第1話 入学式で新しい友達を作れるのか?
国立晴嵐高校、日本だけでも数百はある能力者専門学校の一つ。
能力者の健やかな成長と能力の正しい使い方を指導する学校だ。
全ての能力者には、国から言い渡された能力者専門育成学校に入る義務が生じるが、国からの免除はそれはもう素晴らしい。
全寮制で無理のない教育と能力の使用法の指導。
毎月3万円程の補助は全寮制だし三食付きだからほとんど自分の好きなように使える。
能力を狙うものを引きつけない完全な防御。
その他色々。
ね?すごいでしょ。
今日はそんな学校の入学式だが、これほど新入生の晴れ舞台に相応しい日は他には無いだろう。
桜は咲き乱れ、春風は心地よく、気温も暑過ぎず寒すぎず。
まさにベストコンディションだ!
俺は心の中でガッツポーズしながら、晴嵐高校のどでかい門をくぐり抜けた。
そして、正面広がるのは広大な敷地にずっしりと佇む我らが学び舎であった。
右手にはグランド、左手には男女の寮がある。
おっと、申し遅れたな。
俺の名前は月ヶ瀬春人。
今日からこの学校に進学するナイスな能力者だ。
平和な日本において全く使い道のない最強の能力、LV5『燼滅支力』の能力がなんと全部使える。
どんくらい強いかと言うと、天体つまりは地球はもちろん、太陽や数多に光る星々を消せるくらいの力なのだ。
が!しかしそれ以外使えないという、マジで無意味な最強の力を持つ。
ほんと、いつ使うんだ。
この能力……。
しかし、こんな俺だが両親は深い愛情を持って俺を育ててくれた。
今日から寮生活という事もあり少し名残惜しさもある。
しかし、そんな事も言ってられない。
俺には目標があるのだ。
一言で言えば青春を謳歌すること!
高校生活と言えば心踊るイベントが盛りだくさんだ。
そんな日々を時に笑い、時に涙して青春したい!
そのために俺はここに来た……。
しかし不安はある。
入学が待ちきれずこの学校について色々調べて見たのだが、「底辺中の底辺」だとか、「お払い箱」だの、そんな評価がずらりと並んでいた。
散々の一言に尽きるが、まあ住めば都と言うしな。
さらに俺の能力は使い道の無い最強の能力だ。
正直、能力を使って女の子を守るとか、良い感じな出会いなんて出来そうもない……。
いや、いかんいかん。
考えすぎは良くないしな……。
うん、大丈夫。
俺ならきっと青春を謳歌できる!
と、そんな事を考えているうちに大ホールに着いた。
今日はここで入学式が行われるらしい。
見渡す限り同じ制服の男子と、ブレザータイプの制服に身を包んだ女子。
この学校の制服は黒を基調にした白いラインの入るかなりデザインセンスのいい一品だ。
こんな空気の中にいると、あぁ俺って青春するんだ……と軽く感動を覚える。
そこからは、同じような内容の話が長々と続く、正直退屈な入学式だった。
まあ、これも俺の晴れやかな高校生活のため!と思えば軽いもんだったけどね。
■■■
入学式が終わった後、俺たち新入生はそれぞれの教室に案内された。
クラス分けと言うイベントは今後の未来を大きく分けると言っても過言ではないため、なかなか緊張したが見たところ悪い奴は居なそうな、又可愛い子も多め(ココ重要)なクラスになったと思う。
ちなみに12クラス中の4クラスになった。
今はホームルームが始まるまでの休み時間だが、俺はこの時間も逃さない。
やっぱクラスに馴染むためには友達を作るところから始めなければいけないと思う。
手前にいた男子に話しかけようとしたその時、
「よぉ、死の王。また会ったな……フッ……貴様とは戦友の契りを結んだなかだが、これもまた運命……かなッ!(やったあ、月ヶ瀬と同じクラスだ!よろしくな!!)」
前髪で片目を隠した制服を変な着崩し方をしたやつに話しかけられた。
今の発言の中で色々ツッコミたいところがあると思う。
まあ落ち着いてくれたえ、一個ずつ説明していこう。
まず、こいつは中学からの腐れ縁で夜坂裕也。
見ての通り絵に描いたような厨二病だ。
次に俺のことを死の王なんて呼んじゃってくれたが、これには訳がある。
まず俺はLV5の能力を全て使えると言うことはなるべく言わないようにしている。
知っているのは家族と一部の親戚だけだ。
ではどうやって俺の能力を説明しているのか。
それは、LV5は使えるけどたった一つしか使えない。
という風に設定している。
やはりLV5の能力者は数が少ないため希少だ、それも俺みたいに全て使えるなんて超レアだろう。
周りへの被害なども考えるとやはり公言しないのが一番だと思ってこうはしているが、それでもLV5は珍しい。
なのでまあまあ目立ってしまう。
さて、俺がみんなに伝えているたった一つの能力だが、こんな感じだ。
LV5『燼滅支力』闇属性
死の略奪者
生物を殺害した時に発動する。
対象の生物の能力全てを受け継ぐ。
なぜこれを選んだかと言うと、なにかと言い訳を作りやすいからだ。
例えば、強力な生命維持能力なら、昔ゴキ◯リを倒して得たとか言えばいいし、空中浮揚だったらハエを叩き潰したとでも言えばいい。
しかし、その厨二くさいネーミングから夜坂に気に入られてしまい、まあ仲良くやってきたのだ。
まさか一緒になっているとはな、今の今まで気がつかなかった。
さて、最後に夜坂が喋り終わったあと、まだ声が聞こえたと思う。
みんなにはカッコで見てもらったと思うが、これも俺の能力だ。
LV5『燼滅支力』無属性
生命理解
対象の全てを把握できる。
簡単に言うとテレパシーだな。
しかも相手の全てが分かってしまうため、今日の朝ごはんや、好きな人なんかもお見通しだ。
ちなみに、相手の意思が伝わるテレパシー的なやつだけ、常に発動する永続能力だ。
これは正直鬱陶しい。
相手の考えなんて読まないほうが絶対に良い。
さて長々と説明してしまったが、分かっていただけだだろうか。
俺は、
「おう、元気してたか?」
とだけ適当に返してこれからの生活に思いをはぜようとしていたら、まだなんか喋ってくる。
「フッ……緊張しているようじゃないか……まぁ無理もない。誰だって緊張するものだからな!(うわー、俺もチョー緊張する……クラスに馴染めるかなぁ)」
見てわかる通り、内心は普通のいいやつだ。
そこからは妙に拍子抜けしてしまったので、そのまま夜坂と話していた。
するとまた後ろから声が聞こえてくる。
「おはよー、月くんと夜くん」
だいぶゆっくりした調子で話してきたのは、同じく中学からの仲で林道可憐。
ふわふわ系女子だ。
体のラインもふわふわして、出るところは出て締まるところ始まっている。
髪は緩めのパーマのボブだ。
ちなみに心の声が聞こえないと思うが、その答えは単純。
林道は何も考えていないのだ。
正直ここまで何も考えていない奴は初めて見たがもう慣れてしまったと言う事もある。そこからは林道も加え3人で談笑しながら休み時間を過ごした。
あれ?新しい友達作り、失敗してない?
お気付きの方もいると思いますが、今回出てきた死の略奪者という能力は前作から引っ張って来ました。
え?ネタの使い回しは良くないって?
これからも過去作ネタは使っていきたいです。
(話同士の直接の繋がりはありません)
お読みいただきありがとうございました!