二十一話 娯楽の調査
心を豊かに。
この世界の娯楽ってなんだ。ここは、魔法学園の僕の部屋。特別に、大きな部屋を使って良いことになっており、ナズナとメイドが3人常駐している。まったく、お姫様なんだ。
集まったのは、サチ、クロエ、カナン、そしておまけのガル。
「あの・・。そなたたちは、休みの日は何をしているのじゃ?」
「おれは、剣の稽古や走り込みだな」
「私は、お父さんの手伝いで、会計処理ね」
「私は、本を読んだり、お茶会ね」
「あたしは、森に入って食べ物さがしかな」
「カナン。そんなに困窮しているのかえ?」
「いや、そうじゃなくて・・・・・・」
「カナンは料理好きで、いろいろな食材を探しているのよ」
「うん」
カナンは、どちらかと言うと無口。クロエは、商売人の娘らしく、おしゃべりで人懐っこい。サチは悠然と構えている。おまけのガルはうざい。
学園の友達にトランプを紹介する前に、ここは魔女の居間。
「サナエさん。トランプとかチェスなどのゲームが、この世界には無いようなのですが、何か理由が?」
「ジロウ様、それはですね。初代ハナ様がことのほか、賭け事を嫌っておりました。それにつながるものは広まらないようにしていたのです」
「確かに、勝ち負けが楽しみだけなら良いが、金銭や人生そのものをかけちゃいけないよね」
「初代ハナ様が、一度『リバシー』というものを披露したことがありました。一挙に広まって、当初娯楽の無い人たちが夢中になって、賭け事へと進展しちゃいました。 働かず、一日中興じている民を見て、サクヤ王も辟易したそうです。禁止令を出しても衰えなかったそうです」
「それで、どうしたの?」
「魔女隊を大量投入して、没収しました。以降見つかり次第、関係者は開拓村に送られたのです」
「おおお・・・。過激だね」
「この星では精神はプラス方向に制御されていますが、このときは、マイナス方向に動いたのです」
「なるほど、健全な勝ち負けは、精神の鍛錬に有効なんだが?。まあ、追々お考えていこう」
「とりあえず、カルタと、トランプは普及に挑戦してみたい。協力を頼む」
「ジロウ様、了解しました。魔女隊の準備もしておきます。過ぎたことをしたら、片っ端から鉱山送りにしてやる!!」
何か、サナエさんが悪魔に見えてきたのだけど??
僕は、サチ、クロエ、カナン、そしておまけのガルの前にトランプを出した。
「ほおお。これはなんだ! 薄くて固くてきれいな模様だな」
まず、7並べを披露する。食いつきは良い。欲の面が厚いガルは、折り返しでストップしていたカードが出せなくなって、ビリ。結構楽しんだね。2時間も。
「ねえ。他にも遊び方があるの?」サチがすり寄ってきた。
「大富豪。と言うのもあるのじゃが。ちょっと刺激が強いのじゃ。どうしようかのう」
「これ、ほしい。どこに売っているの?」
クロエの目が商人になっている。
「これは、僕の自作なのじゃ。 魔法を使って作るので、おぬしら次第じゃな」
紙に、がまの油を浸み込ませ、乾燥する。その上からハロルドの樹液を塗る。そして、少し乾燥させて、絵の具で絵を書く。最後に硬化魔法を少しかける。硬化魔法は、ちょっと難しいので一般の人には無理。
「来週、材料を集めて、製作してみようかの?」
(うまく行けば、いい商品になりそうだ。とクロエがほくそ笑む)
「そういえば、クロエ。商品の独占販売権とか、製作者権利とかあるのかのう?」
「ジロウ様 ございます」
「僕は、お金はいらないが、国の収入になればいいのと思うのじゃが」
とりあえず、トランプを広めることにした。