1章1節 戦闘前
窓の外を見ると広大で青すぎる、雲ひとつない空が広がっている。
俺の、晴れ渡ることの無い心に嫌味を言うかのように。
この場所はヘリコプターの中と言えど、プロペラ音はあまりしない。よって話しかけられるとすぐに気づく と思っていたのだが
「―い、、おい!聞こえてるか?」
「っ、、、、あ、あぁ悪い。何のようだ?」
「いやぁ、ずっと空ばかり見てるから、お前を待つ人の事を思っているのか?とか面白がってやろうと思ってただけだ。」
「生憎だが、俺を待つような人はいないさ、両親は物心が付く前に死んでるよ。ガキの頃から格闘術なり武道なりやらされてたから愛だの恋だのする暇もなかったもんでな。」
「そうか、、悪いな、不謹慎だった。」
「なに、気にすることでもないだろう。もう慣れたさ。」
「ならいいのだがな。そうだ名前を聞いていなかったな、俺はハリスだ、よろしく」
「レオンだ、まぁ、短い間だろうが、お互い死なずに頑張ろうぜ。」
死なずに、、か。自分で言っておいてだが、ここで生きて帰れる確率のほうが低いだろう。
どちらかが死んでもおかしくない。ここに居る全員が命を落とすこともあり得る。
余程の戦闘狂じゃない限り、みな生きて故郷の土を踏みたいと、愛する者と抱き合いたいと思っているだろう。
さらに、この後行く場所は旧市街地、今は廃墟となった土地だ。
おそらく、市街戦を経験している者は少ないだろう。
演習で何度か訓練はしたが、俺は市街地はあまり好まない、あれ程高低差のある動きづらい土地では、迂闊に動けば狙撃兵に狙われ、隠れても自分達の行動が鈍くなる。
そして敵には優秀な狙撃兵が居ると来たもんだ。
明らかに自軍が不利なのは間違いない。
「ところでレオン、お前の顔を見る限り、アジア系の血も混じってるだろ?知り合いにいるんだ、日米のハーフが。そいつにそっくりの顔付きをしてるよ」
「あぁ、父が軍人、母はある日本企業の娘さ。父は想像通り戦死、母は病死だよ。だから父の知り合いのジャパニーズに育ててもらってたよ。」
「そうか!やはり日米ハーフか。父は軍人で、お前もそれを引き継いでこの依頼を受けたのか?」
「あぁ、それに言ったろ?小さいころから格闘ばかり、日本にいた頃もJSDFに就いてたよ。まぁ、父が軍人じゃなきゃ祖父の企業を引き継いでただろうな。」
「ハハハッ、まぁそれなら安定してるし安全だし、いいんじゃないか?」
「今更そんな事言っても遅いだろうな、まぁ、もうすぐ目的地上空だ。下まで降りて、地上部隊との合流、ここまで行けばあとは下のやつらに任せて俺たちは後方支援していればいいだろう、ほら、行くぞ」
訓練でしたとはいえ、降下はやはりやりたくない気持ちが勝が、とりあえずの目標は、生きて帰る事、とでもしておこう。