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ゲームしてたら異世界へ  作者: ユーリー
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商人の町

 ようやく辿り着くと、一面壁が続いていた。

壁に沿って歩いてみると、一箇所入り口のようなものを発見した。

中に入ると、そこには町があり、その先には巨大な西洋風な城が建っていた。

「やっと町についたみたいね」

「ああ、そうだな。とにかく他のプレイヤーを探してみよう」

俺達は、プレイヤーを探すため町の中を歩いてみた。

歩き始めてすぐ、俺達は人を見つけた。

いや、正確には人ではないかもしれない。

「ねぇ、あの子・・・」

アイが指差す先には、白い着物を着て、白い獣の耳が生えた少女だった。

「あの子、絶対にプレイヤーじゃないよね?」

「ああ、モンスターってわけでもなさそうだし。NPCかな?とにかく話しかければわかるか」

NPCの場合、話しかけてもクエストなどに必要な同じ返事しか返ってこないため会話は成立しない。

俺達は、少女に近づき話しかけてみた。

「あの、ちょっといいかな?」

すると少女はこちらを振り向いた。

「えっ?お兄ちゃんたち、誰?」

少女は不思議そうな顔をして尋ねてくる。

「どうやらNPCじゃないみたいね」

「ああ、そうみたいだ」

「・・・・?」

少女はますます不思議そうな表情になる。

「俺はユウヤ、こっちがアイだ」

とりあえず自己紹介をする。

「れん・・・」

少女が呟く。

「えっ?」

俺が聞き返すと、再度少女の口が開く。

「私はレン・・・です」

少女の名前はレンというらしい。

「ちょっと色々聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「なんですか?」

「ここはFSOだよね?」

「えふえすおー?」

レンはまた不思議そうな表情になる。

「ファンタジースターオンラインだよね?」

アイがレンに尋ねる。

「なぁにそれ?ここはアイルノーツだよ?」

「アイルノーツ?」

「うん。アイルノーツ国だよ。ここはその城下町の、商人の町だよ」

アイルノーツ?商人の町?どれもゲームで聞いたことがない。

「この町に他のプレイヤーはいるかな?」

「ぷれいやー?」

レンが首を傾げる。

「うん、俺達みたいなプレイヤーだよ」

「お兄ちゃんたちみたいな?見たことないよ。この町に、町の人以外の人が来ること自体めったにないよ?」

「どういうことだろう?」

俺はアイの方を見て聞いてみる。

「私にも分からないわよ・・・」

二人で途方に暮れていると、レンが口を開く。

「あっ、もう帰らなきゃ!お兄ちゃん達も早く帰ったほうがいいよ?」

「帰りたいのはやまやまなんだけどなぁ」

「お兄ちゃん達、行くとこないの?」

「まぁな・・・どうしたものかと悩んでる」

「だったら、うちにくる?」

「いいの?」

アイが尋ねる。

「うん!とりあえず今夜はうちにおいでよ!」

「わかった。ありがとう」

そして、俺達はレンに連れられて一軒の家にきた。

「ただいまー!」

入るなり、レンが叫ぶと中から声が聞こえてきた。

「レン、遅かったじゃない」

そう言いながら出てきたのは、レンと同じように獣の耳が生えた大人の女性が出てきた。

「あら、この方たちは?」

女性がレンに尋ねる。

「このお兄ちゃん達、行くとこないんだって。今夜うちに泊めてあげてもいーい?」

「あらあら。そうなんですか?」

「はい。俺はユウヤです」

「あたしはアイといいます」

俺達は自己紹介をする。

「はじめまして、私はレンの母親のハクといいます。まぁ、とりあえず中へどうぞ。話は中で」

そう言われ、俺達は家の中に上がる。

中に入ると、ハクさんはお茶を淹れてくれた。

「それで、ユウヤさん達はどこから旅をされて来たんですか?」

「どこからと言われると難しいんだけど、とりあえず日本かな?」

