2章5節 調達2
「何なんだこの草は!というか本当に草か?草の形をした石じゃないのか?」
「それはストークだな。すごく硬い草。用途はないっ!」
「雑草みたいなもんかよ、、まぁそこまで多くないけど、、これじゃ普通の草と見分けがつかない。」
「まぁ、そうだな、でも慣れるだろ。いつか」
「何に慣れるんだよ、、足にぶつかったら痛えぞこれ、、」
「さぁっ、お待ちかね、薬草採取だ。」
「待ってないけどな」
そういいシルは一際大きな木の下にある、赤白の花が咲いた辺りを指さした。
「ほぉ、、、この花全部薬草か。」
「あぁ、まぁ、ラズリムって名前があるんだけど、、赤白だからみんな紅白草って呼んでるよ。村の子供たちの殆どはラズリムって言ってもわからないんじゃないかな。」
「ラズリムか、、」
ラズリムと言われたが、、どう見てもバラにしか見えないソレは、茎にはトゲがなく、エメラルドのような綺麗な葉がついている。
そしてバラのように匂いがあるわけではない。
「これを、、傷口に塗るのか?飲むのか?」
「飲むんだよ。この花と葉を湯に付けて、色がついてきたら、それを瓶につめる。そしてそれを売る。これが以外と高く売れるんだぜ。」
「どんな効用があるんだ?」
「わからん。」
「ハ、ハァ?」
「どんな効果があるのか詳しく知ってるのなんか、草について研究してるような奴だけだぜ。これ飲むと疲れや眠気が取れたり、体調が良くなったり、まぁ色々だ。もっとあるらしいが、これ位しか知らんな。」
「なんだ、、てっきり獣とかに襲われた時に傷口に塗ると傷が治ったりとか、、」
「たかだか草だぜ?そんな魔法みたいな事ができるわけないだろう?」
なるほど、、ファンタジーのような世界で薬草と言うとライフポイントを回復するためのもの、と思い込んでいたが、、どうやらエナジードリンクや薬のようなものだったらしい。
レッドブルやモンスターみたいなものだと思っていいだろう。
「なぁ、このラムリズの花、こんなに採って大丈夫なのか?」
「ラズリムな。あぁ、いくら採ってもこのでかい樹のおかげですぐに生えて来るさ。それに、あのストークもこの樹から栄養もらってるから、あんなに硬いんだ。だから、ストークはここらへんにしか無いんだぜ。」
「ほう」
その会話をし終え、暫くは2人無言でラズリムの花を摘んでいた。
花の癖に、深々と根が生えており、それも綺麗に抜かないとダメだと言われたのでしっかり抜いているが、、、、あぁ、また失敗だ。
手先は器用な方だと思っていたが、これには悪戦苦闘してしまう。
なぜシルはあんなに上手くできるのだろうか。
あっ、、また失敗した、、、。
「ざっとこれくらいあれば十分だな。よし、最後はサリだけなんだが、、普段はこの辺にいると鳴声が聞こえるんだが、、今日はやけに静かだな。」
「ウキィとかか?」
「何言ってんだ?ギギィ!ギィッギッギッギィ!って感じだけど、サイスエイドの方にもいるだろう?聞いたこと無いのか?」
「あ、あぁ、そうなのか、聞いたことなかったな、、。」
クッソ、、ここまで似てんなら鳴声も似てるべきだろう、、
それに凄い恥ずかしい。
「ま、まぁ、そのサリも今日は別の場所にいるんじゃないか?少し探してみるか?」
「あぁ、そうだな。いつもなら、ここか、ここより北の方にいる。まずはっと、北の方に行ってみようか。」
「分かった。案内してくれ。」
「へいへーい」
またまた暫く歩いたが、太陽はやっと傾いてきた。
やはり1日が3日分あるのでは、だとしたら3日に1回か2回しか寝ないようなもんだ。とは思っていたが、このに来てからあまり眠気や腹減りに悩まされていない。もしかしたら、憶測だがこの世界に来て身体機能がこの世界で不自由が無いように調節されているのかもしれん。だとすると、やはり誰かに連れ去られてこの世界に来た。という可能性がある。
もう少し詳しく調べるべきだろう。
「おっかしいなぁ、、ここにもいないのか、、」
「ん?どうした?」
「いや、いつもなら、ここには必ずサリがいたんだが、、何かあったのか、、?」
「どうするんだ?まだ探すか?」
「いや、、今日は一度帰ろう。もうソールも傾いてきてる。明日の店の準備と、鉱石をウィルさんに届けなきゃいけねぇ。」
「そうか、、なら帰ろう。」
ソール、、太陽のことだろう。太陽がソールと呼ばれてるならここで『太陽』という単語を出しても通じないだろう。
しかし太よ、、ソールを時間の基準としてるなら太陽時が適応されてるのか?それとも原始的に太陽の位置で大凡の時間を、、?
