プロローグ
平等………それは長い歴史において人々が求めてきたもの。
現代日本では、平等至上主義という、今日ではありとあらゆるものが平等になった時代である。
所得や学力、そして生活まですべてが等しく平等となった。
だが、そんな平等な世の中にも不平等なものが1つ存在した。それは、生まれつき異能を持って生まれてきた人間だ。
彼らは、その普通の人間とは違う力を持ってきたことにより、平等の原理に相反する者、つまり咎人と言われた。
そんな咎人たちが自分たちの自由のために戦う物語
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ジリリリリリリ!!!!
「あぁ……。眠い…。もうこんな時間か。」
ベッドからゆっくりのそのそっと少年が起き上がった。
髪は寝癖でボサボサであり、見事に爆発したような頭になっていた。
この少年の名前は御崎一世。16歳の高校2年生である。
「さて、準備でもするか。」
そう言うと一世は立ち上がり、階段を降りていった。リビングに向かうと、髪をポニーテールにした可愛い女の子がキッチンに立って料理をしていた。
「お兄ちゃんおはよ!今日は寝坊しなかったね?」
ニッコリと人懐っこい微笑みながら一世に問いかけてきた。
彼女は、少年の妹 御崎沙耶。14歳で中学三年生である。一世とは同じ学校の中等部に通っている。彼女は御崎家の胃袋を管理しており料理の腕前はピカイチと言っても過言でない。
「あぁ、おはよう沙耶。いつもの朝飯作らせて悪いな。」
「いいよ!お兄ちゃんに料理させたらキッチンめちゃめちゃになっちゃうし。それに楽しいもん!」
御崎家のご飯を作っているのは、沙耶である。それは両親が家にいないことが多いからであるのだ。
両親は、国家機関にどちらも務めており、めったに帰ってこない。だから、ほぼ2人暮らしなのだ。しかし特別寂しいわけでもなく悠々自適に暮らしていた。
「お兄ちゃん。はやく顔洗ってきて朝ごはん食べてね?」
沙耶に催促をされて、言われた通りに洗面所へと向かった。
顔を洗い終わるとテーブルにはこれぞ日本の食卓と呼ばれるものが並べられていた。
朝の献立・・・
・白ご飯
・焼き魚
・味噌汁
・納豆
・大根の漬物
バランスの良い食事を沙耶が心がけているため、大抵朝はこの献立が多い。ちなみに一世は納得が苦手である。あの独特の臭さが鼻にきて無理とのことだ。
「いただきます!」
「いただきます!」
2人は椅子に座り目の前に並べられた料理を食べ始めた。
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ご飯を食べ終わった御崎兄妹は身支度をして、誰もいなくなる家に鍵をかけて学校へ向かうことにした。
学校に向かう道中綺麗なピンク色の桜を見かけた。今はポカポカの春真っ只中であり、なんとも心地がよかった。
「お兄ちゃん!見て見て!綺麗な桜だよ!」
「そうだな。今年は花が散るのが遅いな。」
2人の見ていた桜は満開に咲き誇っており、花見にはもってこいであった。今年は例年より桜の花が散るのが遅く、まだ花見ができるほどである。
―――そういえばしばらく花見なんて全然やってないな―――
家には自分と妹の沙耶しかいないため、花見をするには少し賑やかさに欠ける。両親が忙しくなかった頃はまだ花見なんてやっていたが…。
最近は咎人関連のことで職務が忙しくなっているらしく、年末年始やお盆くらいにしか、こっちに帰ってこれないらしい。
一世は別に寂しくないのだが、沙耶は顔には見せないものの、寂しそうにしている。
「お花見やりたいな〜。」
「花見か……。今度千花夏も誘ってするか?」
桜の花を見てそう言っていた沙耶に一世は幼馴染の藤堂千花夏を呼んで花見をやろうと提案してきた。
一世は沙耶がやりたいと思うことはなるべくさせてあげたいと常日頃から思っており、大抵の我儘は受け入れている。自分が少しでも両親の代わりになれば…、一世はそう思っていた。
沙耶はそんな一世の提案を聞き嬉しそうな顔をした。
「ほんと!?やった!花見だ!花見だ!!」
喜んでいる沙耶を見て一世は安心した顔をしていた。傍から見たらシスコンのように見えるが、一世はそういうのはあまりに気にしなかった。
しばらく学校への道を歩いていくと、ふと誰かに声をかけられた。後ろを一世と沙耶が振り返ると、ブロンズのセミロングに沙耶より大きな二つの果実の持ち主の女性。
彼女は一世と沙耶の幼馴染の藤堂千花夏である。頭が良く、運動神経もなかなかいいのだが、天然なところがありその被害に良く一世があっているのだ。
「おはよ〜!かずくん〜、沙耶ちゃん〜!」
元気よく千花夏が2人に挨拶をしてニコニコ微笑んでいた。千花夏は普段からニコニコしているから、一世の学校では’学園の癒し系美女’と呼ばれている。男子からは人気絶大であり、良く告白されている。
「おはよう。千花夏。」
「おはよう!ちかちゃん!」
御崎兄妹は幼馴染の千花夏に挨拶を返した。折角千花夏ともあったので、3人で学校へと向かうことにした。
昔から仲のいい3人は世間話を楽しみつつゆったりと歩いていった。