第1話 平凡
差別的な描写があったりするので、無理がある場合は読むのを控えてください。
また、これはカクヨムにおいても連載してあるため、多少文が長く感じてしまう時があります。ご了承ください。
「じゃあね!お兄ちゃん、ちかちゃん。また放課後!」
2人に別れの挨拶をした沙耶は中等部の校舎の方へといそいそと行った。
高等部の御崎一世、藤堂千花夏は下駄箱入れで別れ、それぞれのクラスへと自分の足を進めて行った。と言いたいところだが、2人は同じクラスなのでそのまま一緒に行くことにした。
一世たちの通う学校は小学校から大学まである一大教育機関 学校法人帝創会設立の帝創大学付属帝創高校である。
帝創会という組織は教育というものに非常に力を注いでいる財団のことだ。なにせ、帝創会は日本政府に対して絶大な権力を持っており、現在の日本の政治家の半分近くは帝創の人間である。
学校は堅牢な壁に囲まれており、そこは一つの街のようになっている。学校内はエリア分けされておりその中で特に代表的エリアであるは
・大学、高校、中学校、小学校などの 教育機関が密集するエリアE
・帝創会の本部などのビル群のあるエリアO
・遠方からの学生たちのために設けられた寮があるエリアH
などなど………
とにかく規模として日本いや、世界一とも言われている。そんな学校で一世たちは勉学に励んでいるのだ。
さて、2人は自分たちのクラスである2年普通科第二の教室へと入っていった。少し名前が複雑であるが、要するに2年2組という意味である。
帝創は高校には大学のように専門学科というのが多く存在しており、それぞれがその分野で自分の才能を磨いていく。
普通科の場合は、いわゆるどこにでもいるようなごく普通な学力を持った普通の生徒が在籍している。もちろん初歩的な専門学科の教育も受け、そこで興味のある学科や才能のある分野で大学の学部を決めていく。
その教育方針が上手くいっているためか、帝創は高い評価を受けている。
教室に入っていくと2人はそれぞれの席についた。一世は席につくと学校指定の鞄を机の横にさげて、今日の授業でつかう教科書を引き出しの中へと入れた。
そしてその作業が終わると前の席にいる男子生徒が一世の存在に気づき後ろを向いて話しかけてきた。
「よ!一世。相変わらず千花夏ちゃんとはラブラブだよな。お前ら付き合ってるだろ?」
「バカ、そういうのじゃねぇよ。ただ昔っからのつきあいだっていってるだろ?冴樹。」
毎回毎回、一世に千花夏との仲の良さを面白そうにして指摘する人物、少し碧みのかかった髪に左目の下に泣きボクロがあり、顔はイケメンの分類に入る。
彼の名前は三条冴樹。一世とは初等部からずっと同じクラスであるという、とてつもない腐れ縁である。簡単に言うと悪友だ。
「おはようイッセイ。相変わらずマヌケな顔をしているわね。」
一世が冴樹と話をしていると、そこに割って入るように誰かが話しかけてきた。
2人は声のするほうを振り返るとそこにはクリーム色の髪のボブカットにキリッとした目、胸は控えめな少女がドヤ顔をして立っていた。
彼女の名前は、伊藤優美。一世とは同じクラスで、彼女もまた初等部からの腐れ縁だ。
「なんだ、優美か。相変わらず胸小さいな。」
一世は優美に言われたことに少しムッとしたのか、彼女のコンプレックスにあたるところを露骨を言った。
ゴツ!
鈍い音がした。その音がした方向を見るとうつ伏せで一世が倒れていた。そしてその頭には大きなコブが出来ておりなんとも痛々しかった。
「あんたってやつは!どこ見てるのよ!この変態!」
「痛てぇじゃねぇか!ちょっと胸のことを言われたからってすぐ暴力降るなよ!」
「胸のことを言うな!まだこれからだし!」
痛みをこらえて立ち上がり優美に抗議をした。まだ痛々しいコブはでており、痛みを与えないように優しくさすった。
優美はコンプレックスである胸のことを言われるのが大っ嫌いなのでそこを指摘する人間には容赦なく暴力を奮っている。
当然一世もその1人だ。
そんなやり取りをしばらくしていると、教室のドアから先生が挨拶をしてやってきた。
とても若々しくて綺麗な女性の先生であり、スーツが似合っており社長秘書のように見えた。
「はい!皆さんおはようございます!HRを始めますよ!」
元気よく先生は生徒に挨拶をした。ハーフアップの髪の優しい目をした女性、彼女は普通科第二の担任 加賀真知子。歳は27歳で現在彼氏募集中とのことだ。
良く、合コンの話とかをしてくるが、生徒達から見れば少しイタイ。いわゆる残念な美人という分類に入るだろう。
「じゃあ、早速出席確認しますよー?元気よく返事してね?」
真知子先生がそう言うと、あ行から順番に返事をしていった。
こうして、またいつもの平凡な毎日というものが始まりをむかえた…………。
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学校も今日一日の授業が終わり、放課後となった。一世は帰宅部なので、早々に家に帰ることにした。
千花夏は茶道部に入っており、悪友である冴樹は少林寺拳法部に入っているためこれまた一緒に帰ることができない。他の友人達も部活に入っているため、1人で帰ることにした。
一世は家に帰っても特に何もすることがないと考えたのか、適当に寄り道をして帰ることにした。
コンビニや公園いろんなところを回って言ったものの、暇つぶしになるところは無かった。
「ん?ここ、なんかあるのかな?」
ふと、一世はあまり人の寄り付かない路地裏をみつけ、そこに誘われるようにズンズンと入っていった。
今まで歩いていた表とは異なり薄暗く不気味な感じがした。しかし、一世は好奇心の方が勝っておりどんどん奥へと入っていった。
「…た…む。…こ…さな…で…!お…は、なに…やっ…ない……」
「なに…やっ……ない?…あな…が罪……。」
奥へと入っていった一世は奥に誰か人の気配を感じたのか近くにあった物陰に隠れた。
2人の人間がおり、何か会話をしているようだ。
―――何を会話してるんだ?しかもこんなところで―――
しかし、ここからでは会話が聞こえてこない。
そこで少しずつバレないように抜き足で近づいていった。
2人の姿が良く見えるところまで行くと、そこには30代くらいの男と一世と同じくらいの歳の娘がいた。その少女は深紅の髪のロングでカチューシャのようなものをつけており胸も大きかった。身長は女子にして高いと思う。
「お願いだ!殺さないでくれ!俺は何もやってない!」
「なんども言ってるでしょ?あなたは生きているだけで罪の咎人よ?それに、あなたの犯した殺人の罪も知ってるのよ?」
「そんな!まだ俺は死ねない…。死にたくない!」
男がその言葉を発すると、自分の左手の手をひらを開きそれを彼女に見せた。
その瞬間男の手のひらには黒い紋章のようなものが現れた。
―――なんだよ…あれ!―――