第四章『守りたいもの』
さあ、第四章で早くも過去編に突入です。
どうなる、超スペクタクル、SF群像劇
夜、メールが届いた。
メールはご丁寧に地図情報と画像ファイル付きだった。どちらも、かなり古めかしい形式のもので、解凍するのにそれなりに時間がかかった。
送り主は、幽霊を名乗るものだった。
なんてことだ…拳を握りしめた。だが、俺にはどうすることもできなかった。
一刻を争う事だろう。このことを本田に知らせれば、秘密裏に動き出すに違いな。しかし、今の社会。公務員の時間外労働は、例外中の例外であり、非常識極まりない事、署長が許すはずがない。一日待って、明日、会議室へ、この話題は持っていく。そう決めた。
「えぇ皆の元にも届いている、と思う。昨晩、うちの情報局員である、氷上結子情報局員が、幽霊を名乗るものに誘拐された。」
局長の言葉に耳を疑った。
「待ってください。その情報はまだ、僕しか知らないはずだ。なぜ局長が?」
「今朝メールが届いてたんだよ、ここにいる全員の端末に。」
「しかし、またまた大胆な事しますねぇ幽霊ってやつは。」
「山上、氷上さんが誘拐されたんだ、口を慎めって。」
事は、一刻を争う事だからと、我々は現場に向かった。
「私が、この警察署を護るから、総動員で挑もう。うちの優秀な局員だ、早く奪還しよう。」
そう言われ、現場へ向かった。
2
その前に、俺と、結子そして、本田の話をしておこう。
〈十四年前〉
帝都大に俺は、入学した。
勉学はそれなりにやってきたし、スポーツもぼちぼちやってきた。
大学は、今や誰でも入れる時代。そう言われて何年も経って、俺は行く大学に困らなかった。もちろん大学ではこれまでやってきたバスケットボールをやる。そのつもりだった。
そのバスケ部で俺たちは出会った。
結子はマネージャーとして、本田は、選手として入部してきた。
二人は、学科が同じということで、仲よさげに入ってきた。
「うちは名門と言われるが、昨年は二部降格し、3月のオープンリーグでも、思うような成績を残せなかった。今年は、一部復帰を目指し、名門を復活させるべく、いつも以上に厳しくなる。耐えれたものが、このチームを作っていくと思って。ついてこい。」
そうキャプテンは言った。
その通り、この帝都大バスケ部は、名門校だったが、近年は、リーグ優勝から遠ざかり、衰退の一途を辿っていた。それは重々承知、このチームを一部に連れていき、リーグ優勝させたいと思って入部したのだ。厳しい練習は望むところ。
しかし、近年では、部活のオーバーワークを見直す風潮は、大学スポーツまで影響を受けていた。それがこの帝都大弱体化の原因だとも言われた。帝都大名物と言われた、厳しい練習は、規制に次ぐ規制により、鳴りを潜め、二部降格まで導いた。
きつい、つらいだの述べる奴らが出だし、七月には部員は半分まで減った。
それでも、俺は残っていた。帝都のスタメンを張る。それを夢見るなら当たり前だと思っていた。
そして、夏季リーグが始まった。
俺は、ベンチ入りを果たした。無名高校でキャプテンを努めたプライドでなんとか、つかみ取った一枚だった。そんな中、一人だけ異彩を放ったやつがいた。それが本田だった。噂には聞いていたが、こいつと俺だけが、一年生でユニフォームを持っていたが、本田は、スターティングメンバーに抜擢されていた。お互い、唯一の一年ベンチ入りメンバーとしてしゃべるようになり、必然的に、本田と一緒にいた、結子とも仲良くなっていった。
夏季リーグは、本田の大車輪の活躍があり、一部リーグ昇格一歩手前まで行ったものの、リーグ後半で、疲労から本田の離脱により、指揮が低下した、俺達は、入れ替え戦で惨敗した。
「いやあ、惜しかったね…」
「惜しいなんて言葉で済ませられるもんじゃないよ」
「だなあ、おめぇ引くぐらいシュート外してたもんな」
「お、俺は、マークがきつくて仕方なかったんだ。」
「初スタメンでガチガチだったくせによ。ノーマークのレイアップ何本落としたら気が済むんだよ。」
「言えてる。なぁんにもない、ところ落とすんだもん」
「なんだと。経験したこと無いやつはそういううよな。」
そう、本田が背負っていた期待や、重圧を一部背負った気がして、こんな者をあいつは背負ってたんだと感じた。到底俺にはできないなと、心の底から思った。
「まあ、なんだ、来年は、離脱せずに、お前らと一部に行くよ。」
「そうしてくれ無いと、俺も困るんだがな。」
「ずるいぞ、私も入れろー」
なんて言って帰っていた。
こんな毎日が続くと思っていた。
3
二年になった、このシーズンは、本田も宣言通り、全試合にスタメン出場し、大車輪の活躍だった。それが大きく、俺達は、二部リーグの首位争いに絡むようになってきた。
しかし、軒並みスタメンが、中盤に調子を落とし最終的に、リーグ四位。是年度よりはるかに良い成績だったが、入れ替え戦には行けなかった。
