3章13節 買い物2
お久しぶりです
少し歩くと、とても良いにおいがしてきた。
肉の焼けたようなにおいが一際目立っており、それはどうやらすぐそこの赤い屋根の店からしているようだった。
「おぉ・・久々にがっつりとしたものを食べれるのか・・・なんだかんだで例の酒場では軽くつまんだくらいだったしなぁ。」
「来る途中はシルの釣りが下手すぎて魚も十分に食えんかったしな。」
「う、うるせぇな!俺は釣りより狩りのほうが得意なんだよ!」
「いやぁ、お二人さん、やっぱり仲が良いですねぇ!羨ましい限りです!」
「そ・・そりゃぁ!俺とヨウヘイの仲だからな!ユニちゃんにも仲良い子はいるだろう?」
「うーん。私にその話題が来るとは思いませんでした。」
ユニは少しいいですか、と照れくさそうに、しかし思い出を探るような顔つきで語り始めた。
「私、産まれも育ちも南の奥にある、名前もない港町でした。小さいですけど、活気もあふれてて、お魚もおいしいんですよ!そこで魔術学校へ通ってたんです。私の一番の友達も、同じ学校の子で、アリスっていうんです。金髪で青い瞳の、すっごい可愛い子なんですけど、その子いきなり遠くへ行くって言っていなくなっちゃったんです。私もそのころは幼かったんで、どこへ行ったか、何で行ったのかなんて知らなかったですし、ここまで来たの正直それを知ることが目的でした。」
「へぇ~ユニちゃんもすごい過去があるんだねぇ。まぁ、今も十分幼いけどね。」
この二人の会話を余所に、ヨウヘイの頭の中ではある言葉が繰り返されていた。
「アリス」「金髪で青い瞳」
偶然だろうか。偶然にしては出来すぎている。
しかし、数日前に記憶として蘇った少女アリスと、ユニの知るアリスでは、見た目も状況も酷似している。
いきなり頬の傷が痛みだした。
その事を、アリスを思い出すな。記憶の奥に閉じ込めておけ、と言わんばかりの激痛が走る。
「お、おいヨウヘイ?大丈夫か?」
「・・・・っ!」
「うわわ!!どうしたいきなり!俺だシルだ!わかったからその剣をしまえ!」
ぼんやりとしてた意識が戻ると、自分のナイフをシルに向けていた。
横ではユニが呆然として立ち尽くしている。
「あ・・・すまん。ぼーっとしてた。えーーっと・・・これは昔の癖だ。悪いなシル。」
「あっ、あぁ。大丈夫だ。何か悩むことでもあったのか?」
「いや。関係ない。すまない俺のせいで空気を壊してしまった。忘れてくれ。さぁ・・腹がすいたな!店の前で立っていてもしょうがない。早く入るぞ。」
何か言いた気な二人を連れ、ヨウヘイは赤い屋根の料理店の中へ足を踏み入れていった。
謎の少女アリスとヨウヘイには一体どんな関係が・・・・っ!!?
※メタ注意
(自分の脳内でのイメージがちょくちょく変わるので、アリスに関して以前と矛盾する設定が登場するかもしれません)