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町内巡回夜空ちゃん  作者: 長野 郁
4/5

三シリンダー夜空ちゃん

 表の、六車線ある、車のテールランプが河のように赤く絶えない幹線度道路から少し入った閑静な住宅街の深夜、間隔の開いた蛍光灯に、おぼろうっすらと照らされた人通りの絶えた暗い道を、カラカラとギアの空転音を響かせながら、自転車に乗って軽快に走る少女が一人ありました。夜空ちゃんです。


 …、って、スカートが恥ずかしくて、家を去る時は結局跨れずに押して小走りに駆けていたのに、何で乗ってるんでしょうか…?

ナレーター:「夜空ちゃん、そのミニで跨ったりして恥ずかしくないんですか!?」


夜空ちゃん:「五月蝿いわねぇ、この人通りのない夜道なら誰も見てないからいいのよっ…!」



 ああ、それで表通りや商店街を避けて、こんな暗い路地を走っていたんですね…。納得、納得。ところがどっこい、人目がないというのはイイことばかりじゃございません。というか、むしろ望ましくない人物が。とはいえ、別に凶悪な犯罪者が居座っている訳でもなんでもなくて、只の塾の帰り道の中学生が路の脇でたむろしてるだけみたいですが…。二人連れの内の一人が、素っ頓狂な声を上げてもう一人に呼び掛けました。



「おい、見ろよ、あの女、あんなミニスカでマウンテンバイクに乗ってるから、パンツ丸見えだぜ!」



 夜空ちゃん、一瞬でパニックです。…ひ、人が居た…! し、しかも、み、見られてる…!! 夜空ちゃん、声にならない悲鳴を上げました。



「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(泣)」



 思わずトップチューブを跨いだままで両の太腿で内股になって挟み込み、両手をハンドルから離して、両の掌を股間に宛ててスカートから覗く下着を全力で隠しました。両手離しになった自転車は、ハンドルが左にかくっと曲がって、そのままがっしゃんと横転してしまいました。



ナレーター:「夜空ちゃん、自転車の手放し運転は苦手なんですか…!!?」


夜空ちゃん:「う、ううううう、…う、う…。嫌…。は、恥……。」


ナレーター:「夜空ちゃん、しっかりしてください…!

夜空ちゃん:「う、ううううう、…う、う…。嫌…。は、恥……、…い、痛い…。」



 そりゃ痛いでしょう。派手にどんがらがっしゃんと自転車ごとコケましたからね。



「ぎゃははははは、ざまぁねぇ、パンツ見られたのが恥ずかしくて手が使えなくなってコケやがった…! こりゃ傑作だぜ、なぁ、オマエもそう思うだろ…!」



 丸見えだぜと言ったほうの背の高い少年が夜空ちゃんの醜態を指さして笑い飛ばしながら、もう一人の連れの少年に話しかけています。その少年の威勢のいい声高な大声に、夜空ちゃん、すっかり萎縮してしまい、短くされてしまったタイトデニムの裾から覗きそうになる股間の純白を両手で必死にガードしたまま蹲ってしまいました。



「う、ううううう、…う、う…。嫌…。は、恥……、…」



「ぎゃはははは、見ろ、コイツ怯えてやがるぜ…! 見たところ高校生だな、コイツ…。」



 威勢のいい方の中学生の少年がツカツカと夜空ちゃんの傍らにやってきて、ねめまわすように彼女を、まるで値踏みするみたいにジロジロと眺め回しました。



「おい、お前も来いよ。コイツ、面白いぜ…! 自分でこんな短いの穿いておいて、股が恥ずかしいみたいだぜ…!」


「…い、いや、…こ、来ないで………!…」



 もう一人の連れの太った方の中学生の少年が、おずおずと声をあげました。


「い、嫌がってるナリ…。可哀想ナリよ…。」



「いいってことよ…! そうだ、万引きしたエロ本なんかより、こっちのほうが面白そうだぜ…! オマエもそう思わないかっ…!?」



「何する気ナリ…?」



「知れたこと、姦っちまおうってこった…! 大体、スカートで自転車に跨ってるのを見られただけでハデにこけるほどの小心者なんだったら、どのみち大して抵抗もするわきゃねーだろうしな…! そうだ、オマエ童貞だろ、俺が見ててやるからこの女で書き初めと洒落込んでみろよ…!」



「か、可哀想ナリよ…。」



「そんなこと言ってると、オマエのような奴は、一生女を知らずに終わっちまうぜ…! オマエは知らないだろうがな、この世の中にはオマエなんかが一生かかっても手が届かない夢のような営業の世界があるんだぜ…! ソンナモノにどうせ生涯縁のないオマエは、この夜の道端で今降って湧いたこの据え膳に手を付けない限りは、一生童貞間違いなしヨ…!!」



「!!……!、だ、だったらヤルナリよ…!!」



「そうそう、ノリがいいな、そう来なくっちゃ…! そうだ、確かオマエの大好きな蒸気機関車で、ピストンが三つあるってーのが在るとか、オマエ言ってたな…!! 俺とオマエとこの女で三シリンダーだ…!!」



 すると、太っている方のオドオドした少年が急に目を輝かせて生き生きと叫びました。



「そうナリ!! 三シリンダー蒸気機関車はC53ナリよ!! それまでの木造客車から鋼製客車への移行に際して列車重量が増大するのに対応する為に造られたナリ!! 米国からの輸入機関車を解析して模倣して製造したナリよ!! まさに日本の模倣と改良の工業的発展の礎ともいうべき壮挙にして……。」



