十八話 巡礼
昼夜の別なく、この魔女の家の神殿に巡礼がやってくる。
魔女の家から南へ300メータほどには石段があって、その前は幅300メータ南へ500メータの大きな芝生の広場になっている。
そこに各地から信者が引っ切り無しにやってくる。多い時で1日で500人ぐらい。ここは、コルネ教の総本山でもある。神殿は、直径30メータぐらいの円形で2階建になっている。一階の正面にはコロネ様の像が立っている。
巡礼者はミナミ村を通り、参道に入ると大きな狛犬が左右を鎮座しているのを見る。広場を500メータ北に進むと石段があって、その先は円形の神殿が見える。
石段の右脇には石の円柱があって、『生あるものは魂を捧げよ』、左側は『生無きものは魂を望め』と刻まれている。そして、その下には5メータ四方の大きな大理石のテーブルがおいてある。
巡礼者は、右側に供物を捧げ右からテーブルの後ろに回り、魔女の家の正面に来ると、2礼4拍手2礼する。左側に移り、左のテーブルから撒餅をいただく。そして帰路につく。
また、この世界では、神殿で魂をいただくことになっている。産まれた子供は、必ず神殿に参って、魂をいただく。初参りである。
一方、死するものの魂は、この神殿に戻ってくる。輪廻である。
魔女の星が創生された時、なぜかこの星には魂がなかったので、神崎元は、ノンプレーヤキャラクターで住民を補充した。その後、パラレルワールド管理局とのコンタクトで他の星から魂が得られるようになったが、それは限りがあった。
僕は、この参道に沿うように小道があって、それを利用している。巡礼者からは見えにくく木立が遮っている。したがって、「キャー 魔女様がーー!」なんてことはない。時に巡礼者を避けながら広場を通ることもあるが、こんな子供が魔女とは、誰もわからないらしい。
巡礼者は、こもごも願いを唱えてゆくが、身勝手なものも多い。それでも、真摯なお願いには耳を傾けることがある。サナエも、できれば叶えてあげてほしいという。
いわんや、魔女教ではなく、「コロネ教」という。
巷の話では、むかしコロネという狐人が居たそうだ。各地に存在する神殿とゲートの守り人として、近くに建てられた小さな家に住んでいた。
初参りの祝福と、魂を還す人々を迎えた。人々は、コロネ様と言って、親しみを持って接していたそうだ。
不思議なことに、どこの神殿にも同じ顔立ちで、同じ姿で、同じ声のコロネ様が居た。神殿は、人族の生息域だけでも 45か所が知られていたのだが。45人が同じ??。
コロネ様は、初代魔女ハナの時代にこの地にやってきた。レベル10の神様みたいな生命体で、狐人の憑代を得て、この地でレベル3の生活をされたそうだ。もっぱら、魔女の家にいて、各地のゲートに神殿を立てた。人々の信仰の礎を築いた人である。