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ヒロインを愛した悪役令嬢

作者: 下菊みこと

ヒロインを愛した悪役令嬢

私、妹のためならなんでもできますわ。


初めまして、ご機嫌よう。私、マリア・グレース・ネルソンと申します。公爵令嬢です。突然ですが、私、悪役令嬢なようなのです。


順を追って説明しますと、まず、私は所謂異世界転生というものをしたようなのです。前世で家族を愛し、家族を大切に守り、良い行いをしてきた結果、好きな世界に転生する権利を得られたのです。そしてこの世界で目が覚めました。大好きな乙女ゲームの世界。しかし、私はヒロインではなく悪役令嬢に転生していたのです。それも、ヒロインの姉。最後は身分剥奪の上国外追放されるラスボス悪役令嬢に。


ですが、私は正直とても喜んでいました。だって、ヒロインである妹、リリー・イヴ・ネルソンはとても可愛らしいのです。母から受け継いだストロベリーブロンドの髪に、父から受け継いだ珍しい赤色の瞳、ぷっくりとした血色のいい唇、歯並びの良く小さな唇、高い鼻、将来は絶対に、守ってあげたくなるタイプの、小さくスレンダーな身体になるであろう愛くるしい体格。性格もとても純粋で誰にでも分け隔てなく優しく、愛くるしい性格なのです。むしろ私がこの子の中身にならなくてよかったと神さまに感謝するほどでした。


弟であるジェイデン・ガブリエル・ネルソンも父から受け継いだ烏の濡れ羽色の髪の髪と赤色の瞳、高い鼻、薄い唇、歯並びの良い可愛いお口、将来は背が高くちょうどいい体格になるであろう身体つき。幼い頃から正義感に溢れ、優しい性格。もう本当に二人とも可愛いですわ!


もちろん私は私で、父から受け継いだ烏の濡れ羽色の髪、母から受け継いだ青い瞳、高い鼻に蠱惑的な唇、将来はぼんきゅっぼんなナイスバディ確定の体格。ラスボス悪役令嬢に相応しい見た目ですし、皆から愛されてすくすくと健やかに成長できたので文句もありません。両親も私達に分け隔てなく接してくれましたし、私が妹や弟を可愛がるたび褒めて貰えました。


…だから、私考えました。


ー妹の将来のために、婚約者である王子様を完璧王子に育てようと!


幸いにして弟がいるので公爵家の跡継ぎは心配いりません。もし私が婚約者であるフィン・オーリー・ヨーク王太子殿下に振られた後修道院に入っても問題ありませんわ。フィン様は誰にでも分け隔てなく接する、優しくて正義感溢れる優しい王太子。甘々溺愛系で、乙女ゲームをプレイ中は身悶えするほど愛されましたわ。この方なら安心して妹であるリリーを任せられますわ。でも、ひとつだけ欠点が。それはお花畑思考の持ち主であるということ。乙女ゲームでも、ヒロインの姉であるマリアと円満に婚約解消して、ヒロインであるリリーと婚約出来ると考えていたほど。だからそういうお花畑な考え方だけ矯正しつつ、乙女ゲーム通りの完璧王太子になっていただきますわ。ということで早速、五歳の頃からフィン様完璧王太子計画をスタートさせましたわ。フィン様は学力も魔術も武術も十分に天才の域にあるお方ですが、勉強をして更なる高みを目指さなければなりません。ですから、子供ならではの距離感の近さで毎日フィン様を応援し、行き詰まった時には励まし、時には叱り、時には元気付け、やる気を出していただき、自信を持っていただき、完璧王太子になっていただきましたわ。


「マリア!僕、頑張ったよ!見ててくれた?」


「もちろんですわ!さすがフィン様!素晴らしい剣技でしたわ!」


「ふふ、そっか…!じゃあ、もっと頑張らないとね」


「ええ、応援しておりますわ!フィン様!」


「うん、ありがとう!」


ー…


フィン様完璧王太子計画を始めてから早数年。もう十五歳になってしまいましたわ。フィンは目的通り、才もありながら自信に満ち溢れた、お花畑思考は捨てつつ、誰にでも分け隔てなく優しい、正義感の強い素晴らしい王太子となられました。ですが、そろそろ学園生活も始まりますし、リリーとも良い仲になられるのでしょう…。ああ、何故かしら。とても名残惜しいですわ。


「マリア?どうかした?」


「フィン様!すみません、少し考え事をしておりましたの」


「…何か悩み?僕で良ければ相談に乗るよ?」


「え、えっと…わかりましたわ…あの、その、妹のことで…」


「リリーのことで?どうしたの?」


「その…フィン様はそろそろ、リリーと良い仲になったかしらと」


「え?」


「…え?」


「え?」


な、なにかしら、なんだかフィン様が怒っているような…?


「ねえ、マリア。まさかとは思うけど、君は自分よりリリーの方が王太子妃に相応しいと考えているの?」


「え、ええ。フィン様にはリリーの方が…」


がしっ、と肩を掴まれる。フィン様は真顔。わ、私、何かしてしまったかしら?


「マリアには僕が浮気する男に見えるの?」


「い、いえ、そんなことはございませんわ!」


「ならその妄想は今すぐ忘れて。僕はマリア一筋だからね?他の女性にうつつを抜かすことはないからね?いいね?」


「は、はい…」


あまりの剣幕に思わず頷く。


「わかってくれてよかった。僕はマリア以外に妃も側室も持つ気はないからね。安心してね」


な、なんだかいつのまにか、すごく愛されていたかも知れませんわ。でも、リリーはどうしましょう。ああ、でも、すごく嬉しいですわ。私、いつのまにかフィン様に惹かれていたのね。だめなお姉ちゃんでごめんなさい、リリー。


…そして学園生活が始まり一年が経ち、物語は幕を開けました。リリーももちろん入学してきましたわ。リリーの皆様からの評価は愛らしいご令嬢。なぜなら、あの容姿にあの性格ですもの。リリーはみんなから愛されてとても幸せそう。そして、私が一年かけて懸命に探し紹介したリリーに相応しい、爵位も金銭面も問題ない、ちょっとぶっきらぼうなところもあるけれど優しくて頼りになる素晴らしい方と婚約者になりましたわ。どうやらすぐに相思相愛になり、らぶらぶいちゃいちゃな様子ですわ。よかったです。私も、フィン様からの寵愛を受けられ、フィン様と相思相愛ですのでとても幸せですわ。ええ、とっても。


可愛い妹の為に努力する。それも一つの選択肢ですわ。

妹も幸せになりました

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