「なあ…」
「どした、そんな重っ苦しい顔して。」
「いや、俺達じゃ、一部リーグ優勝なんてもちろん、リーグ昇格さえ、夢のまた夢なんじゃないかって思って。」
「んだよ、そんなしょーもねぇ事考えてたのかよ。」
「しょうもないことってなぁ…今年は行ける、そう思っただろ。」
「連続トリプルダブル記録更新、3pシュート率三位は俺が、アシスト数六位はお前が取った。一位ではなかったけど、損だけで、今年は良かったよ。過ぎたことだ、それに、俺達の上はみんな四年生。言ってる意味わかるか。次、最強の点取り屋と、アシスト屋は俺たちだ。来年は、来年こそは行けるさ。」
「私も、そう思うよ、牧田君は重く捉えすぎなんだよ。きっとさ、今年は、そういう準備の時期だったんだって。」
そう言う二人の通り、今年のうちは強かった。
一年にスーパールーキーが入り、本田との二枚看板、そして俺がアシストで絡む。攻撃面はかなり成長した。破壊的な攻撃力で、連勝の嵐で、ダントツ一位でレギュラーシーズンを終えることになる。
「気がつけば、俺はアシスト王、本田は得点王。それにあいつは新人王だ。」
「言った通りでしょ。そんなに悪いチームじゃないって。」
普通に僕らはまた三人で帰ろうとしていた。
「悪い、少し用事ができたからさ、先に帰ってくれ。」
この頃から、本田は多忙になっていた。月バスの取材、プロスカウトマンとの話し合い、選抜の練習。数々のことをこなしていた。それゆえに、入れ替え戦前は特に、俺と結子の二人で帰ることが多くなった。ちょうどこのときくらいから、仲良くなった。だが、俺たち二人を決定づけるほど、ではなかった。
4
取材なのか、選抜なのか、スカウトなのか、本田の足取りはよくわからなかったが、入れ替え戦の一週間前には、居残り練習も再開し、また三人で帰るようになっていた。
そして、運命の入れ替え戦。
入れ替え戦は、トーナメント方式で行われる。
すなわち、負ければそこで終わる。
ただならぬ思いで向かっていったのは、今でも覚えている。
しかし、この試合は、僅差で負けてしまった。
最後残り2秒、
「牧田、打てぇぇぇー」という本田の声だけ聞こえ、僕は何もすることができなかった。
あの場面は、今でも思い出せる。1ゴール差で負けていた4ピリオドの最後2秒、タイムアウト開けで、ハーフラインから、スリーポイントエリアでボールを受けたが、そこで、何もできなかった。シュートを打つのが怖かった。外してみんなに避難されるよりはよっぽどマシだと思った。それに、パスの先を探しても、本田と、スーパールーキーはディフェンスに守られて、パスが出せなかった。詰んでいた。そう思った。
その後、打ち上げ終わり、三人で帰る道。
いつも結子が、最初に家につく。そして、俺と本田の二人になって、少しして、本田はバスケットをやめる。そう言い出したのだ。
「なんでだよ。今やめられたら困るって。一部リーグに行って優勝するって。決めたじゃんか。」
「いや、やっぱ無理だわ、よく考えたら。俺ら三人いても、何にもできやしなかった。今日で思い知らされた。」
「あれは、最後、俺が打たなかったのが悪いよ、他は悪くねぇだろ。もう少しで、一部は見えてた。な、来年こそ、行こうぜ。」
そういったが、あいつはじゃあな。とだけ残し、帰っていった。
もちろん、その後、本田が部活に顔をだすことはなかった。
後々から聞いたが、一年のときに怪我したところが悪化しすぎていたらしい。
本田の抜けた後、四年になった俺は、キャプテンとなったが、チームはうまくいかない。そんな時、支えてくれたのが、結子であり、どっちからともなく、交際を切り出した。
そして、警察官になったらびっくり、その三人が顔を合わせるのだから。
5
〈現在〉提示された倉庫へ向かった。
倉庫の前、武装したものが5人いた。
「ここは、俺らに任せろ。お前は、結子のとこに行ってやれ。」
「わかった、ありがとう本田」
「ああ、ちゃんと救って来いよ」
俺は走り出し、二階部分のドアを蹴破った。
大変。
結子が何者かに捕まってしまった。
メールを無視し、
一日経って、急いで駆けつける。無能な彼氏とその仲間たち。
ドアを蹴破り、銃を構える牧田。
だけど、ヘタレの彼じゃ、どうなるの?
お願い牧田、結子さんを助けてあげて。
次回「牧田死す」
デュエルスタン。。。。。。。。。。。。。。
この話の解説は、
牧田、本田、結子のパーソナリティを裏付ける大事な話だったかなと思います。
タイトルに関しては、前の『守るべきもの』と並べて、牧田の葛藤を描いています。
次回、果たして牧田は、幽霊を打ち破ることができるのか。
あと見どころとしては、この時代の銃の設定です。
お楽しみに。
それでは皆さん。ばいにゃちは〜、さよなら