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Betrayal 第一話

 Betrayal


―裏切り―

それは他人を信じられなくなった者の逃げ道。

―裏切り―

それは自分を信じられなくなった者の逃げ道。


これは、そんな卑劣な行為を受け、傷つき、悲しみ、苦しみぬいた者達の、壮絶なストーリーである。


 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「優斗~。そろそろ寝たら?明日は早いんだし。」「うん。もうそろそろ寝るよ。ねえ母さん、明日の大学入試大丈夫かな?当然受かりたいけど、もし受からなかったら父さん…。何て言うかな?」「大丈夫よ。あえて高いとこ目指してるんだし、失敗しても誰も責めないわ。もし父さんが何か言った時は、私が何とかするから。」「ありがと、母さん。」「早く寝なさいよ~。明日試験中に寝ちゃうわよ~。」「うん。おやすみ。」


「おはよう優斗。」「おはよう母さん。」「今日は入試ね。頑張って!気合い入れて弁当作ったから!」「ありがと。でも、ホント受かるかな?」「大丈夫よ優斗なら。兄さんも父さんも、応援してたわよ。」「そう…だよね。頑張ってくるね。」「はい、お弁当。気をつけてね!」「うん。行ってきます。」「行ってらっしゃい!」


そして、合格発表当日。

「ただいま…。」「おかえりなさい優斗。どうだったの??」「うん…。」「…。」「不合格、だった。」「…え?」「点数が少し足りなかったみたい。でも、次頑張るか…。」「…何言ってるの優斗。次なんてないのよ。不合格?はぁ…。お父さんに何て話せばいいの…?」「えっ?母さん?」「これじゃあお父さんに合わせる顔がないわ。どうしましょう…。」「えっ、ちょ、ちょっと…。母さん昨日、失敗してもしょうがないって。父さんには何とか話すって…。」「しょうがないわけないでしょ!?こんな大切な試験に落ちるなんて…。将来が見えなくなるわ!」「母さん…。」「今まで一生懸命育ててきたのに、全部水の泡じゃない!」「何だよ…それ…。昨日言ってたことと全然違うじゃん…。それに、全部水の泡って…。俺だって、自分なりに頑張って…。」「失敗したくせに偉そうな口開かないで。兄さんは成績優秀なのに、なんで優斗は。はぁ…。」『バン!』「いい加減にしてくれよ!母さんひどいよ。朝まであんなに励ましてくれたのに。だから安心して出来たのに。」「安心なんかしてるから失敗するのよ!この失敗作!!」―失敗作!―「…失敗…作?俺は物じゃない…。そんな呼び方するなよ!!もういい。こんな家出てってやる。いるだけ無駄だ!」そう言うと、優斗は家を飛び出して行った。


駅前の交差点。携帯を片手に無言で信号を歩く優斗は、友達の一輝(かずき)にメールを送っていた。

『今日大学の合格発表だったんだけどさ、不合格だったよ。でさ、家帰って母さんに報告したら、お前は失敗作だって言われたよ。マジ最悪。裏切られた気分。』

「はぁ。母さんのこと、信じてたのに。」メールを送信し、ふと顔をあげると、人混みの奥に『Betrayal』という看板を見つける。「Betrayal?確か“裏切り”って意味だったなぁ。…Betrayal…。どんな店なんだろう。」優斗はその店のドアを開けた。すると、薄暗い通路の先に階段が続いていた。少々戸惑いながらも進んでいく優斗。すると、奥から人の話し声らしきものが聞こえた。「あ、誰かいる。」部屋へ入ると、そこにはまだ若い子から中年の人まで男女問わずたくさんの人がいた。「あの~、ここって?」「ん?見ねえ顔だな。」「どうやってここに入ってきた?」「いや、普通にドアから。」「鍵かかってただろ?」「いや。」「ちっ。どっかのバカがかけ忘れたのか。」「で、ここは?」「悪いがここは飲食店とかじゃねぇ。さあ、さっさと帰るんだな。」「えっ、あっ、ちょっと…。」そう言われると、すぐさま部屋から追い出された。