「あーあー、能書きはもういいから、とにかく姦っちまえ。俺が暴れないように両腕を上に回して抑え付けていてやるから、おパンツを剥ぎ取ってオマエの貧相なモノで貫いちまいな…! まぁ、こんなに怯え切ってるし、楽なもんだとは思うわな。オマエの貧相なもんじゃ今回が一生に一度きりのステージかもしれないぜ…! せいぜい愉しみな…!!」



「…、頑張るナリ…!」



 太った方の少年は、意外なほどの怪力で、夜空ちゃんのスカートの中に手を突っ込み、下着をずるりと降ろすと、足首から抜き去って放り捨ててしまいました。下半身をすっぽんぽんにされて、夜空ちゃん、ますます怯え切ってしまいます。



「…い、いや、…こ、来ないで………!…」



「…うわーっ!!」



 太った方の少年、ザクを撃墜するアムロみたいな叫び声をあげて、ずぶりと夜空ちゃんの股間に己の貧相なイチモツを埋め込んでしまいました。



「やったなオマエ、まさに宇宙のヒーローだぜ!!」


「トクイトクイナリ! バンザーイ!!(有頂天)」



 二人は夜空ちゃんを放り出して浮かれ始めました。



 すると突然、太った方の少年が、がっしゃーん、という音とともに吹っ飛びました。なんと、ノーパンにされて強姦された夜空ちゃん、キレてしまって少年に自転車を投げつけたのです。少年のおでこが切れて血が流れています。



「なにバカなこと言ってんのあんた、こんな夜道で素人襲ったってセックスな商業界とは何の関係もないわ! 自慢になるもんですか!! キミ騙されてんのよ、ぎゃはははは、ばーか!!」



なんか目茶苦茶を言い始めました。



「ぎゃはははは、バレちゃあ仕方ねぇ! そうとも、俺はこのクソにアンタを襲わせて大笑いしたかっただけさ! 小賢しいアマだな、よく頭の廻るこった! ちょうどいいや! 憂さ晴らしだ! 借りるぜ!!」



背の高い方の威勢のいい少年は、夜空ちゃんのマウンテンバイクをヒョイと持ち上げると、再び威勢よく太った少年に投げつけました。



がっしゃーん!

「ぎゃー、痛いナリ、骨が折れたナリー!!」


「嘘コケばーか、そう簡単に骨折なんてするもんかよ! 同情を引こうったってそうは行かねぇぞ!」



「あんた見ていたらイライラしてきたわ! この子に肩入れするわけじゃないけど、もう一回喰らいなさい!!」


今度は夜空ちゃん、自転車のフレームを掴んで太った子をマウンテンバイクで殴り付けました。



「ぎゃー、痛いナリ、骨が折れたナリー!!」



「その子の言い分じゃないけどね、そう簡単に骨折なんてするワケないでしょう! 同情を引こうったってそうは行かないわ!」



「ぎゃはははは、散々だなオマエ!!」


「そういうアンタが張本人でしょうが!」



がっしゃーん!! 夜空ちゃん、今度は背の高い威勢のいい子の頭部めがけて自転車を投げ付けました。



「ぎゃー痛えぇ!! なめるなこのアマ!!」



頭から血を流しながら威勢のいい方の少年が夜空ちゃんに襲い掛かってきました。ノーパンの夜空ちゃん、あえ無くその股間に少年のイチモツをぶち込まれてしまいました。



「う、ううううう、…う、う…。嫌…。く、屈辱……、…」



 二度も強姦されて夜空ちゃんは泣き出してしまいました。



「けっ! 興醒めだぜ! 女にぶち込むのはイイものだがな、こんな狂暴なのは願い下げだ!! コラ、行くぞオイコラ!!」



 そう怒鳴ると、威勢のいい方の子は、太った子の襟首を掴んで、半ば引きずるようにスタコラと去って行きました。むろん、二人とも頭から血を流しているので、暗い夜道で目立ちませんが、路面に点々と二人分の血痕を残しながらです。にもかかわらず、二人の少年は、ともあれスタスタ歩いて、去って行ってしまいました。






 残された夜空ちゃん、道端に打ち捨てられていたぱんつをスルリと穿くと、まるで誰かと会話してるような調子で一人ごちました。


 


「いい教訓になったわ…。今度から急に跨っているところを見られても、慌てて両手を使うのは止めね…。ブレーキを掛けることを考えれば、スカートは右手だけで抑えた方がいいみたい…。」



 そう呟くと、再び誰もいない夜道で、再度おっかなびっくり右脚を振り上げてマウンテンバイクに跨り、今度は右手を股間に宛てたままの片手離し運転で、その夜道の続きを自転車を駆って去って行きました。



どこに行くつもりなのでしょうか? それは、彼女自身にも、まだ分かっていないのかもしれません。いつ、家に帰るつもりなのでしょう? それも考えていないのかもしれません。


やがて空が白み始め、道に日の光が少しづつ射し始めると、点々と残された血痕だけが、ここで昨夜遅くに起こった惨事が夢幻でないことを、誰にでもなく、ただ朝の少し冷たい空気に向かって証明しているかのようでした。



(つづく!!)

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