2章11節 襲撃
「シッシル!無事だったのか!」
「あ、あぁなんとかな・・ヨウヘイのおかげで、な」
「あ・・あんたあのバケモノを倒したのか?」
「あぁ、危うく死ぬ所だったぜ」
「なんと・・・あの大型魔族を倒すとは・・・もしや騎士団の回し者か?」
「残念だが、俺は騎士団なんて大層な肩書はないね。ただの迷い人さ」
「ヒューウかっこいいねぇヨウヘイ、今じゃ俺の家の居候のくせにな」
「とは言っても結局は迷ってここに来たわけだろう」
「だけど居候だ」
「あぁ・・・もうそれでいいよ」
一段落して、村で、今回の戦闘での損害と死亡者がいないことを確認した。
どうやら、この村には何かある度、古くから伝わる数冊の本に歴史としてまとめる文化があるらしく、それに新しく書き足すから、状況を教えてくれ、と村長に頼まれおよそ数時間の話し合いとなった。
「ふむ。なるほど・・な。となると、お主のその・・・しゅりゅうだん?とかいう投擲道具で倒した、とな?」
「あぁ、ざっとそんな感じだな。残念に、今はその投擲道具はもう無くなったんだがな。」
「そうか・・見せてくれと頼もうとしていたのじゃが・・・まぁ仕方ないの」
「まぁ・・・・・・ん?おい、村長、誰か走ってくるぞ」
ふと窓の外を見ると、ここでは珍しい黒髪の少年が走ってくる。
あぁ、いつもの3人組の1人だ。
「あぁ、マクじゃの。」
「マク・・・とアリスと、あといつも一緒に居る・・・のはシルクか。」
「そうじゃな。何かあったのじゃろうか。あんなに慌てて・・」
ドンドンドンドン!と強く木のドアを叩く音が聞こえ、黒髪の少年、マクが大急ぎでやってくる。
「た・・大変だ!大変なんだ!えっと・・とにかく!2人とも来てくれ!村長もヨウヘイさんも!」
「あ、あぁ。何があったんだ?」
「襲われたんだ!王都に・・騎士団の元へ行った衛兵の人たちが!」
「襲われた?何に?」
「――まっ魔族だよ!魔族に襲われたんだ!」
村長とマクの3人で大急ぎで村の中央の広場へ行くと、村人達ほぼ全員が鎧姿の怪我人を囲う形で集まっていた。
「おい、襲われたって・・どうなったんだ?」
「ガハッ・・ゲホッゲホッ・・・魔族だ・・・魔族に襲われたっ・・!」
「他の奴らは?」
「死んだよ・・・俺だけ・・腹を貫かれて・・・意識を失って・・・・回復した時にはもう・・・」
どうやらここで初めて自分以外全滅と告げたらしく、周りから女性が家族や意中の人と思われる名を口にし次々と泣き始める。
中には崩れ落ちる者もいた。
「そうか・・どんな奴らだったか、思い出せるか?」
「複数だ・・・それも・・殆どが人型魔族だ・・・」
「ひ・・・人型じゃと?!なんと・・・・本格的に魔族の侵攻が始まろうというのか・・・!!」
「お・・おい、騎士団の奴らも一緒だったんだろう?それも・・やられたのか?」
「あぁ・・・みんな・・・みんな死んだよ・・・!手も足も出なかった・・・」
「そうか。他に何かわかることは?何か思い出せるか?」
「いや・・・すまない・・・これ以上は・・・・・ただ、アレは見ただけでわかる・・・アイツら・・本気の俺たちに対して赤ん坊の世話をするかの様に・・・それで歯がたたなかった・・・!」
その言葉を聞き辺りが静まり返る。
この村屈指の衛兵達と、王都の強者の集いである騎士団の数名達でも、あの人型には毛ほども及ばぬというのか。
恐らく、この場に居る誰もが、諦めただろう。
しかし
「――― 分かった、俺に任せろ。」
「ハァ?!何言ってんだよ!ミノタウロス倒せたからっても人型に叶うわけないだろ!」
「シル、お前も見ただろう?あの武器を。たとえ奴らが強かろうが見たこと無い武器には対処は難しい。それにこの世界には魔法もある。魔法とこの武器、2つを融合させると、どうなると思う?」
「おい何おかしなこと言ってるんだ?そもそもソレ自体魔法だし、この世界?」
「言葉の綾さ、それより、これは魔法じゃない。なんなら、分解してみるか?」
「いや・・別に今はやらなくてもいいが・・で、でも!それよりどうするんだよ・・?」
「王都に行って、騎士団に入る。」
「ヨウヘイ、元から思ってたが、お前、やっぱバカだろ。騎士団なんか入れるわけねぇ」
「なんでだ?」
「なんでって・・・そりゃ剣技も才能もなけりゃ・・」
「試してみなきゃわからんだろ?」
「・・・・・・ハァ。わかったよ、俺の負けだ。いいぜ、着いてくよ。お前1人じゃ心配だしな。」
「あぁ、助かるぜ。シル。」
「ふむ、となると、お主に持たせる物も用意しなきゃ、じゃな。」
「おうヨウヘイよ!俺っちがずっと打ち続けて、最近完成したディアモッドの剣だ。騎士団に入るなら、使うことになるだろうし、王都の術師に頼めば、剣に術式を編んでくれるはずだ。」
「あ・・あぁ・・・助かる」
「ほら、シルちゃんヨウヘイちゃん。王都まで長い道だからさ、私お弁当作っておくからねぇ。」
「あ・・あぁ・・・」
「ヨウヘイさん。一度しかお話出来ませんでしたが、こちらを授けます。神の御加護がありますように・・・」
「あ・・・・・」
「おじさん頑張れよ!」「兄ちゃん・・・父さんの仇とってきてね・・!」「シルさんヨウヘイさん、絶対に悪い人たちやっつけてきてね!」
「あぁ、任せとけ!シル兄ちゃん頑張るからなぁ!もちろん、ヨウヘイもな」
「あ・・・あぁ・・」
その後も、夫の仇を~、息子の死を~などと家族を失った人や、商売人からの好意でたくさんの物をもらったが・・・こうも人にたかられるのは慣れていない所為か、殆ど何も喋れなかった。
しかし村のみんなが俺とシルを信じている。
その気持に答えるべく、明日の出発へ備える。
魔族を倒し、彼らの恨みを晴らすために。
なんか色々と時間開きましたが、やっと再開出来そうですw
そしてもうそろそろ2章も終わり、3章の王都編へ突入ですね
頭の中では、これを書き始める前までは王都へ行って魔族倒して終わり
ってのだったんですけど、今じゃ色々と妄想が膨らみ、いずれか
タイトル詐欺だ!
などと言われるのではないかと心配になるような展開に進みそうな予感が、、
まぁ、しばらくはそんな事も言われず、ヨウヘイが育ってくのかな、と思いますw
ちなみに、忘れないで下さいねw
ヨウヘイは、傭兵であって本名レオンですよ