十五話 魔法学園に途中入園
「ジロウ様の髪の毛は、つやつやで綺麗ですね。どうしてなのですか?」
僕の向かい側に座っているサチが聞いてくる。ここは、学園の食堂。同級生と昼食を食べながら、会話を弾ませている。といっても、僕は比較的無口。男の娘がばれないように。どうも、ガールズトークは無理。
無理無理無理無理無理無理無理無理! 黒い猫の姿になったミミは、僕の膝の上で大あくびをしている。
(ミミ、交替してくれる?)
(だめ、順応してね)
(薄情もの!)
魔法学園での僕の姿は、腰まである銀髪と赤い瞳、色白で身長は140センチメータぐらい。10歳なので胸もぺた。まあ問題なし。服装は、水色のブラウスにピンクの膝丈のスカートが学園の制服。
「ジロウ様は、魔女なんですか?」クロエ。
「伝説の魔女? えぇーっ そうなんですか?」カナン。
「そういえば、黒い猫を伴にしているって話。ほんとうなんですね」サチ。
サチ、クロエ、カナンの3人は、仲良しさんだそうだ。その中に、どうしてか僕が入っている。サチは人種で、このガルバ王国の第3王女。クロエはウサギ種で、黄桜の大商人の娘。カナンは、ここから遥か西の方にある竜人属の第3王女。
それと、おまけのように僕にまとわりついている狐種のガル。 ガルはここから西に位置するアズサ町のただの町民。
遡ること3日前の、転入生紹介である。
「みんな、静かに! 今日からこのクラスに転入者があります。そして、彼女は今代の魔女ジロウ様です」
「先生! 今”魔女”とおっしゃいましたか?」
「えーっ。まじょーー!」
「まあまあ 静かに! それではジロウ様どうぞ」
僕は、念入りによそ行きの姿に仕立てられていた。黒の和服姿、真っ赤のだらり帯。髪は銀色でツインテールで、真っ赤な梵天で結んでいる。足元は白足袋でぽっくり下駄。振袖には、桜の花と花弁が舞う。それと、足元に黒い猫。
教室に入ってきた僕を見て、皆が固まった。
「やあ! 8代目魔女のジロウじゃ! よろしくなのじゃ!」と可愛い声で にこっ!と微笑んだ。
一瞬、教室内が息を飲んだ。
「おおおお・・・・・ ぶっとんだぜ! よろしくな!」と一人の男の子が立ち上がって叫んだ。狐耳に立派な尻尾がぴんっと立っている、ひときわ目立っている。だれだ? それ以来、この狐種のガルが、まとわりつくことになる。
「皆に、お願いがあるのじゃ。 ずっと魔女の家から外に出たことが無く、世間に疎いので助けるのじゃ。よろしくお願いするのじゃ」と僕は頭を下げた。
うん、ここは下手に友好的に。できたかな?
「ジロウ様、お席は、こちらでお願いします」マチコ先生が席まで案内してくれた。
「ありがとう。 先生、呼び方はジロウでお願いじゃ。 皆もジロウで良いのじゃ!」
男子は全部悩殺だよ。悪乗りだよ。男だってばれたらどうするんだよ。
何とか一日が終わった。門には、迎えの馬車が止まっていて、執事のゴウタが一礼をした。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
クラスの子やその他大勢が、何事かとみている。なにせ、王様の馬車より豪華なものが、止まっており、執事とメイドが迎えに来ているのである。
(なんだ、なんだ、だれなの?)
(魔女様だって!)
(可愛い・・・)
(えっ。 ちっこいの!)
(しーっ、聞こえたら殺されるわよ!)
物騒な声も聞こえる。
早速「学園は如何でしたか?」メイドのアヤセが探りを入れてきた。
「楽しかったよ。友達はこれからだね。やはり『魔女』は近寄りがたいみたいだね」
初日は、遠巻きにチラチラと目を向けてくるけれども、誰も近づいてこない。ガルを除いて。ただ、そんなガルを見て、女性陣が排除してくれたけど。
ナズナは、学園では専属メイドで、僕専用の部屋に常駐している。
そういう訳で、今日は疲れた。サナエが様子を聞いてきたので、簡単に返答をしておいた。パソコンに、今日の出来事を報告して、就寝となった。