Betrayal 第四話
Betrayal生活15日目。
「おはよう龍也。」「おはよう。」「結局、昨日帰ってきたのは残り4つのうち3つだけだったな。あのあとニュースとかで出てたか?」「いや、今のところない。」「となると、まだ計画を行っていないか、あるいは行ったがまだ帰ってないだけか。」「あり得るとしたら前者だな。行って帰ってこない理由が分からん。」「俺もそう思う。」「剛、メンバーの様子はどうだ。」「流星は恨みを晴らしてすっきりしている様子だ。まあ、完全に恨みが消えたようではないが。残りのメンバーは、いつも通りかな。」「なら良かった。102班に血液恐怖症のやつがいたらしくてな。刀についた血を見てパニックになったらしい。幸い誰にも見られていないらしいが。多分次もそうなるだろう。なったらなったでBetrayalから切り離すだけだけどな。お前の班も、何かあったらいち早く知らせてくれ。」「わかった。それじゃ、朝飯食ったらまた訓練だ。」「ああ、わかってる。」
Betrayal生活20日目。
「明日が2回目の計画実行日か。」「龍也、明日の標的は?」「そこはリーダーの俺に聞かないか?沙織。」「いや、だって龍也が決めてるんでしょ?だったら龍也に聞いた方が早いでしょ!」「くっ…。なら俺のいる意味は…。」「明日の標的は浩太のだ。」「俺か。案外早かったな。」「覚悟は出来てるな?」「ああいつでも来い!って感じだ。」「って感じね。フフッ。」「そういえば龍也、301班はまだ帰らないのか?」「ああ。もう出発してから6日だ。ニュースになっていないところからして、逃げたか。」「確か301班って、同じ部屋にしてくれっていうメンバー同士がいた班だよな?だったら、団結力が高そうな班が逃げようとなんてするかな?」「団結力が高そうで、実は仲がすごく悪かったりして。」「それあるかもね、一輝。」「そんな単純なことならいいが。」「浩太はどんな裏切りを?」「俺は父親に裏切られた。父親の会社でもめごとがあったらしいんだ。最初は俺達には関係ないって言ってたんだけど、数日後になってその相手がうちへ来てな。しかも、俺の父親も一緒にな。それで、もめごとで不利になった俺の父親は、俺と俺の母親を殺そうとしたんだ。次の日に、久しぶりに家族で出掛けようとしていたのに。隣の家の人が警察に通報してくれたから、誰も殺されずに済んだけど。だけど、父親は卑怯なやつだった。俺達から家を奪い、金を奪っていった。それがきっかけで母親は俺を残して自殺。行き場をなくした俺は施設に預けられたのち、ここにたどり着いた。」「裏切られたからっていうよりは、ただ単に恨んでるだけなんだね。」「俺からすべてを奪ったあいつを、俺は殺したい。」「その気持ち、忘れるなよ、浩太。お前は傷つけられたんだ。裏切られたんだ。悪いのは誰だ?あいつらだ。なら殺せ。」「ああ。そのつもりだ。」「さて、明日は2回目の計画実行日だ。早く寝よう。」「リーダーってさ、その言葉好きだよね?早く寝よう、って。あ、別に早く寝るのが嫌とかじゃなくてさ。なんというか、よく聞くな~って思って。」「ん~、まあ、早く寝るのは大切だからな。ハッハッハッ!」「そうだよね!ハハッ!」剛の笑い顔の奥に、暗い過去があるなんて、誰も思う余地もなかった。
Betrayal生活21日目。
目的の標的がいる福島県に到着した302班。計画を実行するために浩太の父親がいる部屋へ入る浩太。「よし、行ってくる。」「気をつけてね、浩太。」家のドアを開ける。奥へ入ると、パソコンをいじる浩太の父親の姿があった。「…お父さん…。」「んぁ?誰だ?勝手に家に入って…。お、お前…。…浩太なのか?」「久しぶり、お父さん。いや、お父さんなんて呼ばれる資格、お前にはないか。」「今さら何をしに来たんだ?浩太。話なら解決したはず…。」「解決しただと?ふざけるなよ!俺達から家も金も奪って、挙げ句の果てに俺からお母さんさえ奪っていった!それのどこが解決したってんだ!?ああ!?」「家も金も、そっちがなんとかするって…!」「それはそっちが、この家は自分のだからお前達は自分達で見つけろなんて言ったからだろ!?