勇者としての召喚騒動
長くなったので、途中で投稿しました。
教室にいたときに突然、懐かしい光に包まれながら私は昔の事をおもいだしていました。
私の名前は、神永 和と言います。自分でいうのも何ですが顔は結構いいと思います。しかも頭も良い。これは全国模試で十位圏内に毎回入ることからもわかると思いますが。だから、よくもてましたね。まぁ、バレンタインにはチョコを二桁ぐらいもらうぐらいです。
今日は、こんな私が勇者として選ばれ、呼び出された時の話をしましょう。
それは、とても暑い夏休みの事でした。
蝉がうるさく鳴く昼頃に、私は涼しくて静かな図書室に向かっていました。
家から歩いても約三分で着くほど近いため私がよく利用するところです。
そして図書館に入るため扉を押した時、辺りが光に包まれました。
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ここは、ライマ国にある王城の会議室。二十八人の国の主要人物が集まっていた。
その中の一人、『ライマ国の森の賢者』と呼ばれる男がいた。明らかに、寝間着姿のままで。
この男は、サルージ・ウディラーと言う。現在はライマ国の東の森に三十七歳で、隠居しているが十五歳と言う若さで、沢山の発明や画期的な論文を発表した男だ。
俺は頭を抱えていた。
何の前触れもなくいきなり真夜中に転移を使って問答無用で会議室に放り込まれたかとおもえば、国王に『現在、この国は絶大な危機に晒らされておる。森の賢者と呼ばれているあなたに力を貸してほしい。』などと言われて頭を抱えない人間がいるだろうか。いや、いないと思いたい。
だいたいライマ国というのは、この世界が創造神に創られたときに下界の管理を任された国の四つの内の一つとされているほどの大きな国家であり、俺を含め魔法と呼ばれるおおいなる力を使える人数が多くいるため、他の国など相手にならないほどの力を有している国だ。そんな国が、危機に晒されているなんて事は、例えば天地がひっくり返るというような事があって初めて言われる事だろう。
だからこそ、どんな危機なのか聞きたいと言うのに『お力をお借り出来ると言う言葉を聞けるまで、お話出来ません』と言うしな。結局のところ、王命なのだから俺風情に拒否出来る訳がなだろうが! はぁ。ため息を一つ落とすと口を開いた。
「ああ、分かった。この私、サルージ・ウディラーの力を貸す。」
ほぼやけくそだったが、きちんと口に出した。この世界では、ある条件に従うと口に出した言葉には力が宿る。だからこそ声に出させたのだろうが、否定権はないじゃないか! 口に出した事により、これでどんな話だろうと降りる事が出来なくなった。こうして、やっと王の側近である、ヤサル・ラノルは口を開いた。
「この世界は知っての通り、神が支配されている天界とこの下界で構築されていると言うことに成っていました。そのはずだったのです。昨日までは‥‥‥ 」
そこで言葉を切り、周りの目から逃れるように俯いて話出した。
「昨日、新たな界が見つかりました。地界と言います。改めて国書の中を探すと確かに地界の存在を示唆する供述が見つかりました。この世界にいる魔物の存在はその地界から現れているらしいのです。最近、一度に沢山の魔物が一カ所に現れると言う出来事が頻発している事は知っていると思います。それは、地界に住む闇の者が故意によって起こされている出来事と考えられました。」
その事を聞いたとき、この会議室の人の中で一番若い者が発言した。
「なぜそこまで分かっていたのに、新たな界が見つかったのは昨日なんですか? 」
「それは‥‥‥ 秘匿の魔法がかかっていた事と、余りに曖昧な供述だったからと言うほかないですね。」
と、歯切れが悪い答え方をするヤサル・ラノルは、まるで助けを得るかのように王の顔を見た。
その王の顔は忌々しげに歪んでいる。それを見た時、俺は思わず声を上げた。
「おい、隠したら余計に不信が募ってそこを敵に突かれる事になる。だから正直に話した方がいい。」
すると周りにいた男が、〔確か大臣だったかな?〕 が顔を真っ赤にして言った。
「貴様、なんだその口の利きかたは! 王とヤサル殿に失礼であろう。若造も若造だ、余計な質問はするな! 」
