4、 お兄さまとの出会い
その日いちにち泣きあかして、次の日お父さまからわけを聞いたのか、ばあやがやってきてぼくに話して聞かせてくれた。
お父さまとお母さまは本当はぼくが大すきだということ。けれどふたりはぼくの家来……本当のところはぼくのお兄さまの家来であるから、一生ぼくといっしょにいることはできない。だから泣く泣く、はなれがたくならないうちにわかれることを決意したのだということを。
お父さまとお母さまもつらいのだということを。
そのときぼくは、お父さまとお母さまには会わないと決意した。会えば泣き虫のお母さまをまた泣かせてしまうから。
そしてその日、はじめてお兄さまがやってきた。
お兄さまはお父さまよりもずっと若かったが、ぼくにとっては大人にかわりなかった。いっしょにかけっこをすることも、いたずらをすることもない。『つまらない』大人だった。
でもいっしょに遊ぶ相手ではないけれど、落ち着いていて、堂々としていて、今まで会ったことのある大人の中では一番かっこよかった。ぼくはこの人がお兄さまでよかったと思った。
すぐさま宮殿の中でできた友だちにじまんをすると、次の日から友だちは遊んでくれなくなった。
それでなぜかわからないけれど、この宮殿ではあの人がお兄さまだということと、お兄さまがここへ来ていることを言ってはいけないのだということをおぼえたのだ。
この宮殿の中には、外の世界とはまったくちがうきまりがあって、それをまもらないとなかまはずれやかげ口をたたかれて、友だちをなくしてしまう。
ぼくは、みんながとくに口にしないそんなきまりをしぜんにおぼえていった。
それでもなぜか、なかよくなった友だちは少しするとぼくと遊ばなくなった。
そのあとなかよしになったオマは、宮殿につかえるめしつかいの子どもで、何回か遊んだあとオマの母さまはぼくと気やすく遊んではいけないとオマに言ったそうだ。
それを伝えにきたオマにも、部屋にかえってからばあやにも、ぼくは泣いてうったえた。
「ぼくは友だちも作ってはいけないの? いつもひとりでいなくちゃいけないの?」
こんなことはぜったいにゆるせない。
ぼくがひっしでうったえるのを聞いて、ばあやがオマの母さんに話してくれたらしい。
ぼくはようやく宮殿のなかに友だちを作ることができたのだ。
オマと遊ぶようになってから、ぼくがふつうの家の子どもと大きくちがうことをいくつか発見した。
本当のお父さまとお母さまがいないことや、ひとりぼっちでくらしていること。そしてお兄さまは大人でときどきしか会えないこと。
そうぼくにはいっしょにくらす家族がいないことがふしぎなのだとはじめて気づいたのだ。
ばあやは、お兄さまが立派な方なのだと言って、お兄さまの仕事をするすがたを見せてくれた。
びっくりするほどきれいな服をきて、たくさんの人がお兄さまに頭を下げてしたがっていた。
お兄さまにたのめば、かれた水さえわき出てくると思っているように、こまっている人がお兄さまをたよって何人もたずねてきていた。
『お兄さまにたのめば、ぼくの本当のお父さまとお母さまも見つかるかもしれない』