二十三話 ガルバ王国第2王子スクエアの試練
スクエアは、ガルバ王国第2王子。下々のものは、なんでも言うことを聞くし、偉いのだと思っていた。しかし、あの向こうに住んでいる魔女こそが、この星の全てを握っていることがわかった。俺の父であるガルバ王さえ王座を譲るほどに。
あの小さな女の子が。あの同好会発足の場で、おれは魔女隊に拉致され、魔女の家の近くの小さな家に連れてこられた。そこにはサハラ王国の第5王子のジンがいた。
「ジン、こ奴を鍛えてくれ。」
「御意」
両脇を魔女隊に固められて、俺はジンの前に跪かされた。
それから、毎朝ランニングを1時間、腕立て伏せ50回、スクワット100回、素振り300回から始まって、毎日いろいろな運動をやらされた。ジンがいつも一緒で、平然とこなしてゆく。
「まあ、12歳ならばこの辺で勘弁してやろう」
汗だくで座り込んだ俺を見て、ジンはさらに運動を重ねていく。午後は王道学。食事は、ジンの指導で少しずつ覚えて行った。料理人もいなければメイドもいない。俺の今までの理解者?は誰もいない。辛い。この前も、食料を提供してくれる、魔女の村のマリアに生意気を言ったらしく、幾日も食料が途絶えた。
ジンは何も言わないが、おれは反省したのだ。ひとりマリアのところへ行って謝った。
小屋の前で、涙ながらに座っていると、ジロウがやってきた。
「どうだい。慣れたかえ? 身体付も逞しくなったね」
慌てて、涙をぬぐったが見られたかな。
「今日は、そなたと一戦交えようと思ってな。どうじゃ?」
おれは、完膚なきまでにボコられた。しかし、彼女は手を差し伸べて、おれを助け上げて、汚れた顔を拭ってくれた。優しいなあ。その日から俺はジロウ様が好きになった。
おれは、頭もよくないし、人望もない。第2王子だから王には就けない。何かできるわけでもなく、ただ周りに虚勢を張ってただけであった。そのことが今は恥ずかしい。
それから、再三、魔女の家に出かけては、ジロウ様を呼び出して一戦を所望した。
「そなた、ずいぶんと顔がよくなったのじゃ。ちと頼まれてくれんかのう」
「何なりと。仰せのままに」
「ガルバ王国の北に、キボウ村と言う開拓村があるのじゃ。そこの村長をやってくれんかのう」
「えっ。村長ですか?」
「一人、放り出すようでは、僕も心が痛む。それでじゃ、ここにおる魔女隊をそなたに預ける。イサオは警備、サブロウは財務、カズオは政務、サクラは農業生産系、ミズキは文化、ハナエはそなたのメイドじゃ。名札を付けているのと若干個性があるので、区別はできると思うのじゃ」
「イサオ、サブロウ、カズオ、サクラ、ミズキ、ハナエ、ちゃんとサポートするのじゃえ」
「承知しました。おかあさん」 (ジロウは魔女隊のお母さんだ。)
「スクエアよ、その他に望むものはないか? まあ、追々で良いから、必要とあらばその都度、申せ」
何という急展開。開拓村の村長。王国とは格が下過ぎるので気が進まないが、新しく国を興すつもりで取り組むと面白そうだ。
ジロウ様が用意した、クルーザ2に物資を運び込んだ。ジロウ様、ナズナ様、そして部下となる魔女隊の6人が乗船し、一路開拓村に向かった。運転はナズナ様。
ナズナ様はジロウ様の専属メイドという位置づけらしい。青みがかった銀髪で、色白、ジロウ様に似て、とても可愛い。
現状の村長代理がやってきた。
ゴエモンという、筋骨隆々の大男であった。刑が満期になって、娑婆に帰れると嬉しそうだった。
さて、村民を夕方招集してしてみると、315人で、男250人、女65人だった。その他にアオシが50人とモモコが50人居た。
俺は、壇上に立って就任の旨を伝えた。俺は13歳になったばかり。まだ、子供と言える。しかし、ここでは長だ。気負いばかりで目がくらみそうだ。
これから寝起きする家の前で、じっと立っていると、ジロウ様が、僕の背中に手をまわして抱きしめてくれた。
「スクエアよ。辛いときは、余を呼ぶのじゃ。慰めてやるからのう」
と、上目遣いで、僕に言った。
「おかあさん」と思わず抱きしめてしまった。
おれは、一応第2王子なので、王の教育を受けている。それに則って、治世を行い、開拓を進め、罪人以外の普通の人も受け入れて、追々町にしてゆきたい。