十四話 サナエの不満
この星に転生して、6か月が過ぎた、ある日。
「うーん。どうにかなりませんか? ジロウ様!」とサナエが地団太を踏んでいる。
「はて? なにがどうして?」と返答する。
「もう。このうえなく爺くさいと、言っているのです」サナエが怒っている。
「それはもう、元が80歳だから、仕方ないよ!」
「う・・ もう!」
怒るサナエも可愛いものだ。可愛い孫を見るような目で見ていると、サナエのほっぺがさらに大きくなった。うん、確かに、サナエの怒りはごもっともだ。折角、新し身体を得たのに、毎日が前世の延長みたいに過ごしているのだから。やっぱり、だめか。
「ということで、ジロウ様には、ガルバ王国の魔法学園に行ってもらいます。同世代?と一緒に過ごされれば、きっと若返るのではないかと思います。期待します。」
サナエが、腰に手を当てて、のけ反りそうに言った。
「これから、手続きをしますので、明日にでも出発できますよ」
まあ、ほどよく追い出されることになった。
そういう訳で急遽、ガルバ王国にある、魔法学園に入学することになった。ガルバ王国は、もともとサクヤ王が建国したものだが、ある深い事情で国名が変更されたらしい。その位置は、ミズホ王国の北、エリー山脈を越えたところにある、大きな盆地である。
盆地は、東西に80キロメータ、南北に50キロメータほどの長方形に近い形をしており、その中央をオダ河が西から東へ悠然と流れている。その上流の西は緩やかな森が続いている。その奥はゴーダ大山脈。
一方、東へ600キロメータ行くと海に出る。北は遠く山々が霞んで見える。
この盆地は、もともと大きな窪地で、オダ河の堆積物で出来上がったものらしい。盆地の中央に、ちょっと小高いところがあって、そこが王都である。
僕たち一行は、ミズホ王国から北へ。エリー山脈越えて、この辺一帯が見下ろせるエリー山脈の中腹に、飛行艇を下した。
「良いところだね。 川の両側は肥沃な土地なのか、農業が盛んなように見える」
「あそこがガルバ王国の王都 黄桜の都です」
そして、黄桜の都にある魔女の別邸に着いた。僕たち一行とは、僕とナズナ、サナエ、メイドのミズナ、キク、コギクの6人。門を潜ると。
「おかえりなさいませ。ジロウ様。 私は執事のゴウタでございます」
そして、左右に20人のメイドたちがそろって、
「おかえりなさいませ。 ジロウ様」
なぜに、おかえりなさいませ??まあ、深く考えるのはやめて、執事の案内について行く。
「ここが、ジロウ様で、こちらがナズナ様のお部屋です。 担当メイドを紹介します」
メイド服の3人が前に出てきた。
「私がメイド長のアヤセです」
「ハナコです」
「ミハルです」3人から挨拶があった。
各地の別邸には、魔女隊が派遣されている。執事風から警備、メイドまで取り揃えている。魔女の家の本家メイドと別邸メイドの間で、引き継ぎをしていた。
そして、マシャに乗せた荷物を運びこみ、一段落することにした。サナエとメイドのミズナ、キク、コギクは本家に帰って行った。ナズナは僕の友達と言う位置づけらしい。
僕がソファーにデレーッと伸びていると、アヤセがやってきて、食事の用意ができたとのこと。
そう、サラダにオニオンスープ、ステーキ、ふっくらパン、デザートに蜜柑とプリンが出てきた。毎日が、豪勢な食事ではない。普通の晩御飯。
風呂に入っていると、ドアの外から、
「お背中をお流しします」ミハルが入ってきた。
おお・・。やばい。
「そんなに狼狽えなくても、存じております」
サナエから次のことを守るようにと言われているとのこと。
1、ジロウ様は、外向きは女の子で魔女。内向きは男の子。
2、魔法学園は、女の子として入園する。
3、女の子が必要なときは、ナズナが変わり身をする。
したがって、屋敷内は男の子で通して良いそうだ。だが、来客も来るので、常時女の子の恰好は必須だと。
「う・う・。」
「大丈夫ですよ。私たちが見守っていますから」
慰めになってない。