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1-3

朝だ。

魔女サラの朝はあまりいい朝じゃない。サラは独り暮らしをしてから朝が嫌いになった。

今までは、お母さんが作ってくれた、焼きたてのトースト、フルーツの盛り合わせ、目玉焼きにベーコンが揃っていた朝だ。


でも独り暮らしをはじめてからは、それはない。


そう、こんな、甘くて温かいホットミルクの匂いも、バターをフライパンで溶かした美味しそうな匂いもない、朝なんてキライ…


こんな…匂いも…………?


匂い……ある?


「え!?なんで、いい匂い!?」


がばっと、匂いに気づいてベッドから飛び起きると、そこには、

ご丁寧にエプロンをつけて、台所に立つ知っている顔があった。


昨日の、いじめられっ子少年だった。


「あ、おはようございます。師匠。」


自分が教えた通りのにっこりとした子供らしい笑顔をして、彼が台所に立っている。

サラは焦りすぎて自分が「師匠」と呼ばれた事さえ気づかず言った。


「な、なんで朝からここにいるの……!?」


「朝って、もう10時ですよ。」


はっ、として時計を見ると、10時。

今日は昼から町に出て薬を売る予定だったからよかったものの、もうこんな時間なのかと驚いた。


「そ、それはそうだけど……っ、あんた、なんでここに!?」


「なんでって、弟子ですから。」


「弟子にした覚えはないわよ!」


頑としてお互いに譲らないが、彼は、また殊勝な笑みを浮かべた。


「ふーん、じゃ、こんな弟子でもない奴が作った料理なんて、食べたくないですよね?せっかく作ったけど、仕方ないですね。」


すると、少年は美味しそうなオレンジ色の黄身の目玉焼きが入った皿を、ゴミ箱に持っていく。


「ちょ、や、やめなさい!」


「どうして?ボクは弟子じゃないでしょう?」


「それと、ご飯は関係ないでしょ!食べるわよ!いただきます!!」


そうして、彼女はまた少年に言いくるめられてしまうのだった。



…信じられない。


それから数日後。

少年はすっかりサラになついてしまい、毎日のように食事を作りに来た。

更に、彼女だけ料理を食べるのは忍びないので、最近はよく一緒に食事をするようにもなっている。


これじゃあ完全に弟子……


「っていうか、ボク、主夫みたいですね?師匠は働き者の奥さんですね!」


「は、はぁ!?何言ってるの!」


その日も、少年は懲りずにサラの元へ来て、料理を作って一緒に食べていた。

そして、突然少年がそんな事を言い出したので、サラは慌ててむせた。


「でも、師匠、もうボクの料理なしじゃ駄目でしょう?」


「そ、そりゃ、こんな美味しいもの作られちゃ……!」


「あ、そこ否定しないんですね。嬉しいなぁ。」


「で、でも、年の差があるでしょーが年の差が!!」


「そんなの、すぐ気にならなくなりますよ。」


「私は気になるの!」


って、私はなんで、こんな子供とこんな会話を……

15歳の女の子なのに!全然恋愛とかしたことないのに!


しかし、確かに彼女もすでに、追い出すことも出来なくなっていた。

なにせよ、彼の作る料理が美味しすぎたのだ。


なんで、私より半分も生きてないくらい(多分?)なのに、私の何十倍も料理が上手いのかしら……!

いっそ、私が弟子入りしたほうが……!って、何考えてるの!


はぁ……と、どうしようもない問題を抱えてしまった彼女は、深いためいきをついて、今日も町へ薬を売りにいく。



しかし、この日常は突然、消滅する。

それからまた数日がたち、

少年は突然、ぱたりと、彼女の元へ来なくなったのだ。


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