「なぁ、シルコーズまで後どの位かかる?」
「そうだなぁ、、ここからだと、一度そこの山を迂回しなければならないから、、2時間程度だろう。」
「そうかありがとう。」
なるほど、、2時間、、、ならもう少し踏み込んで、、
「今何時だ?」
「多分ソールが少し傾いてるから、後6時位だろう。」
「そうか、ゴロクジか、分かった。」
「一瞬発音変になったな?」
後6時、、後とは午後ということだとして、この位傾いて6時、、
てことはやっぱ1日48時間くらいあるのか、、
もう一度夜も更けてきた頃に聞いてみるとでもしようか、、、そこで後26時だとか言われたら笑われる覚悟で1日の時間を聞かなければいけない、、
あいつのバカにしたような笑いを聞くのか、、、、嫌だな、、、。
シルの言ったとおり2時間弱あるいてやっと家についた。
しかし、、あまり体力の疲弊がない。
まぁ、この世界特有の何かを食べたからだろうな、、朝飯に何入れやがった?
「ハァーやっとついたぜ。じゃあ、、っと、まずはウィルさんとこ行くぜ。」
「分かった。どこだ?そのウィルさんとやらは。」
「鍛冶屋教えたろ?ここから東に進んだ中央広場の近く、石像建築のとこだ。」
「あぁ、あのいかにも鍛冶屋って見た目のとこか。」
「そうだ、そのいかにも鍛冶屋のとこ。とりあえず、その後村の警備団とこ行ってサリのことについて聞いてみようぜ。」
「分かった。」
そして家を出、少し歩くと毎度のことながら子どもたちがやってくる。行くときもそうだったが、、、
「シル兄さんおかえり!」「おじさんー!」「おかえりなさい!」
「ハハハハハ!みんな元気だな!今からウィルさんとこ行くんだが、ウィルさんいるよな?」
「おっさんならいるぞー!」「暇してるよ!」「シルさんのこと待ってるよ!」
「そうか!ならすぐ行かなくちゃな!ほらヨーヘー急げ!みんな競争だ!」
「ワーイ!」「急げー!」「あ~待ってよ~!」
「ハァ、、なんであんな元気なんだ、、?」
「遅いぞシルこのヤロー!!」
「痛ってぇ!!」
シルの腹に待ちくたびれたウィルの自慢の飛び蹴りが炸裂する。
「シル兄さんよわーい!」「おっさん大人げないー!」「だいじょーぶ?」
「あぁ!親父!何してんの!シルさんすいません。」
表の喧騒を聞きつけ、自分の父親が蹴り飛ばした相手の元に青年が駆け寄る。
「あ、ヨウヘイさん。噂は聞いてますよ。どうも、僕この人の息子のウェズといいます。」
「あ、あぁ、よろしく。しばらくお世話になるよ。」
「いえいえ、みんな新しい仲間が増えたって大喜びしてますよ。」
「それは嬉しいな。」
しかし、このウェズとやら、、親父に何も似てなくてビックリする。
それどころかシルに似ている、、、こいつら双子の兄弟じゃないのか?
「ま、、まぁ、、ゲホッ、、今日頼まれたもんは持ってきたぜおっさん、、。ゴホッ、、あと、用はないなら明日の準備するから俺は帰るぜ、、早くメニーよこしやがれ。」
「まてまて、そう慌てるな。いくらだ?3メニーか?」
「ふざけんな60,000だ!」
「分かった分かった、ほらよ。」
「毎度あり。さっ、帰るぞヨーヘー。」
「また来てくださいシルさん、ヨウヘイさん。」
「あぁ、じゃあな。」
「おっさんバイバイ!」「じゃあね!」「さようなら~」