そのせいで、俺の人生はすべて狂ったんだ!だから殺しに来た!」刀を持つ浩太。「な、何だよ、それ。まさか、本気で殺そうとしてんのか?親を?」「お前なんか親でもなんでもない!偉そうに親なんていう言葉使うな!!」刀を父親に突き刺そうとした瞬間、父親も包丁を持ち出した。「フン。そっちがその気なら、こっちだって、殺してやるよ。」「ちっ。…聞こえるか?増援頼む。」すると玄関から龍也と剛が入ってくる。手には刀。「な、なんだお前達。まさか、人を殺すグループか何かか?」「少し違うな。人を裏切り、傷つけた奴を殺すグループだ。」「お、お前達の方が、狂ってる。たかがちょっとの問題で、殺すだなんて。」「確かに狂ってるかもな。だがこうしたのは紛れもなくお前だ。」「たかがかどうか、あの世でじっくり考えるんだな!」「や、やめ…!」やめてと言い終わる前に、浩太は父親の首を斬った。「この刀、よく斬れる。」「増援は必要なかったか。」「念のためだ。助かった。」「なら、いいけど。」「なかなかの演技だったな、浩太。熱がこもってた。」「演技なんかじゃない。俺の本心そのものだ。」「さ、周りに見つからないうちに戻るぞ。」「おう。」
2人目の標的を殺した302班。しかし、Betrayalへ帰る途中、意外な人物を目撃する。「いや~、うちの班はスムーズに進むな。他の班は色々大変らしいぞ。」「まあ、他の班が俺達に害を与えるわけでもないし、別にいいんじゃない?」「いや、そうだけど。少しは他の班の心配とか…。」「リーダー。俺達は班として行動してるんだ。関係ない奴らの心配なんかしてる暇はない。」「光彦。」「まあまあ、そう言わずに少しは心配してあげてもいいじゃん。」「拓実も拓実だ。そもそも俺達は何のためにここへ来たんだ?まあ、言っても無駄か。」返す言葉がないみんな。「さあさあ、こんな悪い空気はさっさと…。」「ねえ龍也、あれ。」ふと優斗が顔をあげると、そこには301班のメンバーの姿が。「あれは、301班か?」「ここ福島県だよね?」「ああ。」「ちょっと追いかけてみようよ。」「待て、一輝。」「どうしてよ。見失っちゃうよ?」「あいつらがここにいるのはおかしい。あいつらの班に標的が福島県にいるメンバーなんていない。」「じゃあ何のために?」「分からない。追いかけて直接聞きたいところだが、勝手な行動は厳禁。Betrayalへ帰ることが最優先だ。」「うん…。まあ仕方ないけど。」「達郎じいさんの出番かな、こりゃ。」
「なんと。福島県に301班が。」「はい。」「メンバー全員がいたのか?」「いや、見たのはリーダーの石原広茂と香川美紀だ。」「一体何のために。ここへは帰ってこないで秘密の調査か?」「とにかく、今は情報が少なすぎる。もう少し、情報を集めてみよう。と言いたいところだが、俺らは一週間後にまた計画がある。…達郎じいさん、頼めるか?」「ああ、任せとけ。俺は計画に参加してないからな。時間はたくさんある。龍也達は計画の方に集中しろ。」「ありがとう、達郎じいさん。」「次の標的は?リーダー。」「え、ああ済まん、まだ知らない。」「なぁんだ。龍也、次の標的は?」「くっ…結局俺は必要ないのか…。」「次の標的は里奈のだ。」「私?案外先の方だったのね。」「里奈はどんな裏切りをされたの?」「私は友達に裏切られた。中学生の頃から仲が良くて、同じ高校に入学したの。だけど、途中から話してくれなくなったり一緒に遊んでくれなくなっちゃって。勇気を出して聞いてみたら、私なんて友達じゃない、って。私何もしてないのに、いきなり友達じゃないなんて。ホント悲しかった。信頼してたのに。」「そうなんだ。嫌な高校生活を送ったんだね。俺と一輝の一生に一度の高校生活も、裏切りによって台無しになったよ。」「裏切りなんて、何が理由でするんだろうね。ホントウザいよね。」「みんな、今日も疲れたし、先に風呂入ってこい。それから夕飯だ。」「やったー!じゃあ俺一番!」「待ってよ拓実!置いてかないでー!」
―普通に生きている人間が、また一人、復讐にといつかれた者達に、…殺された。―