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2章9節 魔族

「ようし、もう少しで山につくが、奴らのキャンプがあるのは、人類側の山の麓と聞いた。そこまで大きいキャンプでは無いから、この距離ではまだ見つからないと思う。ここから、2つに分かれて、お互い迂回しながら挟み込み、という作戦だが、これでいいか?」

「いいぜ隊長!」「分かった!」「なら俺らはこっちへ行くぜ!」


今この部隊をまとめているのは、村の衛兵長だ。サム、というらしい。

異世界と言えどアメリカ人らしい名前から変わった名前の者までいるらしいが、いつもシルの所に来る子供3人組の女の子がアリス、と言うのは懐かしい響きで少し驚いた。

サムもアメリカではそう珍しくは無いが・・


「おいヨウヘイ、俺とお前と、後村の青年で右からだそうだ。ウィルさんと、サムと、残りの衛兵で逆からだ。」

「強そうなのが向こうに集まってるな。」

「知らないのか?村の中では一番強いんじゃないかって言われてるんだぜ、ヨウヘイ。」

「待て、俺がか?」

「多分そのカービンと体、その顔の傷のおかげだろう。」

「あぁ、そうか。」


顔の傷か、そういや左頬を弾丸が掠め大きな傷を負った事があったが・・頭を撃たれた傷や、撃たれる数分前に割れたガラスで切った手のひらの傷も無かった事から、直前に負った傷は消えてこの世界に来たのだろうか。

しかし・・顔の傷の事は忘れていたな。

―――その時の事を思い出したくなかったのだろうか。


「おい、ヨウヘイ!何暗い顔してるんだ?」

「あ、?あぁ、すまない、少し考えごとをしていた。」

「そうか、多分もうすぐ戦うんだから、その時までには気をしっかりと、引き締めてくれよ」

「当たり前だ。任せろ」


「よぉし、お前ら!もうすぐ行くぞ。今はまだ、明るい、魔族は夜行性だから、明るい内に戦闘を始め、すぐに終わらせるぞ!幸い、人類側に居ることで、洞窟を掘ってたとしても、魔族側に戻るには半日はかかる。すぐに襲い、すぐに終わる。奇襲作戦だ!行くぞ!」

「「ウオォォ!」」



そう言って二手に分かれ、迂回して敵陣営があると思われる所を目指す。

しかし、遮蔽物も無いこの見渡せる土地でカモフラージュもせずに近づいてバレないものなのか、、

そう思いつつも、敵陣営へと足を進める。




「おい、アニキ。何か、こっちに来まっせ。恐らく、この感覚は人類系じゃないですか。」

「あぁ・・だがすぐそこの村の者どもだろう・・・・ん?何か飛んできて・・」

プシャアッ、、と魔族特有の緑の鮮血が辺りに撒き散らされる。

「ウギャッギャアアアアア!!」

知能の無い、力で従わせてるオークの一体が頭から血を流して倒れる。

「あっアニキ!!何がどうなって・・・・」

「し・・・しるか!感じる気では村の兵ども位のやつらしか・・・」

そしてまた、今度はゴブリンの頭から血が吹き出す。

とても生臭く、グロテスクな濃い緑の血液。

それが近くの洞窟の壁に、魔族に、知能ある2匹に飛びかかる。

「ウギャギャガアアアア!!」

そう叫び、2匹目の魔族が絶命する。

「アニキ!やばいですよ!!」

「待て!慌てるな!考えろ・・」

「そんな暇ないです!アニキッ・・・・・・」

プッシャアッっと血をまき散らし、2匹と1体目の魔族が絶命する。



「おっ、おい!!ヨウヘイ!そ・・・それがカービンって奴か?!」

「あぁ、案外、魔族も弱いんだな。」

「そんな・・・あのミノタウロス・・・あれをいとも簡単に倒すなんて・・」

「すごいだろ?」

「やばいな・・・」


そこに居る者達には、そのミノタウロスには知能があったその小隊の隊長格だとも知らずに。呆気無く最後を迎えた1体の魔族を呆然と見つめる。

その時、スコープを除いていた一人の青年が驚いたように叫びだした。


「おい・・・ヨウヘイさんシルさん・・・あいつ、あのもう一体のミノタウロスの周り・・・見てみろよ!あいつ魔法使える!まずい!まずいよ!」

「何?魔法?そいつも撃てばいいさ。」


そういいヨウヘイは引き金を引き、銃を放つ。

しかし、そのミノタウロスの周りに浮かび上がる文字に跳ね返され、何かの力により威力が増した流れ弾が近くのゴブリンの首を飛ばす。


「やっぱり、、あいつ魔力持ちだ!」

「魔力持ち?」

「そうだ!あいつら・・・・仲間を呼び寄せるつもりか?!」

「クソ!!攻めるぞ!詠唱破棄だ!浮かび上がる文字は剣を防ぐ事は出来ないはずだ!行け!!早く!!行け!!!」

「「ウオオオオォォォォォォ!!!!」」


シルの叫び声と共に魔法の詠唱を始めたミノタウロスをめがけ、両側から一気に剣を持った兵士が攻めこむ。

どうやら余計な事をしてしまったらしい。

しかし、魔法を使えるのは幹部や上の奴らと聞いていたはずだ・・・


「そうか分かった。奴ら偵察隊長のミノタウロスだ!なんで今まで気付かなかったんだ!ヨウヘイ!マズイぞ!あれより上の奴らなら、転移魔法を使えたはずだ!すぐに大規模進軍が来てもおかしくない!遠距離会話が出来るなら・・・もしかしたらヨウヘイの事も伝わってるかもしれない!」

「それがマズイのか?俺にはそれよりあいつが魔法つかえる位上だって事のほうがマズイと思うぜ。」

「それもだが、それは仕方ない。いや、俺らの目的はあくまで、援軍の足止めだ。ヤツを倒さなくてもいい。あのミノタウロスは、聞く分には身体能力はあるも、魔力が少ないから、魔法は1回か2回、詠唱中は動けない、という欠点がある、らしい。それが本当なら、今は好機だ。詠唱にも時間がかかるから今の内に詠唱破棄出来るように、近接攻撃であの手の中心にある球体を切りつければ詠唱が破棄される、俺らで周りを倒す、ヨウヘイ、お前小さい剣持ってたよな?それで・・頼めるか?」

「こうなったのも俺の所為だ。任せとけ。」

「おいお前らぁ!行け!突っ込め!道を、道を作るんだ!!」

「「「ワアアアアアアアァァァァァ!!!」」」

「「「ウギャアアアアアアアアア!!!!!!」」」


むさ苦しい男どもの叫び声と、それに釣られ、ここぞとばかりに叫びだしたオークやゴブリン。

しかしこっちは衛兵数人とは言えど他の人も腕に自慢がある者ばかり。

そう簡単にやられるはずはなく、奥から次々と起き上がる魔族を少人数で斬り合っている。

ヨウヘイも、自分の腰にある大型ナイフを持ち、皆の作ったチャンスが無駄にならないように、奴の意識が魔法に向かっている隙に、手元のスフィアをめがけ、斬りかかる。バギイイン!という、何かが弾ける音が聞こえる。

やったか!と思った刹那、自分が弾かれ、地面に叩きつけられる感覚を味わう。

何事かと、すぐに起き上がり、顔を上げると、

―――唯でさえ大きいミノタウロスが、周りの魔族を吸収しながら巨大化していた。


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