王は、困ったような嬉しいような複雑な顔をしてたしなめた。
「良いのじゃ。儂も悪かった。サルージ殿の言う通りじゃ。隠せば疑惑が起こる。はぁ、ヤサル言って良い。」
その言葉を聞いたとたん、ヤハル・ラノイは『また、私ですか! 』といった驚愕の顔を一瞬して、諦めたかのように疲れた顔のまま話始めた。
「分かりました。この話はけして外には漏らさないで下さい。
そもそも、私達が地人と呼んでいる者達は昔に私達の先祖が地界に追いやった一族の事なのです。その一族は、魔法を当たり前のように使いこなして、魔物達すら操る事が出来る者でした。その者達は私達の祖先と共に、この下界で暮らして居ました。
しかし、私達の先祖はその力を恐れてその一族を騙して地界に追いやったのです。そして、地界との繋がりを絶ちました。こうして、『闇の者』と呼ばれる者達は生まれたのです。」
それを聴いたとたん会議室の中は騒然となった。当たり前だろう。知られざる歴史を知ったのだから。
「どう言うことだ? まさか魔法が使える者は闇の者の血族の者なのか? 」
「なぜ、今なのだ。まさか魔物を使って侵略するときを探っていたのか? 」
その騒ぎの中、王が机を叩きつけ、叫んだ。
「静まれ! 今は推測をする時ではない! 対策を講じなければならないのじゃ!」
と、静まり返った部屋の中で、扉を叩かれ開く音が響いた。
「失礼します。アナール・ラッペン。ただいま参上致しました。」
そこには、猫背の髪の毛がボサボサな男が眼鏡を光らせ、立っていた。
王は、なぜか今までの威厳に満ちた雰囲気がなくなり、その男を視界に入れたとたん心頭した信者のような目をした。
「おお、ようやく来たな、アナールよ。紹介しよう、この者が『国書の主』と呼ばれるアナール・ラッペンというものじゃ。この者から闇の者に対抗するための案があるそうじゃ。聞いてくれ。」
男はそれを聞いて、ニヤリと笑うと口を開いた。
「闇の者を地界に追いやった話はこの様子だとお聞きになったと思います。その時に活躍したのは、『勇者』と呼ぶ異世界の者でした。だから、今回も勇者を喚べばいいのです。」
「勇者? どうやって異世界の者を喚ぶのだ? 」
疑問が沢山あるはずなのに、なぜか俺の口をついたのは勇者を喚ぶと言う案に乗る疑問だった。
「ご安心下さい。もう、準備は整っています。後はあなた方の賛成を頂くだけです。」
それを聴いた時、ヤサル・ラノルはまるで操られているように空を見て言った。
「さんせいの、ものは、きょしゅを‥‥‥」
バラバラと挙がる手は、全員の分あった。
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眩しい光が治まった時、目を開けると怪しい白い仮面を被り黒いロープを着た方達に囲まれていました。
全く理解できない状況ですね。私は少し混乱してしまいまして、図書館が改装したのかと思ってしまいました。
しかし、彼らの話を聞いてみると『成功した』、『これで恐怖に怯えることもない』などとぬかしているのに気がついて分かりました。これが、小説で読んだ事のある異世界召喚だということにね。私もそう言う事に憧れていましたから内心喜びましたよ。退屈な世界から抜け出せたのですから。
すると、いかにも王様の格好をしている方が出てきまして言いましたよ。あのテンプレの台詞をね。
「異世界の者、いや勇者よ。どうかこの国を闇の者達から護ってくれ。すべてが終われば必ず元の世界に戻す。だから頼む、力を貸してくれ。」
ここで、嫌だなんて言ったらどうなるんでしょう? まあ言いませんがね。逆に私の方が感謝しますよ。冒険ですか、ワクワクしますね。まさか、私にこんな感情がまだあるとは。
私は、自分が一番格好良いと思う角度と笑顔で言いましたよ。
「分かりました。私なんかで良ければ力を貸しましょう。きちんと帰して頂けるようなので。」
こうして、私は勇者に成りました。その姿を見てほくそ笑んでいる男の存在に気がつかないまま‥‥‥
そこからの展開もテンプレ通りでしたね。
一際、豪華な部屋に案内されまして持ち物も一番良い物だけを貰いました。勇者とか呼ばれていましたから伝説の剣でもあるのかとワクワクしていましたがそう言う物は無いらしいです。残念ですね。
