3章8節 魔剣
「いくぞ!シル!」
「おう!ヨウヘイ!そっちだ!」
二人で一斉に団長めがけ飛び掛かる。
左右からの連携攻撃に、たとえ団長でも左右からの同時攻撃、さらに後ろは障害物。ここまで来るとどちらかは受けるだろう。
二人ともそう確信したはずだ。
しかしその直後、団長の持つ巨剣が二つに分かれ
ギャイイインッ!!!
と大きな音をたて両方からの攻撃を動じもせず防いだ。
その衝撃でシルは遠くへ吹っ飛び、ヨウヘイはその場に倒れこむ。
「おいおいマジですかい団長さんよ・・」
「うげっ!!痛ってぇ!なんだよあれ!」
「どうした!!そんなものか!我がいつ、この剣は二本にはならないと言った!」
そう言い団長は何もなかったかのように、また姿勢を整え攻撃を防ぐ準備をする。
すると後ろから雄たけびが聞こえ、振り向くとシルが走ってきていた。
「ウオオオオオオオ!!おりゃああ!!!」
渾身の力で団長に切りかかるが、やはり団長はいとも簡単にそれを振り払う。
そしてその隙を見てヨウヘイも、やや不意打ち気味に切りかかる。
その瞬間
―――刀身に白光する文字が浮かび上がったように感じた。
しかし、それに気を取られ、こちらも一瞬の隙を見せてしまい、また振り払われる。
ヨウヘイも遠くへ吹き飛ばされた。
「グハッ!!・・・クッ・・痛ってぇ・・・」
地面に背中から落ち、鈍い痛みが走る。
思い出したかのように、刀身を見る。
しかし何も変化はない。いつも通り黒く、刃こぼれ一つない、とても大きいナイフ・・・・いや、大きすぎる。
明らかに大きくなっている。
まさか・・・いや気のせいだろう。
もう一度気を取り直し、態勢を立て直す。
そしてシルとアイコンタクトを取り、また走り出す。
「いくら来ても無駄だぁっ!!本気でこい!!」
そのセリフを聞き、二人が手に力を込め、最初と同じように左右から切りかかる。
同じでは効かず、これは防がれる。
そう思われた。が
―--キイイィィィィン!!
何かが高く舞い上がった。
高い天井にぶら下がるシャンデリアの光を反射させながら、その舞い上がった何かは地面へと突き刺さった。
「なっ・・・!!?なんだと!!!!」
「くらえっ・・・!!!ハアアアアアア!!!!」
叫びながら、自分の剣を団長めがけて振り下ろす・・・・わけもなくその剣を胸元で寸止めする。
「団長。これで、あなた死にましたよ。どうです?これでいいでしょう。」
「クッ・・・・我の負けだ。お前たちの入団を認めよう・・・・・強いのだな。驚いた。」
「いや、今は二人いたからというだけです。一人だとこっちが負けてた。」
「なるほどな・・・第一隊騎士と言ったか。そこには曲者集いだが、頑張ってくれ。それと、三日後、現王様と一度会ってもらいたい。私からの照会としてだ。」
「王様ですか・・俺はそれにふさわしい衣類は持ってないものですがね。」
「服はこちらで用意させてもらう。あとから二人共騎士団部屋へ来てくれ、大きさをはかろう。」
「わかりました。では後程。」
「あぁ。」
軽い会話をし、シルとキックスの元へ戻る。
どうやら団長も少し手加減をしてたらしく、お互い目立った傷はなかった。
「シルヘイちゃあん!大丈夫だったかしら・・・」
「シルヘイて何ですか。あぁ、大丈夫でしたよ。団長の剣を折った。」
「え、あの剣を折ったの?ディアモッドの剣よ?」
「俺のはローンズ、、デライト?だかって」
「ローズンデライト?!あなたその剣・・・魔剣ね!」
「え・・は?」
「あらそんなことも知らないの?ローズンデライトってのはね、魔界でしか取れないのよ。そして、そこでとれる鉱石の中でも一番硬いの。さらに、その剣には意があって、それを加工することで、人と対話できるようになるの。声が聞こえなかったかしら?」
「声?いや・・・白く光った文字ならあったが・・」
「あら、本当に声が聞こえなかったのね、文字が光ったってことは、余程魔力のない人間が、声に気付かなかった人間ってことよ。」
「は・・はぁ・・?」
「よ・う・す・る・に、その剣は使用者の才能によって強さや切れ味とかが変わるのよ。」
「なんか大きくなったが?」
「ならあなたの心を読み取って大きくなったのね。よかったじゃない。剣なら、使えるか使えないかは剣、というかローズンデライト自身が決めることなの。あなた選ばれてるわ。」
「お・・おう?」
「あーもう!あなたはその剣を使うにふさわしいってことよ!」
「ほう。そうですか。」
「冷たいわねぇ。ローズンデライトに認められる人間なんてほんの一握りよ。」
「へぇ。」
「もうっ。あ、ほらぁ、そんなこんなしてるうち、着いたわよ。あなたたちのお家。寮なんだけどね。ただ、団長様のご好意で二人の部屋を隣同士にって。」
「あぁ、このうるさい奴と同じ部屋じゃなくてよかったよ。」
「えぇ?!そんなに俺うるさいかなぁ・・・」
「そして、第一隊騎士には一人お付き役がいるんだけど・・それが魔法隊から一人なんだけど・・・シルちゃんごめんね?」
「え?なんで俺に謝るんすか。怖いっす」
「ヨウちゃんには、ユニさんが付きたいって。」
「俺は構わないが。」
「シルちゃん?ゴメンネ?」
「なんで棒読みなんですか怖いですもう嫌です。」
「まぁ、見たらわかるわ。」
ラスボスっぽい団長は弱かったっぽい
次回はフラグの立ちそうなユニちゃんとヨウヘイのイチャラブ!?ドキドキデート()回になる予定です。
ヨウヘイの正体がついに・・・!!?