2章1節 転生
「、、、っ!!!」
意識が覚醒するとそこは森の中だった。
ただ、"森の中"と言うだけなら良かったのだが。
「ガルルルル、、ガウッ!」
「グウゥ、、グウゥガァッ!」
「ガウガウッ!グルルル、、」
そう、物凄くデカイ犬のような獣達に取り囲まれてもいた。
「クソッ、、状況が理解できねえ、、どこだよ、、ここっ!」
つい先程まで、市街地で、、、まさか捕まったのか?だとしたら、、ここはどこかの研究施設だろうか。
「チッ、研究施設だといいんだが、、、こいつらは何だ?」
仮に研究施設だとしたら、見る限り広大な土地を必要としてる上に、この森はとても人工的に作られたとは思えない。
そして周りの獣達の生臭さが、ここは研究施設ではないという思考を裏付ける。
だからといって異世界に来たとも信じがたいが、しかしそれならば今までの事と辻褄が合う。
しかし、そうだと考えたくもない。
「とりあえず、、倒すべきなのか?まだ弾もあるし、、、、よし、ナイフもある。」
そういい、護身ナイフの確認と、背負っていた短機関銃を構える。
弾薬は、あちらの世界ではまだ使っていなかった。
いくらでかくとも、体は鋼鉄でできているわけでもないし、実は弾丸はすべて跳ね返す、というチート性能も無いだろう。
「効くよな?頼むぜ、信じてるからな、、っ!」
その一言を言い終える前にトリガーを引く。
リズミカルな発砲音と、耳を劈くような獣の鳴き声が森の中に響き渡る。
それと同時に、撃たれた獣は脳天から、滝のように血を流しその場に倒れ、動かなくなる。
これはこの獣には弾丸は通用する、ということも表す。
「よっしゃあぁ!あと2体!これは、、勝てる!」
しかしその時、自分が消音器を付けてない事を思い出す。
発砲音か、または仲間の鳴き声か、どちらかが周りに居た獣の仲間をおびき寄せる。
月明かりに照らされる森の影から、赤く光る、夥しい数の双眸が、こちらを睨みつける。
「あぁ、、これはマズイな。今回に限って爆薬を持ってきてねえな。よし、、そうと決まれば、、逃げるか!」
銃火器を背中にやり、持ち慣れた、大きめのナイフを片手に獣達目掛けて閃光手榴弾を投げつける。
辺り一帯を先程の鳴き声よりも大きな音と、目も眩む程の光が包み込む。
これは獣達にも有効で、殆どが頭を垂れる。
その隙を逃さずに、一気に走りこむ。
奴らがどの位の間怯んでいるのか、どの位の速度なのか、一噛みでどの位の殺傷力があるのかわからない。
だから振り向かずに走った。奴らが回復するまで数十秒あったが、それがとてつもなく短く感じた。
背後から木々を薙ぎ倒し、悲鳴のような声を上げながら追いかけてくる。
追いつかれると死ぬ。追いつかれると死ぬ。追いつかれると死ぬ。追いつかれると死ぬ。
そう自分に言い聞かせ、道なき道を駆け抜ける。
その時、今まで木と草のみだった視界が少しづつ変わる、奥のほうが開けている。
そこだ、そこへ目掛けて走れば助かる。
何がそう思ったのかはわからない。その自信がどこから来てるのかもわからない。
ただ、自分を信じ走り続けて、その開けた所にでると、、、
そこには地面がなく、ただ下に暗黒が広がる、渓谷だった。
「マズイッ、、!!うわっうわあああああああああああああ!!!」
見た目と相反して情けない声が出る。
突然体に襲いかかる浮遊感と、落下時に重さによって体が反転し、釣られて世界も反転する。
頭から下に落下している時、一瞬自分が居た森が目に入る。
そこには数え切れない程の獣達が、ついさっき相手にしてた犬型以外の獣もいる。
なるほど、どちらにせよこっちに向かって走ってきたのが間違いだったのか。
向こうの世界で死に、恐らくこちらの世界でももう直死ぬだろう。そうなったらどうなるのか、それも気になるな。
せめて死ぬのなら落下死ではなく、軍人として死にたかったものだ。
―しかし実際はその考えの通り死ぬことはなく、その代わり下をながれている川に体を叩きつけられた。