少し離れた公園で、優斗はジュースを飲みながら空を眺めていた。「あの店なんだったんだろう。」携帯を開くが、一輝からの返信はない。すると優斗は、インターネットで<Betrayal>と調べてみることにした。「Betrayal、Betrayalっと。ん?」優斗は、あるサイトを見つける。そこには、“非政府組織<Betrayal>”の文字が。「非政府組織?誰かに裏切られ、傷ついた者達の集まる場所、か。なんかの宗教とかかな?」その時、後ろから老人に声をかけられる。「そこの少年。」「え、あはい。」「お主は裏切られたことはあるか?傷ついたことはあるか?」「あ、はい。」「そうか。なら、駅前のBetrayalという店に来るといい。わしもそこにいる。」そう言うとその老人は去っていった。「いや、多分それさっき行ったとこ…。」とりあえず、もう一度行ってみることにした。


「ん?またお前か。だから、ここは飲食店とかじゃ…。」「Betrayal、でしょ?俺も、裏切られて傷つけられた1人だ。」「あん?新しいメンバーか?」「俺が誘った。」「達郎じいさん。」「公園で携帯いじってたんでね。」「そうだったのか。なら、ここが何をするとこだかはわかってるんだな?えっと…。」「優斗だよ。」「ああ、優斗。俺の名前は早川龍也だ。こっちは達郎じいさん。」「よろしく、龍也。で、俺ここのこと詳しくは知らないんだけど…。」「はぁ、説明からか。まあ要するに、ここは裏切られた者が集まる場所だ。信頼していたのに、向こうの勝手で人生が狂ったり、傷つけられたり。俺たちはそういう者達を集めてあることをしようとしてる。」「あることって?」「…復讐だよ。俺達を裏切り、俺達の人生を狂わせた奴らへの、復讐だ。」「復讐って…。ちょっと大げさじゃない?」「いずれわかるさ。裏切られたことの重さを。」この時、まだ優斗は裏切りというものがどういうものなのかはっきり理解していなかった。「で、復讐って言っても具体的に何するの?」「決まってるだろ。殺すんだよ。そいつらを。」「…えっ?」「まだそんな覚悟出来てるわけないだろうが、俺達はもう覚悟は出来てる。」「殺すって、そんな。」「フン。確かお前、高校生で大学受験に落ちたんだよな?で、親に裏切られて家を飛び出してきた。なら、明日学校に行ってみ。一瞬でわかるよ。裏切りがもたらすものが。」「はあ。」「まあ、聞くより実際に体験した方がわかりやすいよ。それに、まだ時期は決まってない。当分は今まで通りの生活だ。まあ、今まで通りの生活なんて出来やしないだろうけどな。」「いまいちピンとこないや。」「だろうな。んじゃ、とっとと荷物を取ってくるんだな。今日からお前の家はここだ。」「うん。あんな家になんかいたくないし。じゃ、取りに行ってくるよ。」


家へ戻ると、母の真理子は椅子に座ったままうつむいていた。自分の荷物をまとめた優斗は、真理子の姿を少し見たあと、家を出た。「取ってきたよ、龍也。」「ああ。それじゃお前は…302号室だな。俺もそこだ。他のメンバーには言ってあるから、名前とよろしくお願いしますくらいは自分で言えよ。」「わかった。ありがとう。」言われた通り302号室へ向かう優斗。部屋には3人の女と5人の男がいた。「こんにちは。春島優斗です。よろしくお願いします。」「龍也の言ってた新人か。俺は山田拓実だ。よろしく。」「リーダーの西山剛だ。こっちは高村浩太、星川流星、石橋光彦だ。」「私は杉本彩。こっちは木村里奈と千葉沙織。よろしくね。」「よろしく。」「ここのスペースを使ってくれ。食事は食堂で風呂は風呂場だ。あとはここに書いてある通りだ。」「この部屋でやることはただ一つ。裏切った奴らを恨み、恨み、恨み続けることだ。覚悟を忘れるな。」「はい。」「さて、夜も遅いし、そろそろ寝るか。」「はい、おやすみなさい。」


―春島優斗。1人の少年の、壮絶なストーリーが、今、幕を開けた。―



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