や、スープのいい匂いが立ち込めてきた。やはり、山ごはんは最高だ。大した食べ物ではないが、自然が味を引きだたせてくれる。

 肉がたっぷり入ったスープとパンが主。それと、食後のティーとクッキーがうまい。これで、ビールがあれば最高なんだけど。この場には未成年しかいないから ダメ!。


 ここは、登山愛好会の部屋。


 汗臭い匂いがしない。登山靴のあの悶絶する臭さがない。と言うより登山靴が無い。壁には地図と杖がかけてあった。棚には、クッキング用の鍋や、小物が置いてある。ザイルのようなロープもかけてある。まあ、普通の集合場所と備品置場だな。


「まず、装備じゃな。靴はもっとも重要なのじゃ。でこぼこしていたり、岩でゴツゴツしていたりする山道を安全に歩くために、どんなものが良いのか、少し考えてみよう」


「日頃はいている靴だと、瓦礫や岩の尖がりで足の裏が痛いのよね」

「くるぶしが”ぐねっ”って、ねん挫したことがあるわ。踝まで守ってくれる深いものが良いかも」


といろいろ、経験に基づく意見や改良点が出てきた。


「10日後、まとめておくのじゃ。そして、靴屋にゆこうぞ」


 10日後、靴屋にぞろぞろと出かけた。


「たのもう!」


僕は、靴屋の前で大声で呼ばわった。


「だれじゃ? 大声をせんでも聞こえとるわい」老婆が出てきた。

「おお・・。魔女様ではないかえ? どうぞどうぞ。むさくるしい店じゃが」老婆が奥へと案内した。


「この前、御作りした山登り用の靴は如何でしたか?」

お茶を出しながら、大男が僕に聞いてきた。


「良い出来栄えじゃった。やはり履きこまないと、少しソールが固いかな?」

僕は、持参の靴のソールを曲げて見せた。


「それでじゃ、今日は学園の登山愛好会のメンバーを連れてきたのじゃ」

「登山愛好会のリーダを務めているユーイです。よろしくお願いします」

「彼らなりのこだわりをまとめてきてもらったのじゃ。聞いてやってほしい」


登山愛好会のメンバーが次々と挨拶して、本題の靴の説明に入った。  


 大男は、ここの店主であり靴職人のタツオである。見た目とは異なり、細やかなセンスを持っているし、人当たりも良い。


 出来上がりは、1か月後になった。履き初めはアズミ山にしよう。ザックとか、調理器具、テント、雨具など追々ヒントを与えて、良いものを揃えさそう。


 それから、各王国にも山登りを広めたい。しかし、馬車での移動では・・・・。まあ、それはそれで、遠い山への憧れが募るのでよいかもしれない。


 ここは、魔女の家の居間。僕は肘をついてサナエに聞いた。


「サナエさん、うーん、魔法を蓄えて、順次発生させることは、できる?」

「さあ? 聞いたことないですね。魔法に詳しい4代目のサヤカ様にお尋ねしてはどうですか?」


早速、4代目魔女サヤカさまの部屋に向かう。

「サヤカ様いらっしゃいますか?」


僕は、狐の絵が懸けてある、サヤカ様のドアをノックした。

「どうぞ。 入って良いよ」


「魔法学園の生徒が古い文献で『魔法を蓄えて、順次発生させる』というものを発見したそうなんです。心当たりはありませんか?」


「ほう。そのようなものを研究していたものが居ったと。確かに、私も考えたことがある。しかし、それはこの星の文明を押し上げることになるので、禁止事項になったぞ」


「確かに。魔動機関なるものが作られて、一挙に産業革命への進展するかもしれないね」


「ジロウも、そう思うか。その研究者は私の時代より前に居たようだが、きっと当時の魔女か管理人が中止させたのだと思う」


「でも、若者の着眼点を無駄にしたくないのですが、なにか良い手はないでしょうか?」

「いや、私に聞かんでくれ。幽体の私は、思考する機能を持ち合わせていない」

「失礼しました」


 魔動機関か? 魔素や魔力が、馬車以上の仕事をさせられるほど多いとは思えない。周囲の魔素は多くないので、貯めて使うということになる。どうやって貯める?。


 魔女は、魔素と魔力が豊富に保持できるが、一般には、コップ一杯の水、着火の炎、そよ風の発生程度。そんなエネルギーレベルでモータのようなものはできない。

 科学を使えばよいのだが、それはこの星では禁止事項だ。支援するにしても、ちょっと、これは難しいな。様子見にしておこう。


 さて、料理研はどうしたかな?


 柔らかなパンに、肉とトマト、野菜を乗せて、ソースをかける。それを挟むと、ハンバーガーができる。ガルバ王国の魔女の別邸でアヤセに作ってもらった。これを料理研に見せた。食べさせた。


「なんと。両手で!、いや片手で! かぶりつく。なんとワイルドな食べものなんですか!」


料理研のカオルがハンバーガを手に叫んだ。


「うむ。これは参考じゃ。そなたらで、皆の口に合うものを工夫してほしいのじゃ」


「ジロウ様。これ以上のものを作れとおっしゃるのですか! 鬼ですか!」

カオルがジト目で迫ってきた。

「これは、なんと言う食べ物なんですか?」

「これは、ハンバーガーという食べ物じゃ。手軽でおいしかろう」


メンバーの5人が、20個用意したものを、全て食べてしまった。おいおい、食い気だけで、研究はどうしたのだ?

 と、ひとり黙々とメモを取っている、色白のおとなしそうな男の子が居た。まあ、ひとまず安心じゃ。


 それにしても、女4人が”げっぷ”とは、はしたない。ナズナまで、”げっぷ”とは。


 「それでじゃ。これをメインにしてショップを開こうではないか。どうじゃ?」


 1年後、学園の向かい側に、ハンバーガーショップができた。商人たちの人づてや、料理人の移住によって、他の王国にも広がっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