「ニホン・・・ですか?聞いたことありませんね」

「ねぇ、これってやっぱり・・・」

アイが俺の耳元で話しかける。

「ああ・・・あまり考えたくなかったけど。今までのことを考えると、俺達は違う世界にやってきたみたいだ」

「そんな・・・しかもFSOのキャラクターのままってこと?」

「そうみたいだ・・・」

俺達がヒソヒソと話をしていると、ハクさんが話しかけてきた。

「あのー」

「あ、はい。なんですか?」

「ユウヤさん達はこんな夜に、しかも町の外からいらしたんですよね?」

「はい、そうですけど?」

「大丈夫でしたか?ワーウルフとかに襲われたりとか・・・」

「ワーウルフ?あの狼みたいなやつですか?」

「はい。このあたりは夜になるとワーウルフが出るので町の外には絶対に出てはいけないんです。出会ったら最後、私達人族は骨になるまで食べ尽くされてしまいます。」

「そうなんですか?そんなに強いモンスターには見えませんでしたけど」

確かに狼には出会ったけど一撃で倒してしまった。

「え、ユウヤさん達やっぱりワーウルフに遭遇したんですか!?」

「はい。剣で倒しましたけど」

「そんな・・・。あのワーウルフを簡単に倒すなんて。ユウヤさん達はいったい・・・」

ハクさんが驚愕していた。

「まぁ、修行の成果ってことで・・・」

異世界の、しかもゲームの中から来たと言っても信じられないだろう。

「とりあえず今夜はもう遅いのでうちに泊まっていってください。この客間しかありませんが」

「はい、助かります。ありがとう御座います」

そうして俺達はハクさんの家で一夜を明かすことになった。


 2枚並べられた布団に入り、なかなか寝付けないでいると、隣で寝ているはずのアイが話しかけてきた。

「ねぇ、ユウヤ。まだ起きてる?」

「ああ、なんか寝付けなくて」

「もしよかったら、少しお話しない?」

「お話って?」

「リアルの話」

通常、ゲームの中で現実のことを話すのはマナー違反なので、お互いに話すことは全くなかった。

「いいのか?」

「うん、なんか突然こんなことになっちゃって。今のはあたしには頼れる人はあなたしかいないの」

そう言いながらアイは俺の方に身体を向ける。

「だから、もっとユウヤのことを知りたいし、あたしのことも知っておいて欲しいの」

「そっか。わかった。なら話すよ」

俺もアイの方に身体を向ける。

「俺の名前は狩野上悠馬。17歳だけど、学校には通ってない。ハンドルネームはなんとなく1文字変えただけ」

「カノウエユウマくん、ね。あたしはね、二階堂真紅。あなたと同じ17歳だけど、あたしも学校には通ってないわ」

「シンクか。俺と同じニート?」

「ユウヤと一緒にしないでよね!あっ、ごめん、悠馬だったわね」

「ユウヤでいいよ。なんかアイに呼ばれるのはその方がしっくりくる」

「そっか。わかった。あたしもアイのままがいいかな。二階堂藍・・・」

「えっ?」

俺はアイが突然つぶやいた名前に首を傾げる。

「あたしの妹なの。もういなくなっちゃったんだけどね。ハンドルネームは妹の名前なの」

「いなくなったって、死んじゃったってことか?」

「ううん。文字通りいなくなっちゃったの。あたしの目の前で。消えるようにして・・・。だから、あたしは藍を探し出すため猛勉強して科学者になった。学校は飛び級で卒業しちゃったからニートじゃないわよ」

目の前から人が消える?そんなことがあるのだろうか。

いや、ゲームの世界から異世界にくるような世界だ。何があっても不思議じゃない。

「あたしは藍を探すため、色々な研究をしたわ。ゲームはその息抜きなの」

「そっか。なら、必ず帰って妹さんを助けないとな」

「うん。あたしは藍が絶対にどこかで生きてるって信じてるもん」

「アイは俺が必ず元の世界に連れて帰るよ」

「ありがとう、ユウヤ」

そして、疲れた俺達は眠りに落ちていった。



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