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二話 魔女ジロウの使命

「ジロウ様、朝ですよ! 起きてくださいませ。 起きろよーーー」

サナエが、身体をくすぐる。


ああ、もうちょっと寝ていたかった。もぞもぞと寝返りを打ちながら、起き上がる。

「おはよ!」

やっぱし、夢じゃなかった。

ちょっとこの異世界転移の展開は面白そうだ。

ワクワクする。


 朝食を済ませて、ぼーっと外を眺めていると、サナエが日常の過ごし方について、相談にきた。


「のんびりと休暇のように過ごすもよいし、覇王となって世界を牛耳るも良しです。ジロウさま次第です。ただ神様からは“世界の調和”が魔女の使命と伺っております」


「え、神様がいるの? 会いたい」

「はい、昨日お会いしたばかりですよ。『よろしく頼むと』とおっしゃられたでしょ?」

ああ、そういえば引き継ぎの儀式で声を聞いた。あれ、神様なのか。

(そういえば、僕の部屋の奥は一見壁だが、近づくと廊下が出てきて、その奥が見える。その一番奥に神様が鎮座されているらしい)


「あのー。サナエさん。神様からチートな能力などはもらえないのでしょうか?」

「チート?? ああ、”ずる”ですね。 そんなものはありません」

あちゃー。残念。

「ただし、努力次第で魔法が使えます」



 5代目ササ様の部屋には、この世界の精密なジオラマが中央にあった。

中央の大きな大陸は楕円形で東西に長く、長径が2万キロほどある。西寄りに大きな山があって、海に向かって森や草原が広がっている。そして、北と南に少し小さな島がある。


 大きな山の上の方は竜人族、中腹は魔物、裾野は獣人族とエルフ、平野部は人族が占有している。この割り当ては初代の魔女がおこなったそうだ。

そして、この星は、直径約3万キロあって、月は2つ。太陽は3つとサナエから簡単に説明があった。


 魔女の領地も表されており、大陸の南側に3割ぐらいの結構な広さである。

人族の国は4つあって、大陸の東1割に配置されている。

この世界の人口は800万人とのこと。



 この広大な世界の調和を保つのが魔女の使命。覇権は手段の一つらしい。

「『世界の調和』には、二つの実行要件があります。一つは『魂』の獲得で、二つ目は『輪廻』を回すことです」サナエが真剣な表情で言った。


えーっ。急に重くなってきたよ。


 サナエの説明では、人種に必要な高位の魂は、およそ800万ぐらい保有しているそうだ。そのほとんどが使用されており、余裕はほとんど無い。魂は有限で、自然に増えることはない。

それは、後でわかったことだが、この世界が仮想世界から派生したが所以であるらしい。


 最初の魂は、初代ハナ。その後、パラレルワールド管理局の支援により、ゲートの設置と、そこから転移者を受け入れることで、魂を増やしてきた。すなわち、歴代の魔女は、パラレルワールド管理局の転移要請を引き受け、魂を獲得することが任務の一つである。


 二つ目は、輪廻を回すことで、魂の成長を促す。赤子は生後100日までに神殿に参って、魂を授かる。死ぬと魂は神殿に帰る。魔女は、各ゲートに神殿を建てて、神官を配置し、民の信仰を絶やさないようにすることだと。


それより、神様がおっしゃった、『近々君の使命がわかる。よろしく頼む』が少し気にかかる。


 5代目のササさまは、高度な文明を使って、瞬時に世界を把握し、対応できる環境を作った。しかし、ササさまは覇王にはならなかった。

代々の魔女様たちは、各種族の自治を尊重し、介入は最小限にしている。技術も既存のものをベースとし、産業革命や武器などの発明は事前にその芽を取り除いてきた。文明優先の社会を望まないのが、この世界の理だとのこと。


「と、言うことで、これからの日常をどのようにお過ごしになられるか聞かせてください。ジロウ様」


即答は難しいだろうということで、サナエが案を出してきた。

ひとつ、夜が明けたら少し散歩。

ふたつ、そのあと朝食。

3つ、魔法の勉強

4つ、剣術、弓、槍などの稽古

5つ、昼食

6つ、社会、地理の勉強

7つ、自由時間

8つ、夕食

9つ、薬学

10、風呂

11、就寝

「ジロウ様、大雑把にこんなところでしょうか?」

「サナエさん。これじゃあ、遊ぶ時間が無いのでは?」

「大丈夫です。日曜日は休みです。」


 1日は24時間、1週間は 月、火、水、木、金、土、日で、28日で1か月、1年は13か月 364日が使用されている。毎月の1日目は、日曜日で満月になる

 一月一日。年の初めは、春分の日を3月21日として、28日+28日+21日=77日 77日前を年の初めとして、1月1日に設定した。これは神崎元が地球とあまり違わないが、月の運行を基本にした暦にしたかった所以であるらしい。


「まいったな。勉強は嫌いではないけど、ところで先生はいるの?」僕はサナエに尋ねる。

「まあ、適材適所の人を呼んできますので、ご心配なく」

「それから、神様が 『3年先に大きな変化があるので、準備をするように』とのことですので、何を準備するかは追々話し合ってゆきましょう」

近々と言ったけれど、3年ぐらい先のようだ。まだまだ先の話、ゆっくりスローライフと行きたい。


 とりあえず散歩だ。大好きな散歩だ。犬じゃないよ。朝の散歩って良いな。早速、家の外に出ることにした。黄色いジャンバースカートと白いブラウス、赤い靴が用意され、着替えさせられた。ツインテールの女の子ができあがった。


「お散歩 お散歩 らんらんらん・・・」ってお前、何歳だよ!。それに男だろ!。

まあいいや。外に出ると青い空と、清々しい香り。童心に戻るとは、このことか。


「ジロウ様、まだ遠くに行ってはダメですよ!」って、サナエが小うるさい。

ゆっくりと、何をすればいいのか考えよう。

今は、はずむボールのようなこの身体と清々しい朝を楽しもう。


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