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信じらんない!
サラは怒っていた。
理由はあのいじめられっ子腹黒少年のためだった。
あんなに毎日押しかけて、弟子にしろ!ってうるさかったくせに、突然来なくなるなんて。
怒りがむらむらと込み上げて自分でも眉間にシワが寄せられるのが分かる。
しかし、彼女は怒りと同時に、不安にもかられていた。
もしかしたら……もう飽きたのかもしれない。
子供らしからぬ雰囲気もあったけど、所詮は飽きっぽい子供だし……。
って、それならもういいじゃないっ!元々、弟子にするつもりなんて、なかったんだし…
そうよ、これでせいせいしたわ。
私だって、子供の相手してるほど暇じゃないんだから。まだ一人前になって日も浅いし、やることがたくさんあるんだから!
彼女はそう自分に言い聞かせ、注文のあった魔法薬の製作に励むのだった。
しかし、それからまた数日後……
「……ご飯……たべたい……!」
彼女は、限界を迎えていた。
あの少年に、すっかり胃袋を掴まれていたのだった。
あれから自分でも料理が出来るようにならなきゃって、頑張ってみたけど……!
無理!あんな、美味しいご飯を食べたあとになんて……もう、何も作れる気なんてしないわ!
そうよ。もういっそ、ご飯だけ作ってもらいに来たらいいんだわ。家政婦?なんて雇う余裕なんてないけど……まぁ、そこはなんとか言いくるめて……
うん!そうしましょう!とりあえずあの子を探すのよ!
そう決心し、サラは以前少年を送った場所にまで行ってみた。
「この辺りって、言っていたわね……」
しかし、それから探すのは大変だった。
サラは初めて、少年の名前を聞いていなかったことを思い出したのだ。
しかも……髪の毛が銀色で、目が青で……と言い、町の人々に聞くと、ほとんどが
「し、知らないよ!あんなやつ!」
「関わりたくないから……」
等といい、彼の話を拒んだのだ。
(知らなかったわ……)
彼は、同世代の子供たちだけではなく……
町全体から、いじめられていたのだ。
なぜ、どうして。
疑問が浮いては止まらない中、サラは心が暗くなっていく。
私、あの子をあんなに拒否して……彼は、町の人々からも、拒まれて……
そして、今はどこにいるの?
もしかしたら、もういないのかも知れない。
そんな考えが浮かび上がったのと同時に、後ろから大きな声が聞こえた。
「なにやってんだ!このっ!!バケモンが!!!!」
がしゃん!
何かが壊れる音と一緒に、大人の男の怒鳴り声がした。
驚いてそちらを見てみると……
「あっ……!!」
あの少年が、倒れていたのだ。
「この……!ついに、ウチの飯を盗みやがったな!この!」
男は、少年に手を振り上げ、殴ろうとした。
「やめて!!!」
サラは、また咄嗟に、前に出ていた。
それも、今度は男と少年の間にだった。
「な、なんだぁてめぇ!」
男は突然表れたサラに驚き、手を止める。
「わ、私は、私は……この子の師匠よ!」
この前の、子供同士の喧嘩じゃない。相手は自分よりも大きな、男だった。
サラは少し恐怖に震え、しかし、毅然として言い放つ。
「私の弟子に手を出す奴は、許さないんだから!」
そして、自分のありったけの魔力を使い、風を起こす。
「な、なんだ!?」
突然表れた強風に男は少したじろぐ。
「今よ!掴みなさい!」
サラは少年に叫び、少年の手を掴んだ。
「し、師匠……!」
少年は、しっかとサラの手を掴み、そのままサラは空高く箒で舞い上がる。
「師匠……!来てくれ…たんですね…」
「話はあとで聞くわ。とりあえずじっとしてて。」
少年になにがあったのか、なぜ、こんなにも町から嫌われているのか、
サラは、少年に聞きたいことを頭の中でまとめながら、自宅への飛行を急いだのだった。