そして、早速この世界の事を教える教師がつきました。その者は何でも王の側近らしいですよ。しかし私は勇者特典なのか、一度聞けば大概覚えられるように成ったので三ヶ月かかる予定が三日間で終わってしまいました。
次に、魔法を教える教師がつきました。その者も大物でしたね、森の賢者と呼ばれる男らしいですよ。しかし、魔法についても思っていたよりも簡単に修得出来ました。それどころか新しい魔法まで開発してしまいましたよ。
最後に、剣術を教える教師がつきました。しかし、それさえも三日間で教師を倒すことが出来る様になってしまいました。
勇者特典とはいえ、天才は辛いですね~
こうして、一般常識を学んだ後に勇者のお披露目の為に舞踏会が開かれる事になりました。
何でも、こうして発表しておくと後で町や村に寄った際に、顔が分かるためスムーズに入れられるらしいです。そのためのお披露目。納得ですね。ちなみに、普通に入ろうとしたら最低でも半日かかるらしいです。
お城が慌ただしくなるのを後目に、私が舞踏会までにダンスを修得しなければいけませんでした。
この国自慢の姫と踊らないといけないので‥‥‥
はぁ、身体を動かすのは余り好きじゃないのですが。剣術では、勇者特典のせいですか思っていたより上手く動けていました。しかし、ダンスでは相手に合わせて踊らなくてはいけません。正直、やりたくないですね。
そうこうしている内に、舞踏会の日が来ました。ダンスはなんとかぎりぎり合格点に達するレベルになったみたいです。ダンスを教えた人は伯爵家の妻らしく、異常に厳しかったです。少しでも体勢がくずれたり、ステップを間違うと最初からに戻すので、何度逃げ出そうと思ったか数え切れないですね。ああ、思い出したくない。
そして、舞踏会が始まったみたいです。この大広間の扉のが開かれれば勇者として冒険が始まる。ドキドキですね。
豪華な衣装に包まれて私はつぶやいていました。
「緊張しますね。今さらですが」
しかし、そう言った私は端から見れば全く緊張する様子は無かったのでしょうか、一緒にいる男が気味の悪いものを見たような表情をしてました。
そしてとうとう扉が『ギー』という音を立てて開きました。王様の『こやつが勇者じゃ』という声が聞こえます。その声に導かれるように絢爛豪華なシャンデリアの灯りに照らされた社交場に足を踏み入れました。
見られていますね。その事を意識せずにはいられないぐらいに。
ある者は扇に顔を隠しながらも鋭い目線をよこし、またある者は羨望の視線を送ってきます。まるで忌々しい物を見る目もありますね。
そのどれもに共通するのは見せ物を見る目だと言うことでしょうか?
確かに私はただの庶民ですがね。
しかし、私は選ばれたのだ勇者としてお前らが選ばれる事がない勇者ですよ。世界を救う奴を、まるでそこに落ちているゴミを見る目線なんて許されないと思いませんか?
ふふふ、どうにかされたいのかな?
そんな思考に捕らわれた私に扉から一緒に出てきた男が囁いてきた。
「そろそろダンスの時間です。」
その声に顔を上げますと、薄い桃色の上品なドレスに身を包んだ花の妖精のように可憐な美少女の微笑みが目に飛び込んできました。あちらも私の視線に気がついたのか近づいて来ます。こんなに美しいという言葉が似合う人は初めてですね。
「あなたが今夜の始めのパートナーですね。噂は父様から聞いております。何でも新しい魔法を開発したとか。私に詳しくお教えいただけますか? おや、ダンスが始まるようです。」
そうして微笑んだ彼女の周りには薔薇の花が咲いた様な幻想が見えるようでした。
「も、もちろん喜んでお教えしますよ。コホン、さて姫一曲私とお踊りいただけますか? 」
少し焦ってしまいましたが、ダンスに誘う時の基本であるひざまずく事は上手くいきました。あの、ダンスの鬼に散々注意された所ですからね‥‥‥
「ええ、喜んで。貴方とならいくらでも踊れますわ」
そうして、舞踏会で私の運命の女を見つけたのでした。
舞踏会から数日後、私は旅に出る事になりました。愛しい私の運命の人を魔物から守るために。そして、地界との繋がりを再び絶つために。